しばらくゆっくり休んだ。どうやら二日目の筋肉痛は来なかったらしく、体が頑強であることが確認できた。どうやらこれもレベルアップの恩恵らしいが、よく考えれば前は三日に二日のペースで丸一日探索をしていたことを考えると、このぐらいなら問題なく動ける、ということなんだろう。これもマツさんに感謝しなきゃいけない所だな。
そんなわけで今日は探索者事務所へ来た。理由は二つある。ここでパーティー募集をしていないかを確認するのと、昔の仲間がここで探索者として活動を再開していないかを確かめるためだ。
もし、昔の仲間……マツさんのゲルに居た頃の人材が一緒にいるならお互い慣れた相手、連携も取れるし俺のスキルも知っていることから、多少突撃気味になったとしても理由を理解してもらえる。
掲示板を眺めてパーティーメンバー募集の項目を見ると、端っこに俺の情報も乗せてくれていた。スキルについては体質ではなく【豪運】というスキルを持っていることを書き込んであり、攻撃することで魔石を必ず落とす、ということについて記されていた。
今のところ応募はなし、かな。もし本当にそのまま受け取ってもらえるならば好条件で受け入れてもらえるとは思うが、流石に年齢とレベルを考えても同年代で揃えたい、という意思が強そうなことを感じる。
受付で確認を取ってみることにする。もしかしたら話がきているかもしれない。それで仮パーティー結成となれば、そこから順調に人気が出ていけば、臨時で他のパーティーにも誘われるようなことがあるかも。希望は出したことだし、試しに聞いてみることにしよう。
事務所の受付に行き、パーティー募集を出していることを告げ、名前とパーティー募集に連絡は来てないかを確認する。
「今のところ……一件は来てますね。まず会ってみて、どのぐらい動けるかどうかとスキルについて詳しく聞きたいというのがあります。それだけですね」
「相手の方はおいくつぐらいなのでしょう? お若いのでしょうか」
「そうですね、野田様からすれば子供さんぐらいの年齢のパーティーになるとは思います。それもあってなのでしょうが、パーティーの募集条件の緩さに比べて実際に話を聞きたい、と言われてくる方は少ないようにお見受けできますね」
やはり年齢制限があるってことだろうか。まあ、63にもなって探索者始めるって時点である程度の訳ありと判断されても仕方がないところ。一件相談が来るだけでもありがたいというところか。
「そのパーティーと連絡を取りたいと思うのですが、どのようにやり取りすればいいのでしょうか」
「こちらから連絡をお伝えしておきますので、都合の悪い日さえ教えていただければお見合いの席を設けることは可能です。もしくは、毎朝来ていただいて確認、ということにもなると思いますが」
ふむ。とりあえず今日この場で会ってパーティー結成相談、ということにはならなさそうだ。とりあえず都合の悪い日はないのと、毎日この時間に来ることを伝えておく。それだけ伝えておけばまた来た時にお互いの都合が合うところで話し合いの機会を設けられることになるだろう。
とりあえず今日のところはまた一人で探索かな。無理をしない程度に二層を巡って魔石を集める仕事に行くとするか。
探索者事務所を出たところで声をかけられる。
「もしかしなくても三郎さんか? 」
振り返ると懐かしい顔が見えた。シゲさんである。
「もしかしなくてもシゲさんか! 久しぶりだな! 」
「おうよ、といってもシゲさんじゃなくて今は加藤茂って名乗ってはいる」
改名してもシゲさんはシゲさんだった。どうやら名前を変更するほうには抵抗があったらしい。
「どっちにしろシゲさんじゃないか。俺は今は野田五郎だ」
「じゃあ五郎さんだな。五郎さんもあれか、やることがなくて探索者になろうとしてたクチか」
「なろうとしてたもなにも、既に探索者として活動を始めたところだ。シゲさんはこれからか? 」
「おう、これからだ。なんなら一緒に行くか? 」
これから一緒に行く、ということはシゲさんもお目付け役をつけられて潜れるかどうかを確かめられる立場になるんだろう。とりあえず知り合いとして実力が確かなことは証明できる。その助けになれれば俺もシゲさんの役に立つかもしれない。探索者事務所に戻ってシゲさんの登録を手伝うことにしよう。
「野田様、流石にさっきの今でパーティーメンバーが来たということには……そちらの方は? 」
「彼も探索者登録をすると言ってます。昔一緒にパーティーを組んでいた仲間だったのですが」
「なるほど、この方の後見役、ということですね。だとすると探索者として試しに行動してもらうことになりますが……野田様の権利ですと一層をひたすらグルグル回る、ぐらいしか許可が下りないことになりますがそれでも構いませんか? 」
「もしほかの手空きになっている職員の方がいればその方に後見役をお願いしたいところですね。私が代わりに出来るならその範囲でお手伝いしようと思ってるところではあります」
「なるほど、少々お待ちくださいね」
受付が奥へ行って、また何やら相談している。また老人が一人……という感じの内容ではある。
「多分、我々には聞こえてないと思っているんでしょうな」
シゲさんの言葉に肩をすくめる。レベルが高いと聴力も良くなり、年のせいで遠くなっている耳も鋭敏になっているのだ。
「ですね、まったく困ったものです」
しばらくして奥から……これは人の縁という奴かな? また庄司さんが出てきた。
「お久しぶりです野田さん。今度は昔のお仲間ですか? 」
「はい、お久しぶりです。こちらはシゲさんと言います。実力は私より上ぐらいだと思いますのでまた二層をグルグルと回ろうと思うのですが、お付き合い願えませんか? 」
「今回の取り分は三等分、キリの良いところで分けて、割り切れなかった分はそのシゲさんという方の収入、ということでいいですかね? 」
庄司さんは今度は二割じゃ効かないぞ、と先に金の話を始めた。まず金の話を始めるのはプロのお仕事だ。その点は信頼できるな。
「三人ならそれなりの収入を稼いで帰れるし、その気になれば三層へも行けるんですかね? 」
「うーん、シゲさんがどのくらい動けるのかがわかりませんから何とも言えませんが、場合によっては、ですね。とりあえずここで話していても収入にはなりませんし、とっとと出かける準備をしますか。私は着替えてくるので少し待っててくださいね」
どうやらうまくいった模様だ。
「彼女は信頼できる人なのかい? 」
シゲさんは庄司さんを知らないからな。そういう反応になっても仕方ないだろう。
「俺の担当をしてくれたのも彼女なんだよ。だから、俺の体質についても知ってるからこその腰の軽さってところかな」
「なるほどな。じゃあ今日はちょっといいものが食えそうだな」