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第34話 快楽の階段①

『堕落の宴』 第四競技:『快楽の階段』

悪魔の司会者が、ニヤリと笑いながら次のゲームの内容を告げた。


「さて、次の競技は……『快楽の階段』!」


「このゲームは、ペアになった悪魔と人間が協力し、"快楽の階段"を登っていくものだ」


「階段の途中には、"堕落の誘惑"が待ち受けている」


「一歩進むごとに、快楽に溺れそうになればなるほどポイントが加算される……逆に、耐え抜けばポイントはそのまま」


「そして、階段を登り切ることができなければ、そのペアは失格!」


「つまり……桜木、お前がこの階段を登りきれなければ、お前の仲間二人は即100ポイントで堕落確定ってわけだ!」


桜木の顔が険しくなる。


(……つまり、俺が堕落しなかったら、鬼塚と飯田が終わるってことか)


鬼塚と飯田の表情が凍りつく。


「そ、そんなのって……」


「お、おらたちは……もう持たねぇだ……」


残りたった3ポイントの二人に、耐えられる余裕はない。


悪魔たちが歓声を上げる。


「さぁ、楽しませてもらおうか!」


「人間の意志の力なんざ、大したことねぇんだ!」


「快楽に溺れてしまえ!」


桜木は拳を握りしめた。


「……行くぞ」


「ふふ、楽しみね♡」


セリーヌが妖艶に微笑む。


***


第一の階段:「怠惰」

階段を登り始めた瞬間、桜木の体がずしりと重くなった。


(……これは)


「この階段は、"怠惰"の誘惑を与えるの」


セリーヌがクスクスと笑う。


「ほら、眠くなってきたでしょ?」


たしかに、体の奥から甘い倦怠感が広がってくる。


「もう頑張らなくてもいいんです……すべてを投げ出して、ただ眠ってしまえばいいんです……」


桜木の目蓋が重くなる。


(……ヤバい)


「ほら、膝枕してあげるわ」


セリーヌが微笑み、桜木の腕を引いた。


「安心して……私の膝の上で、少しだけ休んでいいんですよ」


ふわりと甘い香りが漂う。


──もしここで眠れば、確実にポイントが加算される。


(……クソッ、眠るわけにはいかねぇ)


桜木は拳を握りしめ、自分の頬を思い切りぶった。


「っ……!!!」


バチンッ!!


鋭い痛みが走り、意識がはっきりする。


「ふふ、痛いことするんですねぇ」


セリーヌが楽しそうに微笑んだ。


桜木は歯を食いしばりながら、第一の階段を突破した。


***


第二の階段:「暴食」

次の階段に足を踏み入れた途端、桜木の前にご馳走が広がった。


豪華なステーキ、甘くてとろけるチョコレート、芳醇な香りのワイン……。


(……くっ、これが"暴食"の誘惑か)


「ほら、食べなさい?」


セリーヌが桜木の口元に、極上のステーキを差し出す。


「たった一口でも食べれば、幸せになれますよ?」


桜木の胃が、ぐぅ、と鳴った。


──空腹が限界に達する。


(……ダメだ、これを食ったら、俺は……!)


セリーヌがニヤリと笑う。


「ほら、一口……♡」


桜木は拳を握りしめ、深呼吸した。


(……目を閉じろ)


──意識を食欲から逸らし、桜木は無理やり次の階段へ足を踏み出した。


「チッ……また耐えたか」


セリーヌが舌打ちをする。


***


第三の階段:「色欲」

最後の階段に辿り着いた瞬間、桜木の体がふわりと温かくなった。


(……これは)


「ようこそ、最後の階段へ」


セリーヌが、そっと桜木の耳元に囁いた。


「ここは"色欲"の階段……あなたの理性を蕩けさせる場所です」


──突然、桜木の脳裏に、セリーヌの姿が焼き付いた。


普段の妖艶な微笑み。

優雅な仕草。

少し挑発的な視線……。


──この女が、もし俺のものになったら?


(…………っ!!)


桜木は、反射的に目を閉じた。


(やばい……考えが支配される)


セリーヌが、そっと桜木の手を握る。


「どう? 私に溺れてみませんか?」


「…………」


桜木は、そっと息を吐いた。


──そして。


「……俺は、お前のことを、何とも思ってねぇよ」


セリーヌの顔が、一瞬固まった。


「……え?」


桜木は、一歩前に踏み出した。


「お前は、"誘惑する"ことしかできねぇんだよな?」


「…………」


「だったら……俺は、お前に何の価値も感じねぇよ」


セリーヌの顔が歪んだ。


「……フフ、フフフ……」


「おもしろいことを言うんですね」


桜木は、そのまま最後の階段を登り切った。


***


結果発表

悪魔の司会者が、悔しそうに叫んだ。


「クソッ……桜木、堕落ポイント81のまま!」


鬼塚と飯田が、その場に崩れ落ちる。


「た、助かった……」


「お、おら、もうダメかと思っただ……」


悪魔たちは、悔しそうに叫んだ。


「ちっ……まさか、"快楽の階段"を一切のポイント加算なしで突破するとはな……!」


桜木は、息を吐いた。


(……危なかった)


だが、まだ終わりではない。


「……次の競技で、必ずお前を堕落させてやる」


ジョンが、ニヤリと笑った。


堕落するまであと81ポイント。

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