ある土曜日。
窓で大きくなっては流れていく雨粒を見ながら
「随分とお疲れですね、先輩」
そんな涼香の背中に言葉を投げかけながら、
「だって休日に雨よ、気分だって下がるわよ」
ベッドの上に座っていた涼香はその場で寝そべる。
「まー分かんなくもないですけどね。用意できましたよー」
起きてくださいよー、とベッドでただの屍のようになっている涼香を軽く叩く。唸りながら涼香は身体を起こし、ローテーブルの上に用意されているケーキに目を向ける。
「朝から贅沢ね」
中学時代の体操服を着た涼香が寝ぐせの付いた髪を手で梳きながらローテーブルの前に座る。
テーブルの上にはイチゴが一つ乗ったショートケーキやガトーショコラ、チーズケーキなど、種類の異なるケーキが全部で六種類あった。
「もう昼ですよ」
「まだ土曜日よ、時間は贅沢に使わないと」
「……あたし帰っていいですか?」
立ち上がろうとする涼音をがっしりと掴んだ涼香はフッと笑う。
「ダメよ。昼前に起きて涼音と一緒にケーキを食べる。休日の私の楽しみの一つよ」
「そう言ってもらえるならあたしも早起きして作った甲斐がありますけど……」
口を尖らせた涼音はケーキをフォークで切り取っていた、するとそこへ涼香がイチゴを刺したフォークを差し出す。
「涼音、いつもありがとう」
不服そうな目を涼香に向けながら涼音は差し出されたイチゴを食べる。
みずみずしいイチゴは甘酸っぱかった。