「
最初は単なる思い付きでした。普段弱いところを見せない大好きな彼にこの言葉を言ってみたいという純然たる妄想。特別な意味もないのに突然学校に襲撃してきたテロリストを華麗に退治したり、空から特別な運命を背負った少女が降ってくるのと同じ単なる妄想。
弱った相手を労る気持ちと、自分の欲望を満たしたい気持ちの二つが綺麗に混ざったこのセリフを愛する彼に言ってみたいと考えただけでした。ただ、少しばかり真面目に考えてみるとこれは意外とありなのではないでしょうか?
「老若男女問わず弱った時には人の優しさが全細胞に染み渡るものです……女を落とすなら弱った時なんてお兄様が言っていたことがありましたが逆もまた真なりと言うのが男女の妙というもの」
弱いところを見せないと言っても辛いときがない人間なんてただの一人もいません。そのタイミングで私が手を差し伸べ……もとい胸を差し伸べることさえできれば上手くいく可能性は高いはずです。
しかしながら辛くなる時を待つというのは嫌な気分になりますね。そもそも彼に辛い時間なんて一秒だって味わっていただきたくありませんし………そうなると…………手段は一つですね。
私の名前は
あと、詠史さんの元ストーカーでもあったりします♡
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僕の名前は
そんな僕には今ひとつ悩みがある。人によっては同情されるだろうが、基本的には贅沢な悩みだと言われそうな悩みだ。
まず手始めに僕の家庭状況から話しておこう。
「詠史さん、おっぱい揉んでいただけますか?」
「真絹、ちょっと待って。今現実逃避してるから。僕のことが好きならもうちょっと待てをしろ」
「はいっ!!」
良い笑顔だ。これを見ているだけで心が洗われるなんて便利な機能はないが、取り合えず良い笑顔だ。心の底から喜んでいるってのがよく分かる。サンタさんからのプレゼントをもらった子供みたいな無邪気な笑みだ。
「うふふ、早くおっぱい揉んでいただきたいですねぇ」
言ってることは間違っても子供ではないが。
僕におっぱいを揉むことを異様なまでに強要している女の子こと、初川真絹は小さなころにちょっとだけ因縁があるが、基本的には僕の中二の時からの同級生である。同級生になってしばらくは単に綺麗だなぁ程度にしか思っていなかったのだが、あちらの方は僕に異様に懐いてきて、すっかり仲良しになったのである。まぁこの辺までなら特に問題ない、単なる美しい青春の思い出だ。
そして高2になった今年、どういうわけかうちに居候することになった。
何故かは分からない、ある時姉ちゃんが「真絹ちゃんを家で預かることになったから今以上に仲良くしなさいよ。ああ、なんでという質問には答えないわ」と言う言葉と有無を言わさない圧倒的な眼光で睨まれたのである。
正直僕は男とか女とか両性具有とか全く興味がないタイプの人間だったので女の子がいると言うこと自体は大したストレスではなかったのだが、ある時何に影響されたのか。『幼い頃からお慕いしていました。結婚を前提に健全的な男女の交際をしてください』なんてセリフと共にストリップショーを始めたのである。
その場は一晩中健全的なお説教して何とか分からせてあげたのであるが、それから僕に対するアプローチがえげつなくなってきた。
「そして、今に至るってわけですね」
「悪かった、ちょっと現実逃避の時間が長かったかもしれん。でもさ、僕の思考を読み取るのは止めてくれないかな?」
「申し訳ございません。お詫びにおっぱい揉んでください」
「知ってる?お詫びってご褒美タイムじゃないんだぞ」
なんでこんなに胸揉ませたいんだよ……別に揉みたくないってわけじゃないけれど………揉んだら負けな気がする。と言うか、僕の中では明確に負けだ。
「負けじゃありません!!勝ちです!!!私たちは詠史さんの一揉みから人生の勝ち組に向かうのです!!」
怖いよぉ、この僕限定の思考読み取り能力めっちゃ怖いよぉ。
「……四六時中詠史さんのことばかり考えたり、精神時間では累計数十万時間を超える妄想をしまくっているといつの間にかこのような能力が身についていたんです……私も詠史さんのプライバシーを侵すのは申し訳ないと思っているのですがいかんせん、常時発動型なので自分の意思ではどうしようも」
そうか、常時発動タイプの能力なのか。いつからこの世界は能力バトル漫画になったんだというツッコミは控えてやろう。
「ツッコんでいいですよ。主に私の体内にとか」
無だ………無になるのだ………………僕は人形、電信柱、石ころ、「おっぱい揉み器、おっぱい揉み器」そう、僕はおっぱい揉み器、おっぱいを揉むのが仕事なのだ………って
「なわけあるかぁぁ!!!思考を読むどころか思考にまで介入してくるのかよ!!!っていうかなんだおっぱい揉み器って!!!!そんな謎の器具ないわ!!!!!いつどんな用途で使うんだよそんなもん!!!
「搾乳機みたいなものと考えていただければ」
「考えてやらねーよ」
すると真絹が服を脱ぎだし白い下着を露わにした。絹のように白い髪に、雲のようにふんわりとしていて見るだけでモチモチとしている肌に非常に似合っている。
「詠史さん、もしかして今お困りですか?」
「そりゃぁ困ってるよ。僕は一体どうすればいいのかとっても困っているよ」
そしてお前をどう正道に戻してやるのかを必死に思案しているよ。だってお前がここまで変になったの多分僕のせいでもあるもんな。
「でも詠史さん、私がこう言うことをしなったとしたら、それはそれで色々お困りになったりしませんか?」
「いや、全然」
「えぇ……まぁいいです……ちょっとだけ不満ですが、今詠史さんがお困りと言うことが分かれば十分です」
すると、下着姿の真絹がニッコリと包容力抜群の笑みを浮かべた。
「大丈夫?おっぱい揉みます?」
淀みなく、そして欣喜雀躍とした正の感情を含んだセリフだ…………直感があった。限りなく確信に近い直感が。
「真絹お前………それを言いたかったんだろ」
最初の誘惑に乗ればおっぱい揉んでもらってよし。乗らなければ言いたかったセリフを気持ちよく言えてそれもまたよし。隙のない二段作戦だな。
「ご明察です!!流石、私たちの心は繋がってますね!!!」
「繋がってるというか、お互いに変な穴が開いているというか……まぁとにかくだ。あんまりこういう妙なことをするんじゃありません」
「えへへ……えへへへへへへ」
「なんで嬉しそうなのお前」
「申し訳ありません、ただ顔も、身体も、心も詠史さんに真っすぐ見つめられているだけで…その瞳に映っているだけで……私の大切な部分も全部まとめて見られているだけで……歓喜の極みなんです。詠史さんが望むならばもうこのようなことは致しません。その代わり一つお願いがあります」
するとソファに寝転がり、淫靡に身体をくねらせた。
「お願いです。おっぱい揉んでください。
その後のことは何も望みません……ただ詠史さんの心が赴くままに欲望を解き放ってください。私はそれにめいっぱい応えるだけです」
……ふっ……………こいつって奴は。
「真絹ちゃん、今日は寝かせないぞぉぉ」
「嬉し……あれ?お顔が怖いですよ……あれ?詠史さん???」
その後、一晩中お説教をしたのであった。無論、おっぱいは揉んでいない。
揉んだら大丈夫じゃなくなるから仕方ないよね。だって男の子だもん。
揉むとしたら、僕が真絹を本気で好きになった時だよ。
次回、真絹と詠史の“いたって”日常的な夜の一幕をお楽しみください……(意味深)