「おはよう。ツリア」
「ううううん」
隣で寝ているツリアのおでこに口付けを落とし、僕は朝食を食べに向かう。
「ヤリアント様。サラダはなしでご用意させていただきましたが……」
「ありがとう。葉物野菜はなしで構わないよ。ツリアがいない場所では」
ツリアには格好悪いところを見せたくない。例え苦手な葉物野菜だって笑顔で食べてみせる。
「ツリアは今朝もまだ眠っているよ」
「それはよかったです、王妃陛下はずっと働きすぎでしたもの!」
ツリアが眠っていると伝えると、満面の笑みで頷くメイドたち。特にマリアというメイドは寝かしてあげてください、とうるさいことが多い。
みんな、ツリアの寝起きが悪いことを隠そうとしているのだろう。
メイドたちがあまりにもうるさいから、一度ツリアを起こそうとしたことがある。
「ツリア、朝だよ。起きて?」
「ったく、っせーなぁ! あぁ!? 黙って寝かせろよ! くそが!」
ドスの効いたいい声だった。
「寝てるツリアの寝顔を楽しむのもいいけど、起こすのも楽しいんだよね」
まだ、寝起きの悪さを僕にバレていないと思っているメイドたちとツリア。
ツリアが無理して徹夜するくらいなら、
ツリアが毎日10時半に業務を始められているのは、こっそりと僕が起こしているからだ。ツリアは放っておいたら、一日中眠るだろう。出会った頃のツリアは目元にクマがあって、でもそれを化粧でうまく隠していた。ずっと心配だったんだ。
僕の横で眠ってくれるなら、出来る限り寝かせてあげたい。そして、起きる時はバレないように起こしてあげよう。