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第6話 失踪1

 ポポと一緒に村に向かう道中で、気絶する前に見えたルミナの手から放たれた選考について聞くことにした。


「気絶する前にルミナの手から出る光が見えたんだけど、何なんですか?」


 ルミナが答えるよりも一瞬早く、ポポが答えた。


「あれは魔法ですぽ。ユーキは魔法のこと知らないぽ?」


 ポポの質問に首を縦に振る。


「じゃあユーキのためにポポが教えてあげるぽ!魔法は誰でも使える普通魔法とその人にしか使えない固有魔法があるぽ。女神さまの閃光もポポの変身も固有魔法ですぽ」


 つまり、俺にルミナみたいなすごい魔法は使えないけど、普通魔法とやらは使える―ということだ。


「普通魔法ってどんなのがあるんだ?」


 俺の質問にポポが顔を曇らせる。


「ポポが知っているのはあれだけですぽ。ポポの村には普通魔法の本がなかったですぽ」


 本がなかったら知らないのは当然だ。そして、二人の顔は残された希望である女神へと向けられる。


「なによ。私も知らないわよ!」


 ルミナの知識が乏しい事実にため息が出てしまった。元からこの神様に博識であることを求めたおれが悪いのだ。隣のポポもこころなしかあきれているように見える。


「あのねぇ、神様だって知らないことぐらいあるわよ」


 真っ当なことを言っているのだろうけれど、ルミナの場合は知っていることのほうが少なそうな気がする。一か月前のあの町での座学の時だっておれの質問に答えられないことが多々あった。


「ポポの村では神様から魔法をもらうと教えられているぽ。それなのになんでルミナ様は知らないんですぽ?」


 ポポの純粋な疑問にルミナが答える。


「確かに魔法を授ける神様はいる。でも、私の管轄じゃないから知らないわ」


 ルミナの管轄は神樹だ。魔法は確かに管轄外なのかもしれない。


「ほかにはどんな管轄の神様がいるんだ?」


 これ以上魔法のことを聞いても何の収穫も得られそうになかったので、別の質問にする。


「そうね、ほかには太陽とか、法律とか、虫が担当の神もいるわ。大きなことから小さなことまでいろいろあるわね」


 太陽から虫…思っているよりたくさん神様がいそうだ。日本の八百万の神々みたいだな。


「村が見えてきましたぽ!」


 ポポが示す先には確かに村があった。




 村には神樹のふもとの町と違い、門番がいなかった。今のおれは羽をはやすことができるからいても問題はないのだけれど、魔物のいる森の中に塀も門番もなしだと危なくないのだろうか。


「私は宿屋を探してくるわ。二人はテキトーに散策しといて」


 村についたのに忙しいやつだ。


 散策といっても周りにあるのは、


「ここ、牛さんと畑と家しかないですぽ」


 あたりを見回していたポポがつぶやく。本当にポポの言うとおりの、畑と農場しかないこの村でどこを散策するのだろう。


「なんもないし、宿屋に行くか」


 ポポも賛成してくれたことだし、ルミナが走っていったほうへ歩いていくことにした。


 目に映る風景は田舎そのもので、畑仕事をする人、牧場で作業する人、井戸端会議をする人、まさに十人十色だ。けれど何か足りない気がする。静かで、平和で完璧ともいえるこの村だけど、何か足りないのだ。


 そうこう考えているうちにルミナのいる宿屋にたどり着いた。彼女はカウンターで予約をしてくれていたので近くの椅子に腰を下ろした。ぼーっとしていると突然大きな声が聞こえてきた。


「なんだって!」


 ルミナ一人に任せたのが間違いだったのかもしれない。隣のポポを持ち上げカウンターまで早歩きで移動した。


「どうしたんですか?」


 カウンターにいる受付嬢に質問する。


「この村から子供が消えちゃったんだって」


 受付嬢に聞いたのにルミナが答えた。そのあと、ずるい。と言い俺の腕の中のポポを強奪した。癒されていたのに…。


「子供がぜんいんどこかに行ったんですか?子供だけで?」


 ルミナはポポに夢中で今度は受付嬢が答えてくれそうだ。


「そうなんです。ある日の昼間、急に子供たちが森のほうへ走って行って。私の弟も」


 そこから先は声にならなかった。辛い思いをさせてしまったかもしれない。あたりに重い空気が流れ始めるかと思ったけれど、そうはならなかった。


「ポポたちが探してくるぽ!」


 ルミナの腕の中のかわいい動物が声を上げた。魔物の姿のまま喋っていいのか、という疑問はこの際どうでもいい。今の問題はポポが危険に足を踏み入れようとしていることだ。


 子供が一斉に森に走り出して帰ってこないなんて尋常じゃない。迷いネコ探しとかそうゆうレベルじゃない。


 どうせ、魔物か悪いエルフが裏で何かしているに決まっている。そして、そいつらを探し出せたとして勝てるだろうか。戦力になるのはルミナの魔法とおれの剣しかないし、おれは多分また腰を抜かす。オークのトラウマがまだ脳裏に残っているから。


 何とかして断らないと、


「本当ですか?」


 受付嬢の瞳が輝きながらポポの姿を映している。


「もちろんぽ。ポポたちにお任せぽ」


 最悪だ。ここまで来たら断ることはできない。いや、できるだろうけどこの状況で断れるのは空気の読めない奴か、道徳心がゼロの奴だけだ。残念なことにおれはどちらでもなかった。


 またイレギュラーに首を突っ込むのか。最悪だ。

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