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第十一話 旅立ち

 その日、三人の男子生徒が姿を消した。

 一人は行方不明に。

 もう二人は引っ越したと言う。


 しかも引っ越した一人はつい最近転校してきたばかりだ。それが二人揃って引越しとはどうした事だろう。


 誰かは行方不明になった少年を二人が殺したのだと言った。


 誰かは許されざる恋に二人で手を取り合って逃げたのだと言った。


 様々な憶測が飛び交う中で一年二組の教室は騒然としたが、それも日が経つに連れて過去の話題となっていくだろう。


 町を見下ろす高台にふたつの影が並んで立っていた。


「お母さん達には言って来たの?」


 長身の影が問いかける。


「あぁ、父さんの所に行くって言ったら分かったって」


 小柄な影がそれに応えた。

 長身の影が「そう」と呟くと、ふたつの影は側で待つ黒塗りの車に乗り込む。


 次にいつ帰ってこられるか分からない。

 もしかしたら二度と帰る事のないかもしれない町並みを眺めながら、車は遠ざかっていった。




 今ここに一人の鬼切りが産声を上げた。


 それはまだ小さな決意。

 今はただ友のため、刀を握る。

 闇の道を歩き始めた少年はどこへ向かうのか。


 その目は何を見るのか。


 まだ少年は知らない。


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