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第7話 始動②〜丸太潰しの先へ〜

 修練場へ通い始めて1週間経ったころ、俺は30分で1本の丸太を殴り潰せるようになっていた。


 無事に身体能力向上を覚えることができたため、ヒールを適度に行えば1時間は全力でメイスを振るい続けることができる。


 自分の持っている知識が生かせると確信した俺の次の目標は、メイス熟練度Lvを10にすることだ。


 体力を使い続ければ、取得条件がない体力回復力向上を取得できる。

 しかし、魔力はいくら使っても魔力回復力向上を取得することはできない。


 魔力回復力向上のスキルを獲得することができる条件こそ、メイスか杖の熟練度をLv10にすることだ。


(戦い続けるためには、魔力が多いほど有利なため、このスキルの習得は欠かせない)


 いつものようにメイスを借りるため申し込みしようとするが、あまり使用されない武器なのか、メイスの貸出欄には俺の名前が並んでいる。

 貸出票を出そうとすると、いつもとは違い受付のおじさんが心配するようにこちらを見ていた。


 何かと思って顔を見返すと、俺へ悩みがないのかと聞いてくる。

 特にないからと返事をして、早くメイスを貸してもらうように頼むと、しぶしぶメイスを渡してくれた。


(さすがにやりすぎか?)


 休憩中にこの修練場を眺めているが、トラックで走っている人か、新しい武器を試すために来ている人しかみたことがない。

 自分のように何時間も丸太を殴っている人はいない。


(そのせいで、今日は妙な心配をされたのだろうな)


 気にすることはないと、いつものように丸太を固定してからメイスを振り上げる。

 メイスで殴ろうとすると、こんなことを思うようになってきた。


(いつものように潰して、使い方がこれ以上うまくなるのかな?)


 振り上げたメイスを下すと、どうすれば良いのか考えてしまう。

 昨日も朝からメイスを振るい続けて、10本の丸太を潰した。

 母親へ訓練をするからと、毎日お金をねだるようになり、今日はなかなか出してもらえなかった。


(明日は出してくれないかもしれない……)


 そう思うと、丸太を簡単に潰すことができなくなった。

 気分転換に周りをみると、自分と同じくらいの年齢でポニーテールの女の子が剣を振るっている。

 振り方をみているのか、そばにはその子の父親らしき人もみえた。


 DWCを購入してから自分の父親は仕事から帰ってくると、毎晩DWCで遊んでいる。


 少しは現実の体も動かした方がいいと思うが、過去の自分をみているようで何も言えなくなった。

 そんなことを考えながら剣を振るう女の子を眺めていると、俺はひらめく。


(剣を作ってみよう!)


 前にチェーンソーで丸太を削り、木の彫刻を作っている人をみたことがある。

 それと同じことをメイスで行うことを次の目標に定めた。


(難しそうだが、今までよりもメイスを振るう練習になるだろう)


 俺はメイスを振り上げると、少し木が削れる程度にメイスを振るい始める。

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