「彼と話したいから、そのままにしといて」
首根っこをつかまれた魔族の少年は私と同い年くらいだろう。長い白い髪を後ろでくくり、前髪の間から碧い目をのぞかせている。白いシャツに黒いネクタイ、ベスト、ズボンを身にまとっている。貴族に似た服装だけれど、何か別のものだった気がする。知っている気がするけれど、思い出せなかった。
「あなた、名前は?」
「リュシェ。ゼリオス・リュシェ」
ゼリオス家。確かセントラル領の上流貴族のはずだ。そんな家の人が――
「なぜここに?」
「
「質問していいのは私だけ。何しに妖精界へ来たの?」
「ふん。名前も名乗らないやつに教えることなんてない」
もっともなことを言っているけれど、現状が分かっていない。
「オク太郎、首をへし折って」
「わかりました」「わかった。話す!話すから」
オク太郎とリュシェの声が被る。声質が違うから何とか聞き取れた。
「俺は、俺は、逃げてきたんだ――」
「何から?」
「魔界から。あそこはもう腐ってる。ここ数百年戦争がなかったから貴族は権力だけを求めるようになった。民のために剣を取ることを忘れたんだ」
彼からは情熱を感じる。本当に逃げてきただけだろうか。
「それだけ?」
「妖精界でうんと強くなって、魔界に戦争を仕掛ける。腐敗した貴族に喝を入れたいんだ」
まさかの答えに唖然とする。私と似たようなことをしようとする魔族がほかにいるなんて。彼なら私に協力してくれるかもしれない。
「私はリティー・ノア。ここにいる目的はあなたとほとんど同じよ」
私の言葉にリュシェは目を丸くする。
「リティー家って、政府に消されたあの?!」
もっともな質問だし、これを知っているということはやはり事実なのか……。
「ええそうよ。私はリティー家を消すことを提案した貴族に復讐して、魔界に革命をもたらすために
私の返事に今度は大笑いされた。
「マジかよ!こんなところで同志に合うなんて。革命って具体的にどうするんだ?」
そりゃあ、オークの住処で同志に合うなんて誰も想像できないだろうな。
「四大貴族と、王族を消して、中央議会も潰す」
今度は口を開けて静止した。表情が豊かな人だ。
「マジ?勝てると思ってんの?」
「絶対に勝てる戦いなんてないから負けるかもしれない。だけど、負けるつもりはない」
「どうやって戦うんだよ?」
オク太郎を指さしながら質問に答える。
「それで」
「オーク一匹で?無理に決まってるじゃないか」
もっともな意見だけれど、私には
「そんなもんじゃないよ。私は黄金のリンゴを食べた」
またまた、固まった。面白いな。
「マジかよ。なら、できなくもないのか。でも、全員殺されたら俺の目的が果たせないじゃないか」
「仮に、君がとても強くなったとして魔界に戦争を仕掛けた。君が勝ったら度うするつもりなんだ?」
「そりゃ、勝たないように適当なところで逃げるんだよ」
「その”適当なところ”に行くまでにどれだけの人を殺すつもり?今の貴族は必ず市民に戦わせるわ」
「そりゃ……」
あと一押しだな。
「そもそも貴族も王族もいらないんだよ。全員平等でいいはずじゃない?」
「ならどうやって貴族制度をなくすんだよ!?」
「力のある貴族、四大貴族と王族を殺す。政治の実権を全て握り、私の下の平等を作る。貴族も平民も奴隷も私の下ですべて等しく扱う」
「仮に負けたとしても、君が”適当なところ”で逃げるよりかは貴族は変わると思うよ」
「そうか……確かにそうかもな。わかった。あんたに協力するよ。えっと、なんだっけ?」
「リティー・ノアよ。よろしく」
こうして、私は初めての協力者を得た。