「痛っ。」
小さい足に思いっきりお腹をけられて‥‥‥‥。
目が覚める。隣で眠る類は180度回転している。
類を元の位置に戻して時計を見ると5時だった。
ちょっと早いけど‥‥‥‥‥‥起きる事にした。
類を起こさないようにそっと‥‥‥‥‥‥‥ベッドから出る。
有栖川 花音 (かのん)25歳。もうすぐ2歳の息子の類(るい)を育てるシングルマザー。
俳優をしている弟の有栖川 光希(みつき) (芸名は耀(ひかり))20歳と 3人暮らし。両親は事故で3年前に亡くす。
光希のおかげで、私達親子は生活が出来ている。
弟の世話になるなんて‥‥‥‥‥‥姉として情けない‥‥‥‥。
光希の仕事柄、恋人をつくりづらいのを良い事に‥お世話になりっぱなしだけど‥‥‥‥いつか光希だって恋人が出来るだろう。その時に備えて自立しないといけないな‥‥‥‥。まず、仕事をさがそう。保育園活動もしないと‥‥‥‥‥。保育園に受かりそうな
予感がまったくない‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
そんな事を考えていると朝ごはんが出来上がる。
「ママー。ママー。アーン。」
寝室から類の泣き声がする。
「はい。はい。今行くよー。」
寝室のベッドの上で座り泣いている類を抱き上げる。
「起きたんやね。ママいなかったね〜。ごめんね。」
抱っこされて類は泣きやむ。
「おはよー。」
「はよー。」っと目をこすりながら類がいう。
「朝ごはん食べる人?」
「はぁい!!」類が元気に手を挙げる。
バタン。光希の部屋のドアが閉まる音がする。
「おはよー。」光希があくびをしながら言う。
「「おはよー。」」
「ごめん。うるさかった?」
「ううん。大丈夫!!」光希が類を抱き上げてダイニングのキッズチェアに座らせる。
「今日は、CM撮影で8時に磯部さんが迎えに来る。」
磯部さんとは光希のマネージャーで28歳の独身男性で、光希は磯部さんと私をくっつけたがっていて困っている。
「そうなんだ。大変だね。」
「ぜーんぜん。花音がお家の事とか栄養を考えたご飯を作ってくれるからめっちゃ元気!」っと右手に力こぶを作りみせる。いつも光希はこう言ってくれる。私の光希に養われている罪悪感を軽くしようとしてくれる。
「ありがとう。」微笑む。
「こっちこそ。」光希が微笑む。
今日の朝ごはんは焼き鮭とだし巻き玉子となめこの味噌汁とヨーグルト。類だけプラス納豆。
類は納豆が好きで納豆があればご機嫌でご飯を食べるからありがたい。
「今日はどこのCM??」
「ロイヤルビール!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
「花音??聞いてる??」
「あっ。うん。ロイヤルビール‥‥‥‥‥。」
「そう!ロイヤルビールの会社って食品・医薬品・不動業・建設業もしていて日本で3本の指に入るぐらい大きな会社なんだって‥‥‥‥‥‥。知ってる?」
「‥‥‥‥‥‥。うん。一応知ってる。」
「そうだよね。知ってるよね?」なんか意味深に光希が聞いてくる。
「なんか‥‥‥‥‥。昔に聞いた事のあるような既視感があってさ、うちと昔に関わりがあった会社かな?って思ったけど違うよね?流石に大きいすぎるよね規模が!!」
「あっ。あっ。うん。大手すぎるから既視感があったんじゃない??」
「そうかも!」
「うん。そうだよ。」ビックリした。記憶が戻ったのかと思った‥‥‥‥‥。
光希は両親の事故の時に同じ車に乗っていて‥‥‥‥断片的に記憶が抜けてしまっている。
光希にとって抜けてる記憶が必要ではないという事だと思って‥‥‥‥‥思い出さなくて良いと思ってる。
記憶が戻ると類の父親も分かってしまい‥‥‥‥光希なら文句を言いに行きそうだし‥‥‥‥‥‥。
私にとって記憶が抜けたままだと都合が良い。
ロイヤルビールか‥‥‥‥。大丈夫だと思うけど‥‥‥‥‥。