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第2章~運命の人があの人ならいいのに現実はうまくいかない~第10話

 自宅に帰って、スマホを確認すると、ワカねえからLANEのメッセージが届いていた。


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 四葉ちゃんの動画みたよン!

 いまから、ちょっと話せる?

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 リビングに居る母親に帰宅したことを告げてから、自室に戻り、「OK!」というスタンプと返信すると、すぐに通話の着信があった。


 ―――急にゴメンね〜。今日は忙しかったの?


「いや、いま帰ってきたところだから、もう大丈夫! 今日は、例のクラスメートや生徒会のヒトたちと、他校の演劇部の観劇に行ってたんだ」


 ―――へぇ〜、幼馴染ちゃんだけじゃなく、生徒会の子たちと……! 宗重むねしげも、高校二年にして、ついにリア充デビューか〜(笑)


「いや、そういうんじゃないから! このまえ、ワカねえに聞いてもらった話しが、まだ、ちょっと続いてるんだよ」


 ―――おっ、その話しと関係あるんだ! それなら、詳しく聞かせてよ。


 彼女のリクエストに応じて、前回、ワカねえと通話をしたあとに上坂部の身に起こったことや、クラスメートの大島と情報共有を行ったこと、前日の白草四葉しろくさよつばちゃんの動画配信について、そして、それら一連の出来事と大きく関わっている、今日の観劇後にシスドで上坂部と語り合った内容などを時系列に沿って語る。

 ちなみに、オタク趣味者でありながら、超絶リア充側の人種であるワカねえは、オレの通う市浜いちはま高校の卒業生であり、生徒会のメンバーでもあった。ワカねえが、生徒会のキーワードに反応を示したのは、そんなこと関係しているのかも知れない。


 ―――ふむり……先週のカラオケ終わりの話しから、また色々と進展があったもんだねぇ(笑)♪ ふられたての女ほど おとしやすいものはないんだってね? 中島みゆきは、良い歌詞を書くな〜。


「いや、それは知らんけど……ただ、上坂部が他のクラスの男子に告られるところを同じクラスの大島と目撃してしまったからなぁ……なんで、ことごとく、オレの目の前で事件が起こるのかねぇ?」


 ―――それは、マンガで言うところの主人公補正ってヤツじゃないの(笑)?


「いや、オレはただのクラスのモブキャラだし……第一、こんな役に立たないスキルじゃ、異世界に行っても、無双なんて出来ないよ!」


 ―――それも、そうか(笑)けど、そのことで、幼馴染ちゃんに味方をしてくれそうなクラスメートも見つかったんだよね?


「たしかに、それは、心強いかも……オレだけじゃ、とうてい、あの転入生には勝てないと思うし……」


 ―――あとは、白草四葉ちゃんのアドバイスも?


「そう! それなんだよ! 昨日、ライブ配信をリアタイ視聴してたけど、自分の相談が採用されたこと以上に、四葉ちゃんのアドバイスが的確なことに、マジでビビった! あれだけ丁寧に答えてくれたら、ファンが大勢いるのも納得だわ」


 ―――たしかにね〜。高校生とは思えないくらい合理的で冷静な助言だったよね〜。さすがは、『人狼ちゃんには騙されない』で、相手の男子たちと視聴者を手玉に取ってただけはあるわ。いったい、どんな人生を送ってたら、あんな高校生が出来上がるの?


「そうだよな〜。あんなに可愛くて、性格が良い女子が現実に存在するなんて思わなかった! 実はさ、ワカねえに言ってなかったけど、先週の土曜日にガーデンズで、四葉ちゃんがファンの女子たちに囲まれてるのを見たんだよ。遠くから見ても、スゴいオーラだったんだ」


 ―――あ〜、私が、『いったい、どんな人生を送ってたら』って言ったのは、そういう意味じゃないんだけどね……(苦笑)まあ、宗重は、そういう理由で、勢い余って彼女にお悩み相談のメッセージを送ったと……別にナニが動機になっても良いけどさ……その話し、他のヒトには話さない方が良いよ……? 普通にキモいから……。


「ちょっ……キモいってどういうことだよ? ちょっと、四葉ちゃんに対して思ってることを言っただけじゃん! 四葉ちゃん、メッチャ良いヒトじゃん! 『知り合いの女の子のために、一生懸命がんばれる男の子って素敵じゃない?』って、オレのことも誉めてくれたし!」


 ―――あ〜、もう……可愛い女の子に、ちょっと誉めてもらったからって、チョロ過ぎでしょ……これだから、オトコは……宗重、色んなヒトと関わりを持つのは、良いことだと思うけど……人間関係には、深入りしすぎないように気をつけなよ……特にアンタは、対人関係の経験値が高くないんだから……。


「なんだよ、そんなこと言われなくても、オレが一番わかってるって! 四葉ちゃんのアドバイスも、オレが伝えるより、上坂部に自分で動画を見てもらった方が納得してもらえると思ったから、リンク先を伝えるだけにしておいたから!」


 ―――そう……なら良いけどね……幼馴染ちゃんのサポートも、これで一段落ってことなら、それに越したことは無いよ。対人関係の中でも、色恋沙汰、恋愛の問題だけは、軽い気持ちでクビを突っ込むと、ホントに痛い目に遭うからね……それだけは気をつけなよ。


「はいはい、アドバイスありがとうございます」


 最後は、オレが自覚しながらも気にしている自分の性格について指摘されたことで、少し投げやりな口調になりながら、ワカねえの言葉に応対していた。

 このときの、「人間関係には、深入りしすぎないように気をつけなよ……」という彼女の言葉をもっと真剣に受け止めておけば良かった、と後悔するのは、もう少し先のことだ。

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