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灼炎の転生魔女〜異世界転生したら最強魔女の娘になったので、人生全力で生き直します!〜
灼炎の転生魔女〜異世界転生したら最強魔女の娘になったので、人生全力で生き直します!〜
明鏡止水
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年03月06日
公開日
5.7万字
連載中
いじめに耐えきれず命を絶った高校生・鈴木三春(みはる)。
しかし、彼女は異世界で“最強の魔女の娘”として生まれ変わる。

母・セリエナ・ベルナードは、炎を操る「灼炎の女皇」として名高い大魔女。
その娘としてアリアと名づけられた彼女は、前世とは違う人生を生きることを決意する。

炎の魔法を受け継ぐも、魔女の道は決して楽ではない。
それでも、二度目の人生は――「もう絶対に後悔しない!」
前世の悲しみを乗り越え、強く、燃え上がるように生き抜く!

アリアは新たな命を授かったことを胸に、魔女の娘として歩むべき道を決意する。

これは、炎の転生魔女の物語。
灼炎の魔女の血を引く少女が、新たな運命を切り拓く物語。


1.楽になりたくて

 時刻は、午後5時過ぎ。

私、高校生の鈴木三春みはるは、学校の屋上に来ていた。


部活はもう終わった。

普通なら、あとは帰るだけ。

でも、私は帰らない。


私は、家には帰らない。

寧ろ、これから旅立つ。

どこか、ここではないところへと。



 荷物を置き、スマホを取り出す。

そしてメモアプリに、最後の言葉を残す。

主に家族と、親しかった友人に向けてだ。


「今まで、ありがとうございました。先立つ不幸を、許してください」



保存を終え、スマホも置いて私は立ち上がる。

そして、屋上の端っこへと向かう。



 そう・・・私は、これから自殺する。

死に場所は、他ならぬ私が通っていたこの学校の屋上だ。


兼ねてからしようとは思っていたのだけど、まずはその方法に悩んだ。

線路やホームに飛び込むのは、周りに迷惑がかかる。

死んだ後にまで、人に迷惑をかけたくはない。


 かといって、首吊りや練炭をする勇気はない。

首吊りはともかく、練炭は準備がちょっと大変だし、見つかったら止められるだろう。


それに、どちらも地味に辛そうだ。

首吊りに関しては、案外そうでもないのかもしれないけど。


 思いおこせば、今までちょくちょくリスカなんかもしてきたけど・・・

それでどうにかなってたら、こんな選択は端からしなかっただろう。


本当は、こんなことしないほうがいいんだろう。

本音を言えば、したくない。

でも、こうするより他にない。

生きているのが苦しい。辛い。


死にたいわけじゃない。

ただ、楽になりたいだけ。

それが、自殺これしか思いつかないというだけだ。





 考えた挙げ句に飛び降りを思いついたのだけど、田舎のこのあたりには確実に死ねるような高い建物がない。


だから、5階建てのこの学校の屋上を選んだ。

高さは少し足りないかもしれないが、頭から落ちれば大丈夫だろう。


 眼前には、校舎裏の敷地とその外を囲む広大な田んぼが広がっている。

こうしてみると、やっぱり田舎なんだなあと思う。


初めてこの眺めを見たときは、いかにも田舎だなあと思いつつ、東京では見られなかった光景にちょっと感動したものだ。

それが、この世の最期に見る景色になるとは。



 校舎の裏に落ちるのは、グラウンドで頑張っているみんなを驚かせないため。

そして、なるべく密かに死ぬためだ。



どうせ、誰も助けてなどくれない。

私は孤独に生き、孤独に死ぬ運命なのだ。



 東京から転校してきてから、3ヶ月。

思えば、今までよく頑張ったと思う。


父さんの転勤で、東京から家族でこの田舎に引っ越してきたわけだが。

転校先のこの学校で、私を待っていたのはひどいいじめだった。


転校直後は何もなかった。

でも、テニス部に入ってから、すべてが変わった。


 テニス部には、槇原まきはらみずきというクラスのボス的な存在の女がいたのだけど、こいつがどうも私を気に入らなかったようで、取り巻きの連中を連れていじめをしてくるようになったのだ。


