いかにも『
た――耐えられん――と、そう
「もう、店長ってば! なんなんすかその
お? 語気は強いが楽しそう、か?
「店長が
……
この間もそんな事を言ってたが、なにがどう『そう』なんだろう。
「
……え、それ、分かってるっす……?
な――なんだと!?
私の
「だからそんな動揺しなくっても良いんすよ」
なんというか、聖女の微笑みって言うのかな、そんなあらゆるものを許して受け入れる様な、慈しむ様な微笑みを凛子ちゃんが浮かべてたんだ。
「だからってオレも諦めねえっすけどね! なんとなくまだ
……脈、ありそうかな?
確かに凛子ちゃんの事は好きだけど、それはやっぱり『人として好き』の域を出ないとは思うんだ。
でも……それでも、やっぱり私みたいなものがカオルさんや凛子ちゃんと普通に恋愛するのは難しいと思う。
保留とは言え明日の晩だって
それでも、いま私に言える事は凛子ちゃんにちゃんと伝えておくべきだと思うから。
「凛子ちゃん。私は、その、カオルさんの事が――……」
ダメだ。やっぱりこんなこと言える立場じゃない。
「店長。諦めずに最後まで言った方が良いと思うっす。オレ……オレちゃんと聞くんで」
………………。
「…………私は、カオルさんのことが好き――らしい、んだ。ごめん、凛子ちゃんの想いには応えられない」
自意識過剰だと思わなくもない。
けれど、いま一番言わなきゃいけないのはそうだと思うから。
私の言葉が聞こえた筈の凛子ちゃんは俯き、そして勢いよくワイングラスを呷った。
「ちょ――り、凛子ちゃ――」
「やぁっと言ったっすね!」
たんっ、とグラスを置いた凛子ちゃんが続けて言う。
「分かってたっすフラれるの! ママさん! ワインおかわり!」
凛子ちゃんはグラスを掲げてママを呼び、おかわりのワインを再び呷るとともにママの胸に抱きついて声を上げた。
「ママさーん!
素の方の凛子ちゃんの様子に狼狽えながらも、ママは凛子ちゃんの背をぽんぽんと叩いている。さすがだ。
「よしよし。辛かったねぇ凛子ちゃん。鹿野さんにはわたしからきつーく言っとくからね」
私に味方はいないのか、けれどそれもしょうがない、と思ったんだが違った。
逆だ。
私には味方しかいなかったんだ。
「鹿野さん」「店長」
二人が声を揃えて言う。
「応援してる」「応援してるっす」
語尾はさすがに揃わなかったが、二人ともが私を応援してくれるとそう言ったんだ。
「けどやったじゃん鹿野さん」
「な――なにがです?」
「カオルちゃんとダメでも凛子ちゃんがいるもの」
「そんな不義理なことできませんよ」
「オレは別に良いっすよ。カオル先輩にフラれたらオレんとこ来てくれても」
……敵わないなぁ凛子ちゃんには。
何回も言うけど、凛子ちゃんが一番男前だ。間違いない。
ちらりと視線を遣れば、グラスを磨くマスターも立てた親指と笑顔を私にくれた。
うん、マスターも凛子ちゃんの次に男前だ。