「次の挑戦者は……鬼塚!」
司会の悪魔が叫ぶと、観客席から大歓声が上がった。
「あと3ポイントなんだから、コイツももう無理だろ!」
「さっさと100にしちまえ!」
鬼塚の額に汗が滲む。
(……マジかよ……)
隣でヴァレリアが妖艶に笑う。
「フフッ♡ 鬼塚、あなたが堕ちる瞬間が楽しみだわ♡」
「……ッ、くそ……俺は……負けねぇ……!」
鬼塚は、震える足で第一の階段へと進んだ。
***
第一の階段:「怠惰」
「っ……!」
途端に、鬼塚の体が重くなった。
「ふふっ、どう? 全身がダルくて、もう動きたくないでしょ?」
ヴァレリアが微笑む。
「ここでは、"動く"ことがとてつもなく面倒になるのよ♡」
鬼塚は歯を食いしばる。
(……クソッ……動きたくねぇ……)
「ほら、休んじゃいなさい?」
ヴァレリアが甘い声で囁く。
「疲れたでしょ? このまま座って、楽になっちゃいなさい♡」
鬼塚の膝がガクンと揺れる。
(……やべぇ……マジで座りたくなってきた……)
「鬼塚ァ!」
桜木の叫びが響いた。
「お前が堕ちたら、マジで終わりだぞ!」
「っ……!」
鬼塚は、無理やり腕をつねった。
ビリッとした痛みで意識が戻る。
「チッ……耐えたわね」
ヴァレリアが舌打ちをする。
鬼塚は、ゆっくりと次の階段へと足を踏み入れた。
***
第二の階段:「暴食」
「うっ……!」
目の前に、超豪華な料理がずらりと並ぶ。
「わぁ……おいしそう♡」
ヴァレリアが、ふわふわのチーズケーキを手に取る。
「ねぇ、鬼ちゃん♡ 一口くらい、いいでしょ?」
「くっ……」
鬼塚の胃がグゥゥと鳴る。
(……やべぇ……めっちゃ食いてぇ……)
ヴァレリアが、チーズケーキを鬼塚の口元に差し出す。
「ほら、あ〜ん♡」
「……っ!」
鬼塚は、思い切り目を閉じた。
(……これは幻影だ……これは幻影だ……!)
「ほらほら、早く♡」
ヴァレリアが囁く。
(……違う……これは、誘惑だ……俺が負けるわけには……!)
鬼塚は、ガッと自分の口を手で塞いだ。
「……俺は……食わねぇ!」
「チッ……!」
ヴァレリアが悔しそうに睨む。
鬼塚は、ふらつく足で次の階段へと進んだ。
***
第三の階段:「色欲」
──最後の階段に足を踏み入れた瞬間。
「っ……!?」
鬼塚の体が一気に熱くなる。
「ふふっ……♡」
ヴァレリアが、今までよりもさらに妖艶な表情を浮かべた。
「さぁ……あなたの欲望に、素直になってみない?」
ヴァレリアが、ゆっくりと鬼塚の首筋に手を這わせる。
「お前……ッ!」
「怖がらなくていいのよ♡ ただ、私に身を委ねればいいだけ……♡」
ヴァレリアの指が、鬼塚のシャツのボタンに触れる。
「フフッ……♡ もう、耐えられないでしょ?」
(……くそ……! こんなの……!)
鬼塚の心臓がドクンと跳ねる。
(……ダメだ……このままじゃ……!)
「ほら……♡」
ヴァレリアが、鬼塚の耳元に囁いた瞬間。
──鬼塚は、思い切り自分の頭を壁に打ちつけた。
「っっっ!!!」
ガンッ!
「……っ!」
視界がグラリと揺れる。
「鬼塚!」
桜木の声が響く。
鬼塚は、よろめきながらも立ち上がる。
「……っ、俺は……俺は、堕ちねぇ……!!」
「……チッ……」
ヴァレリアが悔しそうに目を細める。
***
結果発表
悪魔の司会者が叫ぶ。
「鬼塚、堕落ポイント97のままクリア!!」
「おおおおおお!!」
観客がどよめく。
鬼塚は、肩で息をしながら桜木の方を振り向いた。
「……ッ、なんとか耐えた……!」
桜木がホッとした顔をする。
「よくやった……!」
ヴァレリアが舌打ちをする。
「クソッ……あと少しだったのに……!」
***
『快楽の階段』終了
司会の悪魔が叫ぶ。
「まさかの……全員生還ッ!!」
「マジかよ……97で耐えたとか奇跡だろ!」
「クソッ、もっと簡単に堕ちると思ったのに!」
鬼塚と飯田は、ボロボロになりながらも立っていた。
「……やったな……」
「……ああ……」
鬼塚と飯田が、拳を軽くぶつけ合う。
しかし、桜木は険しい表情をしていた。
(……俺は、まだ81ポイントも残ってる……)
「さぁ、次の競技に進もうか!」
悪魔の司会者が叫ぶ。
──最終競技、『堕落の宴』のクライマックスが始まる……!
堕落するまであと81ポイント。