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21.戦技の授業

 昼食を終えた後、私たちは午後の授業に向かうことになった。

午後は「自然魔法学」、2時間続けての授業に出ようかと提案した。


ちなみに、自然魔法学の授業では専攻でない属性の魔法も学ぶことができる。

私はちょくちょく通い、炎以外の属性の魔法を学んでいる。


「自然魔法学かぁ・・・確か、今日は戦技訓練だったよね」

 シルフィンが伸びをしながらぼやく。

まあ、正確には「今日は」ではなく「今週は」なのだが。


「大事な授業だぞ。それに戦技訓練は、授業の中で戦いの実力を確かめられる貴重な機会だ。受けない手はない!」


 マシュルが真面目に答える。彼は「実力を試せるシチュエーション」が好きらしい。


「自然魔法学ねえ・・・確かに僕ら4人で受けれる授業だけど、どうも苦手なんだよなあ・・・」


 ライドは運動が苦手なので、体を動かす場面が何かと多い自然魔法学の授業が嫌いなのは必然だろう。


「まあ、頑張ろうよ」

 私が笑いながら言うと、ライドは「そうか・・・そうだな!」と元気よく応じた。




 教室に入ると、すでに先生が黒板に何やら難しそうな図を描いている。


「来たな。よーしみんな、席につけ」


 自然魔法学の担当は、リッド・ファルム・ボリネア先生。

黒い目に白い髪をした男の先生で、特定の属性への適性はないという。


「前の授業に来た子は知っていると思うけど、今日は戦技訓練を行う。それに伴って、今回の授業は2時間続けて執り行う。でも、まずは座学だ」


 先生は、『詠唱短縮』と黒板に書いた。

詠唱短縮とは、その名の通り魔法の詠唱を短くし、発動をより速くする基本技術の1つ。

これをすることで、戦闘や実践で有利に立ち回れる。


「詠唱を削りすぎると、魔力が暴走する危険もある。特に魔力量が多い者は注意が必要だ」


 先生の言葉に、私は思わず背筋を伸ばした。

というのも、元々私の基礎魔力は人よりずっと低い「100」だった。しかし、ゼスメリアに入ってから急速に伸びた。


これは先日母に測定してもらってわかったことなのだが、現在私の魔力は「5000」ある。

この数値は、同学年の子たちよりずっと多い。


 母はそのことを喜んでいたし、私としても喜びたいところなのだが、この高い魔力を制御しきれないことが多々あるのが難点だ。

魔力の制御は、魔法の威力にも繋がる。


つまるところ、たとえ弱い威力の魔法でも、私が使うと、かなり強力なものになってしまうのだ。

授業では好成績を取れることもあるが、日常生活では不便なこともままある。


(慎重にやらなきゃ・・・)




