目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

カラスに襲われていた仔猫「ジロ」

 カラスが仔猫を襲うことはよくある。

 とあるクリーニング工場敷地内にいた仔猫は、カラスにつつかれていたところを従業員に救出された。

 すぐに病院へ連れていってもらえたことは良かったけれど、そのまま保護できる人は社内にいない。

 そこで配送のトラックドライバーが助手席に仔猫を乗せて、相談に来たのはとあるホテルのリネン室。

 当時は個人保護主として活動していた僕に、相談が回ってきた。


「この子、預かってもらえないかな?」


 そう言ってトラックドライバーが見せた仔猫は、仰け反るようにしながら体を震わせていた。

 怖かったり寒かったりして震えているのとは違う感じ。

 直感的に、この子はあまり長くはないと思った。


「預かってもいいけど、生き延びられるかどうか微妙かも」


 そう説明して、仔猫を引き受けた。

 仔猫は箱の中で大人しくしている。

 同僚たちが協力してくれて、交代で見守ってくれた。



 見守りスタッフの1人が、仔猫を「ジロキチ」と呼び始めた。

 いつか猫を飼えるようになったら付ける予定の名前らしい。

 しかしその名は他の人には不評で、別のスタッフが「ジロ」と名付けた。


 ジロは多分、癲癇の持病があったんだろう。

 それで母猫に育児放棄されて、カラスの餌食になりかけたんだと思う。



 ジロは歯が生え揃っていたので、多分生後1ヶ月くらいかな。

 ウエットフードを自力で食べられる年頃だった。

 一度に食べる量は少なく、シリンジでミルクを飲ませたりもした。


 癲癇のような発作は頻繁に起きる。

 交代で世話をしてくれたスタッフの1人が、レイキヒーリングというのを試していた。

 病院にも連れて行き、痩せているので補液もしてもらった。

 生き延びてほしいと誰もが願ったけれど、願い叶わず。


「もう延命措置はしない方がいいよ」


 保護8日目、その頃にはジロは様子を見るといつも痙攣を起こしていた。

 顔を上げることもできず、意識は無い状態。

 点滴をやめた翌日、ジロは目覚めないまま息を引き取った。


 2018年6月10日、保護9日目にジロ永眠。

 その亡骸は、当時まだ出来たばかりのペット霊園の共同墓地に埋葬された。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?