ある日のこと。
「最近調子が悪いわ」
「どうしたんですか?」
涼香の前髪をサラサラと手から零れさせながら涼音が聞き返す。
「やる気が出ないの」
「いつも通りじゃないですか?」
「即答しないでよ……」
消え入りそうな声で答える涼香。確かに調子が悪そうだった。
「疲れているんですかね?」
涼香のことだから風邪とかでは無いだろう。
「だと思うわ」
涼香が目を閉じる。今にも眠ってしまいそうな様子だ。
「……先輩」
「どうしたの?」
「あしが……、いたくなってきました……」
「……」
涼香が涼音の脚から転がり落ちた。
「痛いっ」
ローテーブルの足に頭をぶつけた涼香がぶつけた個所を擦っている。涼音はその隣で寝転びながら足の痺れに耐えていた。
二人は並んで天井を見上げる。明るいLEDの光に目を細めながら、なにをするでもなく、ただ無気力に同じ時を過ごす。
「あたしもだるくなってきました」
足の痺れから解放された涼音が力なく呟く。涼香の調子が涼音までうつってしまったようだ。
「涼音、腕枕をしてあげるわ」
そんな涼音に腕を差し出す涼香。ありがたく腕枕をしてもらうことにする。
――そして数分後。
「涼音……、うでがいたいわ……」
「……」
涼音が涼香の腕から転がり落ちる。丁度涼香の脇腹に転がった。
「ふふっ……くすぐったいわね」
その後も二人は、無気力に時間を過ごすのだった。