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トリミングされていた捨て犬「タンタン」

 その犬は、トリミングされたばかりと思われるルックスの良い子だった。

 2018年に八重山保健所に収容されたのは、おしゃれな首輪もついた可愛いワンコ。


「すぐ飼い主が出てくるよね」


 誰もがそう思った。


 けれど、1ヶ月経っても飼い主は現れなかった。


 ネグレクトなら、そもそもトリミングなんかしない筈。

 飼い主に何かあったのだろうか?


 ボランティアの1人が、着けている首輪がとあるドッグサロンのオリジナル商品だと気づいた。

 ドッグサロンに問い合わせたことで、飼い主は明らかになった。


「良かったね、これで迎えに来てもらえるね」


 みんながそう思った。


 でも、ドッグサロンから報せを受けた飼い主は、今は自分の犬ではないと答えた。

 知人に譲ったというので、今度はその知人に連絡してみると、無責任な答えが返ってきたという。


「もういらないから、誰かにあげて」


 酷い飼い主。

 愛情なんて全くない。

 まるでオモチャか何かのような扱いだ。

 その後、飼い主は所有権放棄の手続きをして、本気で犬を棄てた。



 それならば、と、譲渡ボランティアが保健所に引き出しを希望。

 保健所から出た犬は「タンタン」という仮名をもらい、ちょっとだけ我が家で預かった。


 トリミングされているのに、身体はノミだらけ。

 精神的に不安定で落ち着きのない状態。

 パッと見は綺麗に手入れされているように見えるけれど、実際はネグレクトに近い扱いだったんだろう。

 我が家にあったノミダニ駆除薬をつけて、ノミが落ちた頃にタンタンは次のボラ宅へ移動した。


 1人目の飼い主も、2人目の飼い主も、もうペットを飼わない方がいいと思う。

 可愛がりたいならぬいぐるみにしておけばいい。

 命あるものを、おもちゃと同じに扱わないでほしい。


 タンタンは内地のボランティアに引き取られ、島から旅立った。

 あれから6年、今年タンタンは7歳。

 健康そうだからあと7~8年は生きる筈。

 3人目の飼い主には、生涯大切にしてもらえることを願う。



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