最初は机に落書きをされたり、物を隠されたりという程度で済んだ。


でもそのうち、通りすがりにカッターで切りつけられたり、靴で殴られたり、雑巾を絞った水を飲まされたりするようになっていった。



 面白いことに、これらは全て先生のいないところでやられた。

みずきも、普段は私にはやたら偉そうにしているくせに、先生には敵わないのか。


そう言ったら、余計にひどくなった。

やはりいじめをする奴ってのは、根本的には弱虫なんだ。

弱いからこそ、誰かを虐げて優越感に浸ろうとするのだろう。



 例え先生に言おうが、親に言おうが、友達に言おうが、結果は同じ。

決していじめが止むことはなく、むしろエスカレートしていく。



 本当に強い人なら、こういう時どうにかしてやり返してやるものかもしれない。

でも、私は弱い。

そんなことは、できない。


悔しい。悲しい。腹立たしい。憎らしい。

でも、どうにもならない。

私は弱い。私は臆病だ。私は負け組だ。



 誰に話を聞いてもらっても、どんなにリスカをしても、気持ちは収まらない。

悲しく、悔しく、恨めしい気持ちは消えない。


私は、このままでは人でいられない。

意志のある、人間という生物でいられない。

それが、本能的に感じられた。


それで、私は思った。

自分は、ここにいてはいけないのだと。

生きていては、いけない存在なのだと。

だから、覚悟を決めた。



 もちろん、本音は生きていたい。

でも、このまま生きていてもいじめられ、苦しみを味わい続けるだけだ。


学校を卒業したとしても、私が負け組なのは一生変わらないだろう。

学生時代にいじめられた奴は、社会人になっても落ちぶれることが多いとも聞くし。


であれば、さっさと終わらせてしまいたい。


 私はいずれこの世の負け組として、惨めに年を取って死んでいくのだろう。

そんなのは、嫌だ。

もう、これ以上苦しむのは嫌だ。



 残念ながら、いじめというのはいつの時代も加害者が最後に笑うものだ。

でもまあ、それもいいのかもしれない。


今まで長い人間の歴史の中で、それが変わってこなかったということは、きっとそうであるべきなのだろう。


でも、私はそれは嫌だ。

そんな世界で、そんな人間の世で生きるくらいなら、死んだほうがマシだ。



 正面の西の空には、真っ赤な夕陽が浮かんでいる。

夏の夕暮れは眩しく、そして暑い。

でも、私にとってはそれ以上に、ふくみがあるもののように感じられた。


陽が沈み、これから夜がくる。

真っ暗で、なぜだか悲しくなる時間がくる。

寝付けず、死にたいと思うほど長く、辛い時間がくる。



 私は、これから死ぬ。

自殺して、生きた人間から解放される。

死んだあとは、どうなるのだろう。

俗に言う、「幽霊」になるのだろうか。


仮にそうなったとして、そこからどうなるかはわからない。

でも、少なくとも生きていた時よりは楽になれるだろう。


生きているうちに、こんなに苦しんだのだ。

死んだ後くらい、少しは楽をさせてくれてもいいだろう。



 最期に、1つ。

槇原みずき、それと一緒になって私をいじめてきた4人。

お前たちのことは、絶対に忘れない。

そして、絶対に許さない。


私はこれから死ぬ。

でも、それはお前たちのせいだ。

私を殺したのは、お前たちだ。


みずき。

この前の国語の時間、私が日頃の仕返しに辞典でお前を殴った時、お前は言ったな。

「このこと、絶対に忘れないからな」と。

それは、私だって同じだ。


 もしも転生・・・生まれ変わりってやつがあるとして、また人間として生きることになることがあったら。

その時は、きっとお前たちを殺しにいってやる。


最期に、お前たちみんなを呪ってやる。

もし幽霊、いや怨霊になれたら、必ずお前たちを呪い殺してやる。


覚えていろ。

私は必ず、お前たちみんなに復讐してやる。

例え、この世に生きる者でなくなろうとも。




 いよいよだ。

もはや、この世界に未練はない。

父さん母さんには申し訳ないけど、これも私が選んだ運命だ。


フェンスをてっぺんまで登り、頭を下げる。

このまま前に乗り出し、手を離して落ちれば、確実に死ねるだろう。


 身を乗り出し、目を閉じる。

落ちる時の景色を、見る必要はない。


生まれてからこのかた、私の目に映るのは、絶望の日々だけだった。

たとえ、自ら命を経つ直前であろうと。



 鉄棒のように身を乗り出し、逆さになった状態になったら、手を離す。

すると、一気に体が落ちてゆく。


ようやくだ。ようやく、楽になれる。

こんなつまらない、地獄のような世界と、お別れできる。



 次に目が覚めた時は、どうなっているだろう。

天国か地獄か、はたまた幽霊か。

どっちでもいい。


私の行為は、許されないのかもしれない。

でも、もう十分苦しんだ。

せめて、このまま眠らせてほしい。



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