遠い。流石に遠すぎる。とりあえず魔防壁のところまで来れたけど、そこからが遠すぎた。もう三日ほど歩き続けているけれど、一向に終わりが見えない。
そもそも、世界の果てを目指しているわけだから仕方ないのだけど、妖精界に来るときはこんなに時間かからなかったはず。来るときと変わったことといえば……
「ねえ、リュシェ。オク太郎殺して飛ばない?」
「飛ぶのは賛成だけど、殺すのは反対だ。置いていくだけでいいだろ」
わざわざ殺さなくてもいいのか。こいつから私たちの情報は洩れないし、後からついてくるようにすればいいか。
「オク太郎、私たちは先に行くけど、自分で何とかして
オク太郎にそう言い放ち、翼を広げる。私が広げるのをみて、リュシェも翼を広げた。
リュシェの翼は深い青色で、悔しいことに私の翼より整った形をしていた。
翼を広げて、空を駆ける。なんて心地よいのだろう。昼間は文字通り雲に手が届くし、夜はビックリするほど星が近い。まるで空そのものになっているようだった。
8時間ほど飛ぶと世界の果てが見えてきた。そこから
そんなことより魔防壁だ。よかった、予想通りまだ張られてないみたいだ。空に堕ちないように注意しながら崖を飛び越える。
「ちょっと待ってくれ。さすがに魔力の限界だ。今晩は野営しようぜ」
私には黄金のリンゴの膨大な魔力があるから忘れていたけれど、魔族は飛び続けていたらいつかは魔力が付きて落ちてしまう。私も魔力を使い続けていたので、休んで回復するべきなので提案を受けることにする。少し先に野営にぴったりの洞窟があったはずだ。
「わかった。向こうの洞窟で休もう」
♦
洞窟の少し手前で降りて、中に誰もいないかか確認する。魔族でなくても、コウモリや魔物がいるかもしれないからちゃんと確認しないといけない。もししなければ、リュシェみたいに魔物につかまってしまう。
「そっちは大丈夫そう?」
「おう!ばっちりだぜ!」
リュシェの言葉に安どしたのもつかの間。大声に反応してコウモリの大群がリュシェのほうからやってきた。いったい何が大丈夫なのだろうか。寝ている間に血を全部抜かれたらどうするつもりだったんだろう。
「うおっ!?何なんだよこれ!」
自分で読んだコウモリに襲われてリュシェが暴れている。仕方ないけど、助けてあげるか。
「
右手から放った魔力のボールにコウモリがどんどん吸い寄せられてくる。私の魔法はあくまで引き寄せるだけなので、ちゃんと倒さないと意味がない。
「リュシェ!やっつけて!」
近くのコウモリがいなくなったことに気づき、暴れることをやめてリュシェは真剣な表情で呪文を唱えている。無詠唱で使えない魔法は使ってほしくないけど、今回は我慢しよう。
「――
リュシェが呪文を言い終えたとたん、集まっていたコウモリが一気に
「無詠唱で打てる魔法はないの?」
さすがなんだけど、前隙が大きすぎる。普通は、何度も何度も使って無詠唱で打てるようになった魔法以外は戦闘で使わないはずだ。コウモリ相手だからよかったけど、魔物や魔族が相手だったら瞬殺されている。
「あるに決まってるだろ!
「ならそれ使ってよ!」
「コウモリ相手なんだから何の魔法使っても一緒だろ」
「私があんたの詠唱時間分疲れるの!魔力も減るの!」
「寝て起きたら全部回復してるだろ!少しでも無詠唱で打てるようあの魔法を使ったほうがいいじゃないか!」
確かにそうかもだけど……
「練習なんてどこでもできるでしょ!今じゃなくてよかった!」
「おいおい、それは暴論だろ。当分足りてないなら飴玉あげるけど……いる?」
「いらない。もう寝るから」
リュシェに悪気がないのはわかる。なんでかわからないけど突っかかりたくなってしまった。彼の言う通り疲れているのだろうか、ならなおさら寝たほうがいい。