すったもんだあったが、マスターお手製のハンバーグプレートを二人分注文し、いつものソーセージとグラスワインで乾杯だ。
「お疲れ様、凛子ちゃん」
「店長もお疲れっす」
ママもマスターも少し離れたところで料理に接客に忙しそうだ。いつまでも私たちを構うわけにもいかない。
するとすぐに『っす』になる凛子ちゃん。やっぱり面白い。
どちらかと言えば無口な私と少し緊張気味の凛子ちゃん。それほど会話が弾むという事もなく料理やワインを美味しいねなんて言いながら和やかに食べていたんだが、ひとつ問題が起きた。
ジーンズの尻ポケットに入れておいたガラケーが震えたことがそれだ。
短く震えて止まったからメールだろう。そして私のケータイは喜多とカオルさんしか知らない。
喜多からであれば日曜深夜の件だろう。
カオルさんであれば……なんだろう?
単に『今日もお疲れ様でした』かも知れないし、明日の仕事や野々花さんのスケジュールの件かも知れない。
もしかしたら……それこそデートのお誘いかも知れ――いやそれはないだろう。あまりにも突然過ぎる。今の不思議な状況に思考が引っ張られているだけだなきっと。
……しかし、一度引っ張られてしまうとこれは……
見たい。今すぐにも確認したい。
したいが、そうは言っても凛子ちゃんと食事中だ。突然ケータイを開くなど失礼にあたる。
しかし――確認したい気持ちが強すぎる。
「店長、もしかしてケータイ持ってるんすか?」
「え、なんで? そりゃ持ってるよ、私だって原始人じゃないんだから」
偉そうに言ったが自分で買った訳でもない、喜多に貰ったものではあるが。
「ムー、ムー、って震えるの聞こえたすから……。で、その、持ってるんだったらオレにも番号教えて欲しいっす」
「あ、あぁ良いよ。ただあんまり使い方分かってなくてね。
ってやっぱり原始人ぽいかそれは。
尻のポケットから自慢のガラケーを取り出すと、閉じた状態の小さな背面モニターに青く点々と点る光点。
「やっぱメール来てるっすよ。先に確認しちまって下さい」
「じゃ、ごめんお先に」
……ドキドキする。良い歳したオッさんが何言ってんだって感じだが。
震える指先でケータイを開き、ボタンを押すと――
『ゾ□リはやっぱ最高だぜ。なぁノ◯シ』
――くっ。クソどうでも良い。誰がノシ◯か。ドキドキを返せ。というかゾ□リ読んでる場合か。ちゃんと仕事しろバカやろう。
特に返信もせずにメールを閉じて、そっと凛子ちゃんへ手渡した。
「本気でどうでも良いメールだったよ」
「様子見てたら分かったっす。見るからにそんな顔だったっすから」
凛子ちゃんがそう言って笑い、私のケータイをカチカチ操作する。みんな大したもんだな、普段はガラケーなんて使ってないだろうに。
できたっす、そう言われてガラケーを受け取ったんだが……どうにも凛子ちゃんの様子がおかしい?
「どうかした凛子ちゃん?」
「その……ヤな女って思わないで欲しいんすけど……ちゃんと登録できたかアドレス覗いたら、その……」
いつも恐ろしいほど歯切れの良い凛子ちゃんがこんなに言い淀むの珍しいな。よっぽどの事らしいが、何が原因だか皆目見当もつかない。
「……カオル先輩は知ってたんすね、店長のケータイ」
なんか――マズい気がするが……いや、特には
「いや、ちが、違うんだ。野々花さんのさ、ほら、体験パン屋のスケジュールなんかの為にさ、そう、ついこないだ、ね、便利だから、さ。ホントついこないだなんだ、ね?」
なのになぜ私は