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第3話 私と詠史さんのよくある夜です

 料理って何を作るかじゃなく、誰が作っているかが大事だと思うんですよね」


 真絹お手製のビーフシチューを食べているとにんまりとした笑みとともにそう口にした。返答しようとしたのだが間の悪いことにビーフシチューを美味しく咀嚼しているところだったので喋ることができない。


 まぁ僕もその意見には同感だ。


「ですよね!!詠史さんならそう思ってくださると信じておりました!!!」


 こういう時は僕の思考をあり得ないレベルで読んでくれて便利だな。


「ただ詠史さんは恐らくこう考えているのではないでしょうか?料理と言うものはレシピ通りに作ればある程度のレベルのものが出来上がる。そこからさらにレベルアップをさせるのは料理人のスキルが求められるのだ……と」


 まだ考えてはいなかったが確かに僕ならそんな風に考えるだろうなぁ……


「そのお考え自体はとても正しいと思います」


 未来の考えまで読み取るな。


「しかし誰が作るのが大切なのかと言うのは単純なスキルではないのです」


「んあ?どーいうこった?」


 ちょっとしたステーキほどの肉厚を口内に感じさせる極上ビーフシチューを飲み込みようやく口を開けた。


「単純なスキルと言うのは万人に受けるスキル、星付きになったりメディアで取り上げられるような料理スキルです。当然それが最も普遍的かつ最も世間的価値は高いですよね。

 対して私が言っているのは誰か個人に対して特化させたスキル……砕けて言うと」


 スプーンを取り出し自分の食べていたビーフシチューをすくった。そうと思えばゆっくりと僕の方に近づけていく。猫がマタタビに対して起こすような激しくも甘い誘惑が脳みそを埋め尽くしていく。


「詠史さんの好みに特化した料理を作れる私は、詠史さんにとっては三ツ星シェフより有能な料理人と言うことです。

 あーん」


 不思議だ、ほとんど無意識にそのスプーンを口に含んだ。


「うめぇ」


 めっちゃくちゃうめぇ……さっきまで食ってたビーフシチューよりもさらに……美味い。


「そうでしょう。これこそ修練のたまものです。今お渡しした分はいつにもまして詠史さん好みに出来たんですよね。うふふ♡


 ああ、もちろん何を作っても詠史さんの好みにベストフィットした料理を作れる自信はありますよ。でも詠史さんの好物であるビーフシチューはやっぱり別物ですよね」


「ああ、お前には正直かなりの頻度で恐怖を感じているけど「本当に正直ですね、そんなところも好きですけど」こういうことしてくれるのは素直に大好きだ」


「にゃふんっ♡」


 にわかに真絹の頬が赤くなった。その赤さはもともとの白い肌を際立たせるかのようだ。


「もう……軽々に大好きとか言うんですから………頑張って味付けしたかいがありました」


「でも僕がさっきまで食ってたのも同じビーフシチューだよな。なんでに食わせてもらった奴の方が随分美味いんだ?」


「無論、あーんの力、言い換えれば愛の力です!!!」


 さい「さいでですか?もっと激しく同意していただければ涙が出るほど嬉しいのですが」超速スピードだなおい。まぁ深くは問うまい、美味いからそれでいいのだ。


「さて、話は微妙に変化いたしますが愛を込めた料理をさらに美味しくする秘密の調味料があるんですよ。


 これを料理に使えば詠史さんは極上の快楽に誘われることでしょう」


「ほうほう、そいつは興味深いな。その調味料ってなんなんだ?」


 すると今日一番の笑みと共にピンク色の瓶を取り出した。それを愛おしそうに撫でる。


「媚薬で「捨てろ」」


 僕だって超スピードでの反応くらいできるのだ。


「ええ……せっかく独自のルートから安全性の高く、効果があるときふっと消えるタイプの媚薬を仕入れたのに………捨てるんですか?もったいなくないですか!!??」


「もったいないも何もあるか……って言うかそんな訳の分からないもんをビーフシチューに入れる気か?」


「違いますよ。そんなことしたらせっかく詠史さんの為に作り上げた風味が損なわれてしまうじゃないですか。

 それに召し上がっていただくものが違いますよ」


 いつものように服を脱ぎ真っ白な肌を露出させた。そして僕の手のひらには少しばかり余ってしまいそうな二つの胸の間に作られた谷間に媚薬とやらを注ぎ込んでいく。


「不思議ですよね、昔は男性の視線を感じるだけで不快感を覚えていたものですが詠史さんにならいくら見られても幸福感しか湧かないんです」


 散々下着姿見せといて今更それ言うか。


「やはり愛の力は偉大ですよね。ちなみに私は詠史さんを好きになってから一気におっぱいがおっきくなりました。やはり恋は女性ホルモンの分泌を促すのでしょうか」


 知らんけど、それを男に話すな。


「ちなみに私のお母様は小さいんですよね。となると遺伝子的に言えばお父様の方から受け継いだのかと考えたりしたり」


 それを聞いて僕はどんな反応すればいいんだよ。お父さんは巨乳なの?なんて言うアホ一直線のセリフでも言えってのか?ぜってぇヤダ。


「まぁそれはそれとしまして……準備ができました」


 寄せてあげた谷間になみなみと媚薬を入れた真絹はさらに胸を強調させるかのように腕を動かした。


「詠史さんにとって世界最高の料理、初川真絹をどうぞお召し上がりください♡」


 …………まぁうん、途中から予想してたよ。すっごい予想してたよ。うだうだ考えながら頭の片隅では多分そうなるだろうなぁって思ってたよ。


「詠史さんは性欲より食欲の方が旺盛な方です。ですがこうすれば両方を一緒に満たせますよね。食べれば食べるほど興奮堪らなくなるはずです」


「それ満たせるの性欲だけだな」


「先ほどの料理の話と同じですよ。私の身体も技術も全て詠史さんに特化したものにしてあります……この世界には私より綺麗な方もスタイルが良い方も山のようにいるでしょうが、詠史さんを世界で最も満足できるのは私だと自負しておりますよ」


「どこで僕の好みの技術を知ったんだよ。僕さえ知らないのに」


「妄想中に詠史さんとそういうことをする機会も当然ありまくるんですけど「本人相手にそれ言う?」その際に特に快楽を貪っていそうな技術を現実世界でも自主練で磨きました!!!」


 根拠が妄想なのにこんなに凛々しく威風堂々と宣言できるのは逆に尊敬しちまうな。と言うか年頃の乙女がはしたないとは思わんのか。


 そんなことを考えながらビーフシチューを全て美味しくいただいた後に部屋に戻ったのであった。


 ビーフシチューでお腹いっぱいになって、眠くなったから仕方ないよね。


 僕は性欲よりも睡眠欲の方が旺盛なタイプの男の子なのである。


 次回 真絹が健全的な想いについて語ります!!

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