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第2話 女神

 透き通るような金色の髪を携えたその女性は、なぜかおれの名前を知っていた。


 威厳というか、オーラというか、不思議な雰囲気を持っている女性だった。


 顔も整っていて、美しいその姿に息をのんでと彼女は再び話し始めた。


「私の名はルミナ。この世界を治める神の一柱です。ユウキよ、私を救ってくれますか?」


 その雰囲気と美しさに飲まれて、返事をしないおれを心配したのか不安げな表情になる。


「ユウキさん?ユウキさん、聞こえていますか?」


 肩をゆすられて、やっと我に返る。


 申し訳なさと、勢いで何を聞かれているのかわからないのに、はい!と返事してしまった。


 自分の過ちに気が付いたのは、彼女から詳しい話を聞いた後だった。


「本当ですか!?」


 よっぽどうれしかったのか、おれの顔をのぞいている。


「あ、まぁ、はい」


 一度yesと返事をしてしまったし、こんなにうれしそうにされると断るのが申し訳ない。


 よっぽどうれしいのか、軽くジャンプしている。


「そんなにうれしいんですか?」


 相手は自分とそんなに年は変わらなさそうだけど、神様らしいから敬語で行くことにする。


 なめてかかったら殺されるかもしれない。


「当り前でしょ!君にしか頼めないんだから。あ、もうタメでいいわよ。敬語はお互いにつかれるから。それに、これからは『相棒』でしょ」


 自分の知らないところで話を進めていく。


 相棒というのはよくわからないけれど、それよりもしゃべり方の変化に意識を持ってかれる。


 神様だという信ぴょう性がなくなっていく。


「あ、あの、しゃべり方…」


 違和感に耐えられず質問する。


「あ~、もう公式なアレじゃないから。さっきのは依頼してたわけだからちゃんとした喋り方じゃないといけなかったの」


 依頼という割に詳しいことは何も話さなかったけれど…。


「あの、神様、ここはどこなんですか?あと依頼の内容を詳しく教えてください」


「ルミナでいいわよ。ここは君のいる世界とは別に世界。アヴァロンよ。あと、依頼の内容は町で話すわ。その道のりでこの世界のこといろいろ教えられるから」


 いくら許可が下りても、神様を呼び捨てにするのは難易度が高すぎる。


 内容に関しては上手くかわされたような気もしなくはないけれど、悪い人じゃなさそうだし大丈夫だと思うことにする。


「あの町までどれくらいですか?」


 はるか先にある大樹の根元の町を指さす。どう頑張っても数時間はかかりそうだった。


「まぁせいぜい三十分位よ。かかっても一時間位じゃないかしら」


「三十分!?徒歩で?」


 あの町は実はよっぽど近くにあったらしい。


 昔から目の良さにはある程度自身はあったけれど、ゲームのやり過ぎで目が悪くなったのだろうか。


「そりゃあ徒歩だったら数時間かかるわよ。でも、空を飛ぶんだからもっと早いわ」


 自分の目が間違っていなかったことに安堵した直後、自分にはできない移動方法を提案される。


「飛ぶ!?どうやって?」


 もしかして、この神様は自分だけ早く待ちに行くつもりなのか?頼み事しているのに?


「飛べるんだったらいいけど、ユウキは人間だから飛べないでしょ。仕方ないから運んであげるよ。」


 そういって手を差しだされる。ここで手を取らなかったら一人で右も左もわからないこの世界を数時間歩く羽目になるらしい。そんなのはもちろん嫌だ。


 差し伸べられた手を取ると、彼女の背中に薄くて大きくて半透明の羽が現れる。


 羽が上下して、彼女が浮き、少し遅れて持ち上げられる。




「君、重くない?」


 少しとんだところで少し失礼なことを言われたけれど、気にしない気にしない。


 そもそも、体格の差がほとんどないのに簡単におれを持ち上げられること自体がすごい。




 神様の言う通り三十分ほどで木の根元にある大きな町っぽいものの入り口についた。けれど、そこから見えるのは民家でも、畑でもなく某巨人マンガを彷彿させる見上げるほど高い、巨大な壁だった。


 おれが建物だと思っていたのは大きな壁だったのだ。


 門番に検査をされ、町に入る許可をもらう。


 検査ときに羽のないことを理由に疑われたけれど、神様がうまくなだめてくれた。


 入ってすぐ服屋に案内されて着替えの服を買い、渡される。


 ここの服と違う服を着ていると目立ってしまうかららしい。ただでさえ羽がなくて目立っているのにこれ以上目立つのはごめんだ。


 更衣室で着替えさせてもらった。アヴァロンの服は古代ローマの服に似ている、というかそっくりだ。


 アヴァロンには神様のほかには妖精と魔物しかいないらしい。


 妖精はゲームや漫画に出てくる姿そのままの見た目をしている。


 神様と違い羽の出し入れができないらしい。羽は神様と同じで半透明でみんな違う色をしている。


 ちなみに、背中から生えているわけではなく、背中との間に少し隙間がある。


 神様の力で羽くらいはやしてくれればいいのに…。




 着替えた後は町を散策しながら説明をしてくれた。


 空が暗くなったころ、酒場に案内された。


 酒場といっても未成年なのでお酒は飲めず、晩御飯を食べるだけだった。


 神様はジョッキでビールを飲み始める。


「年あんまり変わらなさそうなのにお酒のんでいいんですか?」


「見た目が若くても私は神様なの!あんたの十倍以上は生きているわよ!」


 十倍以上ということは百五十歳は軽く超えているのだろうか。


「ばばあじゃん。」


 思ったことをつい口にしてしまう。おれの悪い癖だ。消されたらどうしよう。


「うるさいわね。まあいいわ。あんたも人の子。間違えることだってあるもんね。私の心は広いから許してあげるわ」


 神様の心の広さに救われた。何とか一命をとりとめ、安堵する。


 一番大事なことを忘れていた。


「結局依頼の内容って何なんですか?」


 アルコールが回って少し赤くなった顔がまじめな表情に変わる。


「町で教えるって約束だったもんね。わかったわ。けどここじゃ人が多すぎる。場所を変えましょう」


 そういって、ビールを飲み干しお金を払って店の外に出る。


「飛ぶわよ」


 差し出された手を取って、あの木の根元まで飛んでいく。あの大きな木は「神樹ユグドラシル」という名前だと、町に来るときに教えてくれた。なんでもこの樹の力で世界を維持してるとか何とか。


 ユグドラシルの根元には、透き通った美しい湖があり、その上にかかった橋の向こうにはユグドラシルに半分以上埋まった建物のようなものがある。


 神様の後に続いて、建物に中に入る。


 中には大きな壁画がいくつもあって、入って正面にある一番大きな壁画の前で神様が話し出す。


「ユウキ。あなたには――」

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