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第35話 快楽の階段②

「さぁ、次の挑戦者は……飯田!」


悪魔たちが歓声を上げる。


「さあ、楽しませてもらおうか!」


「あと3ポイントなんだから、もう無理だろ!」


「さっさと100になって、堕落しちまえ!」


飯田の顔がひきつる。


(……くそ、たったの3ポイント。たったの3ポイントで終わりだ)


相棒のジョンが不敵に笑う。


「さて、我が主よ。我は手加減しない。」


「っ……!」


飯田は歯を食いしばると、ゆっくりと第一の階段へと足を踏み入れた。


***


第一の階段:「怠惰」

途端に、飯田の体がずしりと重くなった。


「……っ、重い……!」


「"怠惰"の階段へようこそ」


ジョンが楽しそうに微笑む。


「ここでは、"動く"ということがとてつもなく面倒くさくなる」


「もう何もしたくない、どうでもよくなる……」


飯田の意識がぼんやりする。


(……なんか……もうどうでもいいな)


「ほら、座るが良い。」


ジョンが甘い声で囁く。


「座って、何も考えずにゆっくりしろ。疲れたんだろ?」


「…………」


(……そう、疲れたんだ……)


飯田の膝が、がくんと崩れかける。


──しかし。


「飯田!」


桜木の叫びが響いた。


「耐えろ! お前が堕ちたら、俺たちも終わりだ!」


「っ……!!」


飯田は、顔を上げた。


「そ、そうだ……おらが……ここで終わるわけには……!」


拳を握りしめ、思い切り自分の舌を噛んだ。


「っっっ!!!」


ビリビリと走る痛みで、意識がはっきりする。


「チッ……よく耐えたな」


ジョンが舌打ちをした。


***


第二の階段:「暴食」

次の階段に足を踏み入れた途端、目の前に大量のご馳走が現れた。


「うわっ……!」


ジューシーなハンバーグ、濃厚なチーズケーキ、ふわふわのパンケーキ……。


「腹減っただろ?」


ジョンがニヤリと笑う。


「食え。ここでは、"食欲"を抑えられない。」


飯田の胃がぎゅるぎゅると鳴る。


「……っ」


「ほら、一口だけでも……」


ジョンが、飯田の口元にチーズケーキを差し出した。


甘い香りが鼻をくすぐる。


(……一口くらい……いや、ダメだ……!)


飯田は、ガッとジョンの腕を振り払った。


「俺は……食わねぇ!」


「チッ……」


ジョンが悔しそうに顔を歪める。


飯田は、震える足で次の階段へと進んだ。


***


第三の階段:「色欲」

──最後の階段に足を踏み入れた瞬間。


「っ……!?」


飯田の体がふわりと熱くなった。


「ふふ、どうした?」


ジョンが、なぜか美少女の姿になっていた。


「えっ……お、お前……!」


「俺は変幻自在なんだよ」


ジョンは、飯田の耳元にそっと囁いた。


「どうだ? お前の理想の女の子になってやろうか?」


飯田の脳裏に、"理想の女の子"の姿が浮かぶ。


──清楚で、でも少し大胆で、甘えるのが上手で……。


「……っ!」


飯田は、ゴクリと唾を飲んだ。


(やばい……心が持っていかれる……!)


ジョンが優しく手を取る。


「ほら、こっちにおいで?」


(……ダメだ……ダメだ……!)


飯田は、必死で理性を保とうとした。


(おらは……堕ちねぇ!)


グッと拳を握りしめ、飯田は思い切り自分の頬を張った。


バチンッ!!


「っっ!!!」


激痛が走る。


「チッ……耐えやがったか」


ジョンが悔しそうに舌打ちする。


飯田は、最後の力を振り絞って階段を登り切った。


***


結果発表

悪魔の司会者が悔しそうに叫ぶ。


「飯田、堕落ポイント97!」


鬼塚が肩を震わせた。


「やべぇ……俺、耐えられるか……?」


次は、鬼塚の番だった。


堕落するまであと81ポイント。

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