目の前に
「洞窟の中にいるオークを殺してきて。ナイフを貸してあげるから喉元を掻っ切ってきなさい」
寝ているオークを殺すだけだから何事もなく終わると思っていたけれど、現実は甘くなかった。私のオークが洞窟に入ってから数分後、オークのものではない悲鳴が聞こえた。
このタイミングでの悲鳴だ。関係ないわけない。それに、オークが起きて返り討ちにされているかもしれない。
急いで見張り台から降りて洞窟に駆け寄る。洞窟の中にはオークの死体と、魔族の首をつかんでこちらに歩いてくる一匹のオークだった。
「オク太郎。それは何?」
私の言葉にオークは困った様子で、魔族は一瞬だけ安堵の表情を見せたのち困惑した表情を浮かべた。
「オク太郎ですか?」
少し困った顔のオークが質問する。
「名前がないと分かりにくいでしょ。オク太郎、それは何?」
私の答えに納得したのか、オク太郎の表情は通常に戻った。
「これは洞窟の奥のほうで鎖につながれていました。どう扱おうか聞きにまいった次第です」
先ほどとは打って変わってなんの抑揚もない喋り方で答えるオク太郎。これは奴隷としては正しいのだろうけれど、機会みたいで気色が悪かった。