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涼香の部屋にて 8

 ある日のこと。


「最近調子が悪いわ」


 涼音すずねに膝枕をされた涼香りょうかが呟く。


「どうしたんですか?」


 涼香の前髪をサラサラと手から零れさせながら涼音が聞き返す。


「やる気が出ないの」

「いつも通りじゃないですか?」

「即答しないでよ……」


 消え入りそうな声で答える涼香。確かに調子が悪そうだった。


「疲れているんですかね?」


 涼香のことだから風邪とかでは無いだろう。


「だと思うわ」


 涼香が目を閉じる。今にも眠ってしまいそうな様子だ。


「……先輩」

「どうしたの?」

「あしが……、いたくなってきました……」

「……」


 涼香が涼音の脚から転がり落ちた。


「痛いっ」


 ローテーブルの足に頭をぶつけた涼香がぶつけた個所を擦っている。涼音はその隣で寝転びながら足の痺れに耐えていた。


 二人は並んで天井を見上げる。明るいLEDの光に目を細めながら、なにをするでもなく、ただ無気力に同じ時を過ごす。


「あたしもだるくなってきました」


 足の痺れから解放された涼音が力なく呟く。涼香の調子が涼音までうつってしまったようだ。


「涼音、腕枕をしてあげるわ」


 そんな涼音に腕を差し出す涼香。ありがたく腕枕をしてもらうことにする。


 ――そして数分後。


「涼音……、うでがいたいわ……」

「……」


 涼音が涼香の腕から転がり落ちる。丁度涼香の脇腹に転がった。


「ふふっ……くすぐったいわね」


 その後も二人は、無気力に時間を過ごすのだった。

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