 授業が進み、実際に短縮詠唱の練習が始まる。簡易術式と同じく基本的な技術なので、難しいものではない。


 実は、上手く魔力を制御しつつしっかりとイメージを思い浮かべていれば、魔法の詠唱は結構省けるらしい。

声に出しての詠唱をしなくとも、心で念じるだけで唱えられるものも少なくないほどだ。


 今日は、なんでもいいから得意な魔法を唱え、その詠唱を省いてみようということになった。


得意な魔法、と言われても、正直何がいいか悩んだ。

そんなの、特にはないからだ。


「アリア、次は君の番だ」


「あっ・・・はい!」


 とりあえず、唱える魔法を決めた。

息を整え、詠唱を開始する。


本来なら『燃えるフェーズ・焔の槍ブレイラムス』と唱えるところを、『焔の槍ブレイラムス』とした。


 すると、炎を纏った槍炎が思った以上に大きく燃え上がった。


「わっ!」


慌てて手を引くと、炎はすぐに消えたものの、周囲の生徒たちが驚いてこちらを見ていた。


「ふむ・・・やはり魔力が多いと、短縮詠唱は難しいな」


先生が腕を組んで考え込む。


「アリア、君は魔力の制御を優先して訓練するべきだな。短縮詠唱よりも、安定した詠唱を身につけるほうが先だ」


「・・・はい」


 やっぱり、私は普通のやり方ではいけないらしい。他の生徒たちが簡単に短縮詠唱を成功させているのを見て、少しだけ悔しくなった。


でも、焦らない。私は私のやり方でやればいい。

そう心に決め、私は再び詠唱に向き合った。





 座学が終わると、次は戦技訓練の時間だ。

2時間続けての授業なのは、座学と実践が1時間ずつあるからだ。


教室の後ろの方にある訓練場に移動すると、すでに何人かの生徒が武器を持って準備をしていた。


この授業では魔法だけでなく、体を使った戦闘技術も学ぶ。魔法が封じられた状況でも生き残るための、重要な科目だ。


「さて、今日は二人一組で模擬戦を行う」


 先生の言葉に、生徒たちがざわめく。模擬戦は普段よりも緊張感があるが、それだけ成長の機会にもなる。


「なあ・・・アリア。おれと組まないか?」


 マシュルが手を挙げる。だが——


「今日はくじ引きで決めるぞ」


先生の声に、マシュルは「えー」と不満そうな顔をする。


そして、くじを引いた結果・・・。


「えっ、私・・・ライドと?」


「お、おう・・・」


まさかの結果だった。



 さて、ライドは雷の魔法を使い、私は火の魔法を使う。

どちらも攻撃を重視した属性の魔法なので、模擬戦では、なかなか派手になりそうだ。


「ま、まあ、手加減はするよ」


「・・・私だって暴走しないようにするから」


お互い苦笑しながら構えた。


 先生の合図で、模擬戦が開始される。

ライドが先に動いた。素早く距離を詰めながら、手のひらに小さな雷を纏わせる。


「おっと!」


私はとっさに横に跳び、炎の弾を放つ。

しかし、ライドが瞬時に避け、雷の魔法を放った。


「っ!」


 私は炎を展開し、雷を相殺する。しかし、その衝撃で体が少し後ろに押される。


(ライド、速い・・・!)


彼は体術や運動は苦手だったはずなのだが、魔法だけでなく動きも素早い。


「それなら・・・!」


 私は炎を再び生み出し、一気に前進する。ライドが警戒したのがわかった。

彼は雷を構えるが——


(今だ!)


私は瞬時に炎の勢いを抑え、フェイントをかけた。

ライドの反応が遅れた隙をつき、彼の背後へ回り込む。


「もらった!」


 手のひらを突き出し、小さな火球を発生させる。——が、その瞬間、ライドが反転し、雷の魔法をぶつけてきた。


「しまっ——」


雷と炎がぶつかり、爆発が起こる。

煙が立ち込め、お互い吹き飛ばされる。


「・・・いってぇ」


「だ、大丈夫?」


 私はなんとか体勢を立て直し、ライドの方を見る。彼も膝をついていたが、すぐに立ち上がった。


「いや、アリア・・・強すぎだろ・・・」


「そっちこそ・・・」


お互い、思わず苦笑する。


 その時——


「2人とも、ずいぶん派手にやったな!」


先生が大股でこちらにやってきた。


「まったく・・・おおよそ、1年生の模擬戦のレベルじゃない。まるで、高学年の本気の戦闘じゃないか」


 苦笑しつつも、先生は少し呆れたような顔をしていた。


「次は、もう少し加減するんだぞ?」


「・・・はい」


こうして、私たちの模擬戦は幕を閉じた。


だが、この戦いで私は確信した。


(まだだ。私は、もっと強くなれる。

もっと・・・自分の魔法を制御できるようにならなきゃ)


 学院生活は、まだ始まったばかり。これからどんな試練が待っているのか。

私は、胸の奥で炎を燃やしながら、強くそう思った。



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