「あら珍しいカップルだこと!」
「カ――カップルなんてママさんったら! もう!」
私と凛子ちゃんが
ちなみに私から絡めた訳ではないぞ。凛子ちゃんが『このサマーニットの肌触りめっちゃ良いんすよ、ほらちょっと触ってみ店長』なんて言いつつ私の腕に自分の腕を絡めてそのまま離れないんだ。
強く振りほどくのもなんか違う気がして、『あ、ほんと良い肌触りだね』なんて言ってそのまま歩いて来たんだがコレちょっとマズいか? どうなんだ?
「どうしたの二人、急に仲良しじゃない?」
「今日は店長が晩ご飯ご馳走してくれるんです!」
ついさっきまでは『晩メシ』だったのに、ヨソの人がいると自然に『晩ご飯』になるのほんと不思議だな。これも一種の才能かな。
しかしあれだな。凛子ちゃんの言い方だと私が誘ったみたいじゃないか?
……まぁ良い。特別問題ないだろう――と思ったんだが……ママの視線になにか特殊な感情が含まれているらしい。
表情からは……驚き、困惑、怒り……さらには蔑みってところかな。
それ全然ダメじゃねえか。
カウンターの隅の席に並んで腰掛け、早目に誤解を解くべく話題を探す。ああ、そうだ――
「ママ、明日タカオくんが店に来てくれるらしいですよ」
「……タカオ?」
「ほら、こないだママがウチに来たとき言ってたじゃないですか」
ぽんっ、と手を打ち頷いたママ。
「明日ね!? 開店と同時に行くわ!!」
「ええ、お待ちしてます」
すると私の隣で首を捻る凛子ちゃん。
「タカオに会いにですか? どうしてタカオに?」
「なんかちょっと噂になってるらしいんだ。タカオくんと野々花さん」
ここんとこロケットベーカリーの売り上げが伸びてること、その原因が体験パン屋に来たタカオくんと野々花さんらしい、なんて事を凛子ちゃんに説明すると、凛子ちゃんは余計に首を捻った。
「野々花ちゃんはともかくタカオまで? どうしてかしら?」
するとママも首を捻る。
「タカオくんは凛子ちゃんの従兄弟なんですよ。だからその件で電話貰って、で、そのままここに晩ごは――」
「あ、なるほどね。凛子ちゃんとこの遺伝子だったら綺麗なお顔なのも頷けるわ〜」
くそ、なかなか誤解が解けない。解かせてくれない。
「綺麗な……顔?」
凛子ちゃんがまた首を捻る。凛子ちゃん的にはタカオくんは綺麗な顔じゃないらしい。
どうやら自分の見た目が可愛い事さえ理解してないフシがあるからなこの子。
「店長のお友達の喜多さんみたいなのを綺麗って言うんじゃないですか?」
「陽一くんも綺麗ね! 凛子ちゃん分かってるじゃない! 凛子ちゃんもああいうのがタイプ?」
あ、その話題はちょっとマズい……
「いいえ、わたしは店長みたいなのがタイプですから」
がばりっ、ぐさっ――と私の顔に視線を刺すの
「そう――なんだ。鹿野さんも、まぁ、悪くはないわよね。岩っぽいけどそれがまた……」
「わ、分かります!? 岩っぽくて強そうで素敵ですよね!?」
自分でもそう思ってはいるんだが、そんなに岩だ岩だ言われるほど岩なんだろうか私は。