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第12話 メルティーヌの行方

「いたか!?」


「メルティーヌ様ー!?」


「いません!」





 なかなか戻ってこないメルティーヌ様。心配して見に行ったところには、使用済みの眠りの魔法陣の跡が残っていました。周囲を慌てて探します。


「誘拐……でしょうか?」


「そうに違いない」


「しかし、眠りの魔法陣は……」


 眠りの魔法陣は眠気を誘う効果があります。しかし、多少眠くなったところでお強いメルティーヌ様を誘拐できるほどの威力があるとは思えません。



「……ボレアース国王陛下に報告をあげましょう。わたくしは城に戻ります。皆様捜索を続けてください」


「ツリアーヌ様! 目撃証言で黒装束の男二人を見かけたと!」


「怪しいですわね。行方を追ってください!」


「はい!」


 わたくしは城に戻り、ボレアース王国国王陛下にこのことを報告しなければなりません。胃が痛みますわ。









「……眠りの魔法陣か」


「申し訳ございません。現在行方を追っているところですが……」


 悲痛な面持ちを浮かべるボレアース国王陛下にわたくしは頭を下げます。大切な姫君をお預かりしていたのですもの。もっと警備を、いえ、わたくしがボールを……。



「……実はメルティーヌは、その、大変魔法耐性が弱いのだ」


「はい?」


 突然のボレアース国王陛下の発言にわたくしは目を丸くします。


「……常人にとっては、眠気を誘う程度、集中力を切らす程度であろうその魔法陣。メルティーヌにとっては即座に熟睡するものになろう」


「……それでは」


「新ミリュー王国の者の仕業ではないだろう。誰かがツリアーヌ嬢かメルティーヌを狙ったものだと考えうる。しかし、メルティーヌがあの場にいたことは、知っている者は少ない。そちらの情報が漏れた線も探るべきだが、敵の狙いはツリアーヌ嬢。そなたに違いないだろう」


「わたくし……?」


「メルティーヌを探してくれるのはありがたいが、そなたも自身の身の周りに十分に気を払うように」


「ありがとうございます。必ず、メルティーヌ様を探し出してみせますわ!」




 ボレアース王国国王陛下との会話を終え、一息つきました。わたくしが狙いでメルティーヌ様が……。こうはしていられません! せめてどの国に誘拐されたか調べなければ。



「ツリアーヌ様! 黒装束の男たちの情報が入りました!」


「なんて?」


「何か袋を抱えて隣国ティモルト王国に戻って行ったそうです」


「そう……ティモルトに」


 ティモルト王国側の城壁はまだ建築中です。その隙をつかれたということでしょう。



「では、ティモルト王国に使者を送りましょう。わたくしが狙いということは、メルティーヌ様をわたくしと勘違いしているということ。彼女が間違いでボレアースの姫君だと気づけば……消される可能性もあります。向こうの狙いがわからないうちは、」



 わたくしがそこまで話したところで地響きが起こりました。


「何事ですか?」


「さぁ……方角としてはティモルト王国の方かと」


「まず、我が国に潜む間者を探し出し、情報を吐かせましょう!」










◇◇◇

「お、目が覚めたか? ツリアーヌ・フェイジョア」


 ……わたくしは、ツリアーヌ様と間違えて誘拐されたようですわ。ここは……おそらくティモルト王国でしょう。気候にこの建築様式。ツリアーヌ様に習いましたわ。


「わたくしに何のご用でしょうか?」


「すまないな。お前を殺せと雇い主から命令だ」


「雇い主? いったいどなたが……」


「おっとそれは言えないぜ」


「そんな……」


 お母様に習った、庇護欲そそる表情を浮かべます。動揺した男たちは、どうせ殺すなら話してもいいだろうと相談し始めました。その横でわたくしは縄を確認します。この程度なら、力で引きちぎれますわ〜!


「仕方ねーな。死ぬ前に教えてやるよ。うちの王様だ。お前が邪魔なんだとよ」


「そんな……ティモルト王国国王陛下が……?」


 涙を浮かべながら聞くと、ニヤニヤ教えてくださいました。では、用事はもうございません。ツリアーヌ様に報告に戻らないと!


「わたくし……ツリアーヌ様のところに戻らないといけませんわ!」


「お前がツリアーヌじゃないのか!? くそ! 間違えたか! しかし、全て知られたなら仕方ない。これだけの美人、もったいないが」


 ばん!


 思いっきりぶん殴りましたわ〜! ツリアーヌ様を狙うなんて不届もの。許しませんわ。ティモルト王国にせっかくきたのですもの。国王陛下ともお話しして帰りましょう。きっと王城の近くでしょうから。


「何事だ!?」


 ばん!


 次に入ってきた男もぶん殴り、牢を出ます。これが牢? 笑ってしまうわ。片手で壊せますもの。



「では、わたくしの師匠に悪影響を及ぼしかねない害虫を掃除いたしますか!」




 牢を出たらお城でしたわ〜! これは神様がわたくしに“ツリアーヌ様の周りを飛ぶ害虫をはたき落とせ”とおっしゃっているに違いありませんわ!


「久しぶりの戦い、楽しみですわ〜!」



「うわ、非常事態だ! 鐘を鳴らせー!」


「鳴らさせませんわ〜!」



 では、次はどこを破壊しましょうか?


 玉座の間は破壊して差し上げますから、お待ちになっていてね? ティモルト王国国王陛下。

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