忘れ物を取りに戻ってきたという浜と、彼女に付き添ってきた大島は、目的のものを回収すると、教室から去って行った。
去り際に、大島が、
「小春、良かったね! 立花と話すことが出来て」
と、穏やかな表情で声をかけると、小柄な女子生徒は、はにかんだように、小さくうなずいていたことが印象に残っている。
クラスメートの女子生徒を見送ったあと、オレも、荷物をまとめて帰宅することにした。
色々なことがあった放課後をどうにかやり過ごして家に戻ると、LANEでメッセージを送る。
================
放課後、色んなことがあったので、
時間があれば、話しを聞いてほしい
================
メッセージには、すぐに既読の表示がつき、返信が来た。
================
金曜だから、いつでも大丈夫よん!
================
そんなワカ
発信から十秒もかからず、通話相手は応答してくれた。
「お疲れちゃん! 宗重、そろそろ中間テストの時期なんじゃないの?」
―――そう! 月曜から試験なんだ。だけど……
「そっか〜。ってことは、アンタの周りでよほど重大なナニかがあったってコトなんだね?」
勘の良いガキは、国家公認の『
オレは、週のはじめにクラス委員の女子と喫茶店で話し合ったことや、次の日の放課後、そのクラス委員の女子と転校生に呼び出され修羅場をもくげきする羽目になったこと、四葉ちゃんへの相談主として自ら名乗り出たこと、その件について、ふたたび転校生と言い合いになったこと、一方でオレのことを励ましてくれるクラスメートがいたことなどを時系列に沿って、報告した。
客観的に見れば、取り留めのないオレの話しを、ワカ
―――ふむり、ふむり。いや〜、青春だね〜。幼馴染ちゃんや転校生ちゃんだけじゃなく、ツンデレちゃんや銀髪の小動物系美少女に、美形の少年キャラとまで仲良くなるなんて、宗重、いつから、ラブコメ漫画の主人公になったの?
「いや、その見解には、大いに問題がある!」
オレが、ツッコミを入れたあと、学生時代を懐かしむような、あるいは苦笑いをするような口調で語る相手に対して、
「ワカ
と、つぶやくと、その言葉には答えることなく、彼女は、こんなことを指摘してきた。
―――で、宗重は、なにを悩んでるの? ここまで聞いた話しじゃ、これまでの行動で、アンタに責任があるのは、幼馴染ちゃんに了解を取らずにYourTuberに相談を持ちかけたことくらいじゃない?
「まあ、そうかも知れないけど、自分の行動が、まさか、上坂部に迷惑をかけることになるなんて思わなかったから、それが、申し訳なくて……」
―――まあ、済んだことは悔やんでも仕方ないじゃん? みんなの幼馴染ちゃんに対する誤解は解けてるみたいだし、テストが終わったら、そのことは、あらためて謝っておけばイイんじゃない? もっとも、これ以上、彼女たちの三角関係に肩入れするつもりなら、それだけじゃ済まなくなるけど……
「やっぱり、そう……なのかな……」
―――そりゃ、そうよ。どんな思惑があるにしても、転校生ちゃんにとって、アンタや幼馴染ちゃんはただのおじゃま虫だし。それに、幼馴染ちゃんだって、アンタがこれからも協力するなんて言ったら、かえって恐縮するんじゃない? そもそも、彼女の恋愛感情は、彼女自身のモノなんだから、誰かが責任を感じる必要はない。つい、この間まで、まともに話したことのない相手に対して、責任を背負おうとしてたら、身が持たないよ。
「そっか……」
ワカ
―――まあ、普段は人間関係に無関心を装っているようで、ホントは、ものすごく他人のことを気にしているのも、宗重の良いところでもあるけどね。それは、
「いつの話しをしてるんだよ!……でも、ワカ
オレが、そう答えると、ワカ
―――それにしても、幼馴染ってのも厄介な存在ね〜。ウチの友だちの二人といい、幼馴染の男女ってのは、周囲に無駄な
「えっ、ワカ
オレの疑問に対して、叔母は、大学生時代からの友人の男女について語ってくれた。
ワカ
「
というメッセージを送ったらしい。
式に参列していた、ワカ
―――まあ、こんな風に、いくら友情を強調しても、男女の近すぎる関係ってのは、周りの人間に余計な摩擦を生んだりするのよ。だから、私は、アンタから聞いたクラスメートの話しでも、ちょっと、転校生ちゃんに同情してるんだけどね。
ワカ
ここまで話しを聞いてもらったことで気が楽になったので、彼女には感謝したいのだが……。
「転校生ちゃんに同情してる」
という一言だけは、まだ、すんなりと受け入れられない、という思いがある。
名和リッカに対しては、色々と言いたいことがあるのだ。
あれ以上、話しがこじれることを避けるために本人には反論しなかったが、あいつはオレがプレイしている恋愛シミュレーションゲーム『ナマガミ』のヒロインをディスりやがったのだ!
これは、オタクの
もっとも、それ以上に、あの転校生が、幼なじみ的存在やキャラクターを敵視しているようにみえることに、疑問を感じるのだが……。
そんなことを頭の片隅でツラツラと考えていると、ワカ