2020年の春のこと。
保健所から2匹の仔猫を預かった。
譲渡ボランティアとしての引き出しではなく。
ミルクボランティアとして、初めての預かり。
受け取った仔猫は、まだ目の空いていない、手乗りサイズの乳飲み子だった。
へその緒はもう取れていたから、生後3日は過ぎている。
目が開いてないから、生後8日は過ぎてない。
推定生後5~6日の、真っ黒い仔猫たち。
朝も夜も、3時間おきにミルクをあげた。
猫の赤ちゃんにミルクを飲ませるときは、うつ伏せの姿勢にしてあげる。
飲ませる前と後に排泄補助をしてあげる。
毎回授乳の度に体重をはかり、ちゃんと増えているかチェックする。
そうした基本的なことを、ベテランミルクボランティアから事前に習っておいた。
連続した睡眠はとれず、合間に短い睡眠をとる日々。
まだ自力で排泄ができないから、丸めたティッシュでお尻をチョンチョンつついて、シッコを出してあげた。
人間が猫の子を育てるのはなかなか大変なこと。
最初の関門は、哺乳瓶でミルクを飲んでくれるかどうか。
母猫の乳首と違う哺乳瓶を嫌がったり、母乳と違うミルクの味を嫌がって、飲まないことがある。
預かった2匹は、初心者に優しい(?)乳飲み子だった。
初回はシリンジでの授乳を試したら、何も操作せずに持ってるだけでぐんぐん減っていくミルク。
素晴らしい吸引力。
すぐに思いついた名前は「ダイ」と「ソン」。
ハムスターみたいに尻尾が短い(無いに等しい)のがダイ。
普通の猫と同じ長い尻尾がソン。
2匹は怪我も病気も無く、すくすく育ってくれた。
乳飲み子から人間に育てられたから、とても人懐っこい仔猫になった。
人生初のミルクボランティアができたのは、勤務先のリゾートホテルが長期休業をしたから。
例のあのウイルスが石垣島で猛威をふるい、観光業界が壊滅的なダメージを受けた年。
ホテルスタッフは自宅待機を命じられ、有給扱いで3ヶ月を過ごした。
不要不急の外出をせず、家でゴロゴロしているだけだから、断続的な睡眠でも割と平気だった。
3ヶ月間の有給なんて、きっともう二度と無いだろう。
思い出深い貴重な体験ができた2020年。
長期有給が終わる前に、養い子たちは里親希望がきて巣立っていった。
ダイの里親になってくれたのは、馬や山羊や犬など様々な動物を飼育しているボランティア仲間。
ソンの里親になってくれたのは、ダイの里親の隣人でTNR活動をする人。
既知の仲で動物愛護精神の高い里親さんとその隣人に引き取られたことは、育ての親としては嬉しい限り。
今は4歳、完全室内飼いだから、あと10年くらいは生きられる筈。
里親さんのもとで健康に過ごして、天寿を全うできますように。