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第36話 快楽の階段③

「次の挑戦者は……鬼塚!」


司会の悪魔が叫ぶと、観客席から大歓声が上がった。


「あと3ポイントなんだから、コイツももう無理だろ!」


「さっさと100にしちまえ!」


鬼塚の額に汗が滲む。


(……マジかよ……)


隣でヴァレリアが妖艶に笑う。


「フフッ♡ 鬼塚、あなたが堕ちる瞬間が楽しみだわ♡」


「……ッ、くそ……俺は……負けねぇ……!」


鬼塚は、震える足で第一の階段へと進んだ。


***


第一の階段:「怠惰」

「っ……!」


途端に、鬼塚の体が重くなった。


「ふふっ、どう? 全身がダルくて、もう動きたくないでしょ?」


ヴァレリアが微笑む。


「ここでは、"動く"ことがとてつもなく面倒になるのよ♡」


鬼塚は歯を食いしばる。


(……クソッ……動きたくねぇ……)


「ほら、休んじゃいなさい?」


ヴァレリアが甘い声で囁く。


「疲れたでしょ? このまま座って、楽になっちゃいなさい♡」


鬼塚の膝がガクンと揺れる。


(……やべぇ……マジで座りたくなってきた……)


「鬼塚ァ!」


桜木の叫びが響いた。


「お前が堕ちたら、マジで終わりだぞ!」


「っ……!」


鬼塚は、無理やり腕をつねった。


ビリッとした痛みで意識が戻る。


「チッ……耐えたわね」


ヴァレリアが舌打ちをする。


鬼塚は、ゆっくりと次の階段へと足を踏み入れた。


***


第二の階段:「暴食」

「うっ……!」


目の前に、超豪華な料理がずらりと並ぶ。


「わぁ……おいしそう♡」


ヴァレリアが、ふわふわのチーズケーキを手に取る。


「ねぇ、鬼ちゃん♡ 一口くらい、いいでしょ?」


「くっ……」


鬼塚の胃がグゥゥと鳴る。


(……やべぇ……めっちゃ食いてぇ……)


ヴァレリアが、チーズケーキを鬼塚の口元に差し出す。


「ほら、あ〜ん♡」


「……っ!」


鬼塚は、思い切り目を閉じた。


(……これは幻影だ……これは幻影だ……!)


「ほらほら、早く♡」


ヴァレリアが囁く。


(……違う……これは、誘惑だ……俺が負けるわけには……!)


鬼塚は、ガッと自分の口を手で塞いだ。


「……俺は……食わねぇ!」


「チッ……!」


ヴァレリアが悔しそうに睨む。


鬼塚は、ふらつく足で次の階段へと進んだ。


***


第三の階段:「色欲」

──最後の階段に足を踏み入れた瞬間。


「っ……!?」


鬼塚の体が一気に熱くなる。


「ふふっ……♡」


ヴァレリアが、今までよりもさらに妖艶な表情を浮かべた。


「さぁ……あなたの欲望に、素直になってみない?」


ヴァレリアが、ゆっくりと鬼塚の首筋に手を這わせる。


「お前……ッ!」


「怖がらなくていいのよ♡ ただ、私に身を委ねればいいだけ……♡」


ヴァレリアの指が、鬼塚のシャツのボタンに触れる。


「フフッ……♡ もう、耐えられないでしょ?」


(……くそ……! こんなの……!)


鬼塚の心臓がドクンと跳ねる。


(……ダメだ……このままじゃ……!)


「ほら……♡」


ヴァレリアが、鬼塚の耳元に囁いた瞬間。


──鬼塚は、思い切り自分の頭を壁に打ちつけた。


「っっっ!!!」


ガンッ!


「……っ!」


視界がグラリと揺れる。


「鬼塚!」


桜木の声が響く。


鬼塚は、よろめきながらも立ち上がる。


「……っ、俺は……俺は、堕ちねぇ……!!」


「……チッ……」


ヴァレリアが悔しそうに目を細める。


***


結果発表

悪魔の司会者が叫ぶ。


「鬼塚、堕落ポイント97のままクリア!!」


「おおおおおお!!」


観客がどよめく。


鬼塚は、肩で息をしながら桜木の方を振り向いた。


「……ッ、なんとか耐えた……!」


桜木がホッとした顔をする。


「よくやった……!」


ヴァレリアが舌打ちをする。


「クソッ……あと少しだったのに……!」


***


『快楽の階段』終了

司会の悪魔が叫ぶ。


「まさかの……全員生還ッ!!」


「マジかよ……97で耐えたとか奇跡だろ!」


「クソッ、もっと簡単に堕ちると思ったのに!」


鬼塚と飯田は、ボロボロになりながらも立っていた。


「……やったな……」


「……ああ……」


鬼塚と飯田が、拳を軽くぶつけ合う。


しかし、桜木は険しい表情をしていた。


(……俺は、まだ81ポイントも残ってる……)


「さぁ、次の競技に進もうか!」


悪魔の司会者が叫ぶ。


──最終競技、『堕落の宴』のクライマックスが始まる……!


堕落するまであと81ポイント。

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