後日。俺たちは音無先輩がした「後始末」の内容を知ることになった。
「あれ、これって西園寺のエロジジイのことじゃない?」
さなえさんが用事で出かけているのをいいことに、梨乃の家で俺の女たちにスッキリさせてもらっていた最中。つけっぱなしにしていたテレビのニュースに羽彩が反応した。
「あっ、本当に逮捕されちゃったんだ。でも、あれだけのことをしたんだから仕方がないよね」
「あの時の動画なんでしょうけど、テレビで見るとこんなにも下劣な人に映るんですね。それだけじゃなく監禁されて性的暴行被害に遭っていた女性が多数……。って、こんなことまでしていたんですか。これはまだまだ余罪があるかもしれませんね」
エリカと梨乃もテレビに目を向けてニュースを見る。ちなみに日葵は現在進行形で俺をスッキリさせてくれているので、コメントできる状態になかった。
どうやら音無先輩はエロジジイの暴言動画を警察に提出したようだ。テレビから耳障りに「性奴隷」と連呼しているのが聞こえる。そういう単語って放送禁止用語だったりしないの? と思ったりもしたが、エロ漫画世界だし規制が緩いのかもしれない。
けれど、音無先輩がしたことはただ動画を提出しただけではないらしい。
「西園寺さんが自首? それに一緒に自首したボディガードの人たち含めてみんな股間を潰されていたって……」
「事故でそんなことになったと述べているようですが、そんなわけないですよね。まあ女の敵ですし、清々するだけですが」
エロジジイが失ったものは金や地位だけではなかった。男として大事なものまで再起不能になったらしい。むしろその歳まで使い物になっているのがすごいと思うが。
文字通りすべてを失った。年齢を考えれば、人生が終わるまでまともに外の空気を吸うことはないだろう。自業自得なので同情する気持ちは一切なかった。
こんなスキャンダルをマスコミが無視するわけがない。他にも追及されるのは当然の流れだと言えた。
タケルの奴はマスコミに囲まれて、次から次へと質問を浴びせられていた。突然明るみに出た父親の不祥事に、ただ顔を青くするばかりだった。
息子の不祥事動画は提出していないが、こうなってしまえば表にいても地獄だろう。エロジジイのエロい部分は受け継がれていないようだが、父親がこれだけ世間を騒がせればそうは思われないはずだ。
もうまともな生活は送れない。約束された地位から転落するという状況に、甘やかされて育ったお坊ちゃんが耐えられるのかどうか見ものである。
逆にエリカの両親はテレビで取り上げられることはなかった。そういえば連行されてからその後どうなったんだろうね? エリカが気にしていないようなので、俺から聞くつもりはないのだが。
「まっ、これでもうエリカさんが危険な目に遭うことはないし、アタシらも狙われるなんてことはなくなったよね」
羽彩が大きく安堵の息を吐く。連行される奴らを見てはいたが、ニュースでその後どうなったかを確認できて心の底から安心できたようだ。
「んなことよりも、俺の相手をしてくれよ」
ニュースを見ているばかりの三人に近づきながら、自分の肉体を惜しみなく見せつける。
「白鳥ちゃんはどうしたの?」
「そこで転がってるよ」
日葵は肌を紅潮させて、ぐったりと倒れていた。激しい運動をした後だったので、なかなか息が整わない様子だ。
「うわぁ……アキくん元気ですね。それ、スケッチしてもいいですか?」
「梨乃も好きだよな。別にいいけどよ」
梨乃は自分の格好に構うことなく、スケッチブックを取って描き始めた。俺は肉体美をアピールすべく竿をビクンビクンさせる。
「てなわけだ。相手してくれよ羽彩」
「え、ちょっ、またアタシ? 少しは休ませてよー……」
羽彩を後ろから抱き締める。火照った身体に金髪ギャルの柔らかい感触が気持ち良い。
口では困ったように言っている羽彩だが、俺に求められて満更でもない様子だ。可愛い奴である。
「氷室ちゃんが疲れているなら代わりに私が相手するよ。晃生くんが満足するまでしてあげるよ?」
「あたしもまだまだ元気です。羽彩ちゃんはしばらく休んでいていいですよ。その間はあたしとエリカさんがアキくんの相手をしますので」
エリカと梨乃が俺の両脇から身を寄せてくる。そう言ってくれるならと、俺は羽彩から手を離して二人の肩を抱く。
「あ、あれ? 晃生……?」
温もりが消えたからか、羽彩が寂しそうに振り向く。心なしか金髪のサイドテールがへにょんと力なく垂れているように見えた。
「期待していいよ。私が晃生くんをたくさんスッキリさせてあげるからね」
「あたしだって負けませんよ。アキくんを満足させてみせます」
「ま、待ってよっ。アタシだって晃生をスッキリさせたいの……。二人ばっかじゃなくて、アタシにもヤラせてよ!」
「「どうぞどうぞどうぞ」」
アピール合戦に負けまいと羽彩が自分から俺に抱き着いた瞬間、エリカと梨乃はあっさりと身を引いた。
「へ? あ、あれ?」
「どうした? 俺をスッキリさせたいんだろ? ヤッてもらおうじゃねえか」
「え、えーっと……今のは勢いでというかなんというか……。あっ、そんなところ……あんっ」
羽彩の甘い声が部屋中に響き渡る。エリカはその光景を微笑ましく眺めて、梨乃は熱心にスケッチしていた。
こうして、俺たちは日常を取り戻したのであった。
◇ ◇ ◇
さらに後日。俺は登校日でもないのに学校の生徒会室を訪れていた。
「やあ郷田くん、呼び出してすまなかったね」
「いや、俺も先輩の話が聞きたかったんで」
生徒会室で二人きり。意識しないと言えば嘘になる。
原作では郷田晃生と音無夏樹が生徒会室で二人きりになったところで、寝取り展開が始まってしまったのだ。事情は違うが、同じ状況になったところに世界の修正力とやらを感じずにはいられない。
「さて、どこから話したものかな。まずは大切なことをハッキリ言っておいた方がいいだろうか」
「順番に話してくれればいいっすよ。別に急かしたりとかしないんで。……ただ、音無先輩が何者なのか。そこんとこはハッキリさせてください」
「そうか……。うん、まあそうだね。もう隠せるようなものではない、か。わかった、ハッキリと説明しようじゃないか」
音無先輩が人懐っこく笑う。黙っていれば凛々しすぎて人を緊張させてしまうからと笑顔を心がけている。これ原作情報な。
音無先輩はコホンと咳ばらいをしてから、事情とやらを話し始めた。
「私の目的は郷田くん、あなただけだ。あなたの幸せを心から願っているんだ」