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第54話:昼食をはさんで

 今日の定食メニューは卵。目玉焼きにキャベツ、それに卵の浮いたスープ、それと腹一杯分の米。栄養バランスは若干ミネラル分が足りないかもしれないが、五百円でこれだけ食べられるなら充分の量だろう。この間のコロッケはたまたま揚げ物が出来る程度に油があったからできたのかな、と疑問に思うところだ。食えただけでありがたい所だと考えておこう。


 流石に毎日揚げ物となれば油の消費も激しい。そこそこ人のいる環境とはいえ貴重な食べれる油分でもある。その辺をうまく調整しながらやりくりを続けているんだろう。


「目玉焼きか。マツさんのところではよく食べてたな」

「実入りのいい時はベーコンもセットで食べられたからな。それと比べるのは酷ってところだ」


 シゲさんと二人納得し合いながらいただきますする。貴重なワンコイン定食、もうワンコイン以上に稼いでしまっているから二食頼んでしまってもいいところだが、今日のところは午後の作業もあるし、また帰り際によって飯を食って帰ることにしよう。どうやら二十四時間営業のようだし、朝昼夕で食事も違うようだ。


 朝も開いてるということは、それだけ利用者がいて夜勤明けで腹を満たして帰って寝る、という生活をしている探索者も居るということだろう。


「その、マツさんのところ、というのはお二人の居たコミュニティなんですよね? 」

「コミュニティとまではいかないだろうが、まあ老人ホームみたいなもんだったよ。そこでは……」

「シゲさん、それ以上は」


 そんな夢のようなコミュニティがあるなら行きたい、と言い出す輩まで出だしかねない。こんな人の多い所で迂闊に口に出していい話でもないだろう。


「おっと、飯が美味いんで口が滑る所だった。まあ、なんだ。色々あって俺も三……五郎さんもそこでレベルを上げて戦って、なんとか帰ってきたってところなんだ」

「そうだったんですね。お二人とも随分レベルが高いようですし、午後からは三層に向かいますか」

「三層……どんなモンスターが出るんですかね? 」


 行く前に確認は大事だ。もしオークが出るのならば初体験となる。大名行列に紛れ込んでいるのを見たことはあるが戦ったことはまだない。どんな動きをしてくるのかすら不明だ。


「三層はゴブリンマジシャンが増えますかね。後はホブゴブリンの出現が時々ありますが、出現する場所と時間が決まっているので定期的に駆除されていますので、今日のところはまだ出会うことはないと思いますよ」


 オークは出ないのか。なら安心だな。ただ、あのダンジョンのようにあふれが定期的に起きる場合、下の階層から押し寄せて来る可能性もあるわけなんだよな。


「お聞きしておきたいのですが、”鉱山”ではモンスターあふれ、と言えばいいのかどうかは解りませんが、下の階層から上の階層に向けてモンスターが押し寄せてくる現象は発生するのでしょうか」


 庄司さんは少し考えた後、スープを飲み切ると食器と箸をその場に置いた。


「発生はしますが安心してください。今のところ”鉱山”は丁寧に管理されてますので、モンスターあふれの予兆があればその時点で全体に共有されてすぐさま非常事態宣言が出され、周辺にいる探索者が駆けつけてあふれの原因を止めて正常化させる流れになっています。なので心配しなくても大丈夫ですよ」


 どうやらここの管理は充分に行き届いている、そういうことらしい。安全にモンスター狩り、というちょっと矛盾した話にはなっているが、俺達先行き短い老人たちの先行きが更に短くなるようなことは現時点では問題ないらしい。


「それを聞いて安心しました。安全に三層に潜れるならそれに越したことはありませんからね」

「よし、とっとと食って戻って、三層でがっぽり儲けるか。今後は五郎さんともまた一緒に組めるようになるのかな」

「効率を考えたらやはり斥候役が欲しいな。効率的にモンスターを探すには俺とシゲさんだけじゃ迷っちまうかもしれないからな」


 斥候役を見つけるのは死活問題だな。一層二層でうろうろして稼ぐのでも現状問題はなさそうだが、三層でより稼ごうと考えたらやはり斥候役は欲しい。今日や前回は庄司さんが一緒にいてくれたが、若い人で俺達よりも上の階層に潜れる人をここで留め置くのは相手にも悪い。


 シゲさんも同じ考えなのか、庄司さんに今後も一緒に活動してくれないか、とは言わない様子だ。


「斥候役ですか……私の知り合いで紹介できればいいんですが、斥候役は結構貴重ですからね。ヒーラーの次に貴重な役割を担っていますから、スキルが発現するかも含めて貴重な人材なんですよ」


 たしかに、戦闘職でも攻撃をするだけならどんなスキルを持っていたとしても剣や槍を持っているだけでも充分戦闘力として計算に入れることができるが、斥候役のスキルにはモンスター探知や地形把握等の専用スキルがあるらしい。それがあるとないとでは、無駄に歩き続けるだけの時間が少なくなる分だけ利益にもなるし、確実なモンスター退治ができる重要な役職だ。探してすぐ見つかるわけでもないだろうな。


「お二人が同時に活動されるのではあれば斥候役だけみつける、もしくは戦力の拡充という意味で二人まとめて斥候役が既に存在するパーティーに二人セットで入る、という可能性はあるかもしれませんが、年齢のことを考えると厳しいことになるかもしれません」


 はっきり、年齢制限で役立たずとみられる可能性がある、ということだけは伝えてくれる。まあ、普通はそうなるよな。シゲさんは言い方が悪いが今回はおまけだ。俺をいかに売り込むかでシゲさんの立ち位置が決まると言えるだろう。


 そうなるには、今日しっかり三層に潜りこんで三層でも活躍できるんだぞ、ということをアピールしていきたいところだ。その為には目の前の食事を片付けて、午後からもしっかり働けることを確認しなくてはな。


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