それにしても銃弾が止まらない。あれもこの剣と同じように普通の銃じゃないって事か。
「おい、ネズミ。取引といこうじゃないか」
「は、は!? 取引だと!?」
俺の話を聞き、銃弾が止んだ。向こうとしてもまったくダメージがない銃弾を打ち続けるのはしんどいのかもしれない。
「
「なに……?」
「知らねぇんだよ。どうたんだ。生き返るのか?」
魂なんて言葉があるくらいだ。無関係とも思えない。
「……
デスペナみたいなものが一応あるのか。
「逆にこれを俺が使ったらどうなる?」
「て、てめぇ!? エイブを殺すきか!!」
「知らないんだ。で、どうだ。俺が使うとどうなる」
「糞! エイブが持っているタナトス因子が吸収されるんだよ!」
タナトス因子ってのは何だ? 聞いた感じ経験値みたいなもんだろうか。
「つまり経験値の塊って事か。なるほどね」
「いい加減にしてくれ。取引ってのはなんだ!? お前らがエイブの
「だから立場を理解しろ。俺はお前をいつでもやれる。勘違いしてるみてぇだが俺はまだ
「……ッ糞!」
震える手でもう一度銃を構えるがしばらくして銃口を地面に下ろした。
「どうすりゃいいんだ?」
「簡単だ。俺が取引でお前にやるのは、エイブの
そういって俺は手をデコピンの形にして構える。するとネズミは分かりやすく怯え始めた。
「お前が出すのは情報とその――銃だ」
「は、は? 俺の
「そうだ。殺して奪ってもいいんだぞ。余計な事を考えるな、いいから寄越せ」
少し脅すか。俺はわざと崩れかけのホテルへ手を向けデコピンを放った。
「ヴァンダリム」
放たれた中指が距離も質量も無視してホテルの壁を抉るように破壊する。今度はホテルだけを狙うように威力は調整した。これなら被害もそんなに出ないはずだ。
「まず銃を寄越せ。それとエイブの
「糞、糞、糞!!! なんでこんな目に遭うんだよ! 楽な仕事だったはずなのに!!」
「いい加減にしろ。時間稼ぎか? マジで潰すぞ」
「ひぃ! わ、わかった。わかったから!!」
ネズミは分身を解除するとこっちへ銃を投げてきた。あぶないな、投げないでくれ。飛んできた銃を俺の後ろに隠れていたリリアが飛んでキャッチする。危なくないのだろうか。そんな事を思っていると不思議な事が起きた。
「ん?」
「おお! 凄いです!」
なんと銃が縮んだのだ。なんていうかリリアの身体に合わせるように小さくなっている。こりゃどうなってんだ。
「次に情報だ。
「――俺だって詳しくは知らない。ただフラグメントってのはタントスの夢界に入れなかった一般人の夢の欠片だって聞いたことがある」
タナトスに入れなかった人の夢の欠片だと? どういう意味だ。
「フラグメントの中に色んなものが入っているだろ。それは人が見た夢の一部らしい。だから色んなものが入ってる。それこそ何でもだ。食い物とか、飲み物とか、偶に自転車とかバイクなんて乗り物が出るときもある」
俺が拾った包帯や水もそういう夢の欠片って事か。
「もしかして
魔法の道具? そりゃどういう……。
「大体そんな感じだ。その銃も銃弾が切れないっていう
「なるほどです」
待て俺は理解出来てないぞ。
「リリア?」
「そうですね。分かりやすくいいますと、夢ってなんでもありじゃないですか。例えば銃を使ってゾンビと戦う夢があったとしましょう。その時、夢の中の銃は銃弾が切れたりしますでしょうか?」
銃弾だって? そりゃどうなんだ。でも夢ってのは都合のよく展開していくこともある。なら銃弾が切れない銃ってのもあるのかもしれない。
「恐らくそういった珍しい夢。魔法のような道具が登場する夢。それが欠片として出現することを
つまり俺がエイブが持っていたこの爆発する剣も誰かがそういう夢を見てそれが形となって表れたって事か。ってことはだ。他にもこういう道具がいっぱいあるって事だろ。中にはチートみたいな奴もありそうだな。
「……もう大丈夫です。聞きたいことは聞けました」
「いいのか? こいつに12階層までの距離とか聞いた方がいいんじゃねぇか」
「いえ。それはやめておきましょう。私たちの動きを確定させてしまいます。それに方角は分かっていますから歩いていけば分かると思うです」
「了解」
リリアとそう話した後、俺はもう一度ネズミの方へ視線を向ける。
「こっちが聞きたいことはもうねぇ。さっさと失せろ。ああそれと無駄かもしれねぇが今度俺達を追ってみろ。問答無用に潰すぞ」
「ちッ! 誰がもう来るかよ」
そう言い放ったネズミにエイブの
「これでいいのか? 多分エイブの
「いいんです。私はナイトメアをコツコツ倒してフラグメントを集めます。なんていいますか、少しでも人の命に近いもの使ったという感覚を味わいたくないのです。偽善でしょうか」
「さあな。でもいいんじゃねぇか」
何が正解かもわからないんだ。変に罪悪感を覚えないように心を強く保てる方を選んだ方がいいだろ。
だからそろそろか。
「なあリリア」
「なんです?」
俺はリリアに視線を向けないように言った。
「俺は多分。ガキの頃にこの世界に来たことがある」