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第33話 第三競技

『堕落の宴』 第三競技:『本性暴露ゲーム』

悪魔の司会者が、邪悪な笑みを浮かべながら次のゲームを告げた。


「さて、第三競技は……『本性暴露ゲーム』!」


壇上に、不気味な黒い鏡が三枚浮かび上がる。


「この鏡は、覗いた者の心の奥底にある"本当の願望"を暴き出す……」


「そして、その内容を他の者たちに公開するのさ」


「ふっふっふ、さて……君たちの心の奥底には、一体どんな"欲望"が眠っているのかな?」


桜木の顔が強張る。


(クソ……これはやべぇ)


「ルールは単純だよ?」


「鏡を覗くことを拒否すれば、堕落ポイント+5」

「覗けば、堕落ポイントは増えないが、自分の"本当の願い"が暴かれる」


「おっと、それだけじゃない」


ジョンが不敵に笑いながら付け加える。


「もし他の者が暴かれた"本性"を認めなければ、その者は即失格……つまり、"人間であること"を失う」


「どうする? 覗くか、拒否するか?」


観客席の悪魔たちが囁き合う。

「おもしろくなってきたぞ……」

「人間どもの醜い本性、暴き出してやれ!」


鬼塚と飯田の顔が青ざめる。

どちらも残りの堕落ポイントはたったの3。


もし拒否すれば即0になり、悪魔化確定だ。


(……クソッ、選択肢がねぇ)


桜木はギリッと歯を食いしばった。


***


鬼塚の選択

鬼塚は拳を握りしめながら、鏡の前に立った。


(……俺の本性? そんなもん、見せたら絶対に笑われるだろ……)


だが、拒否すれば即座に"堕落ポイント0"でアウト。


「……チッ、やるしかねぇな」


鬼塚は鏡を覗いた。


──すると、鏡の中に映ったのは、満面の笑みでケーキを作っている鬼塚の姿だった。


「…………は?」


会場が、一瞬沈黙する。


「おいおい……まさか、鬼塚の本性って……パティシエになりたかったとかいうオチじゃねぇだろうな?」


「ぶははははっ!!」


悪魔たちが爆笑する。


「お前、そんな願望隠してたのかよ!」


桜木と飯田も、ポカンと鬼塚を見つめる。


「う、うるせぇ! 俺はな……」


鬼塚は耳まで真っ赤にしながら叫んだ。


「子供の頃から甘いモンが好きだったんだよ! でもガキの頃、クソガキどもに"男のくせに"ってバカにされてな……!」


「それ以来、誰にも言えなかったんだよ……っ!」


「ふっ……ふふっ……」


ヴァレリアがクスクスと笑う。


「可愛いじゃない、鬼ちゃん♡」


「うるせぇ!」


桜木は鬼塚の肩を叩いた。


「……お前、そんなこと気にしてたのか」


「……笑わねぇのか?」


「笑うわけねぇだろ、馬鹿」


鬼塚はハッと桜木を見た。


「隠さなきゃいけない夢なんてねぇよ」


「…………っ」


鬼塚は拳を握りしめ、バッと顔を背けた。


「……チッ、なんかスッキリしたわ。これでいいんだろ?」


「ふふっ、残念ね。鬼塚の堕落ポイントは変動なし」


「ちっ……つまんねぇの」


悪魔たちはブーブーと不満を漏らした。


***


飯田の選択

次は、飯田だった。


「お、おらも……覗くだ」


「いいのかい? 本性が暴かれちゃうよ?」


ジョンがニヤリと笑う。


飯田はごくりと唾を飲み込みながら、鏡を覗き込んだ。


──そこに映ったのは、山奥の農場で、幸せそうに家族と一緒に農作業をする飯田の姿だった。


「…………」


「……えっ」


桜木と鬼塚が絶句する。


「いや、普通に健全すぎんか!?」


「くそっ、つまらん!」


悪魔たちが一斉にブーイングを飛ばす。


「飯田、お前の本性って……ただの家族思いの農家の息子じゃねぇか」


「そ、そんなの……バカにするんだべ!?」


「いや、むしろ超健全で泣けてくるレベルだぞ」


「……お前、幸せになれよ」


「なんでだべ!!!」


ヴァレリアはため息をつきながら手を振った。


「飯田も堕落ポイント変動なし」


「……つまらないわね」


悪魔たちは退屈そうに呟いた。


***


桜木の選択

「さて、最後は……桜木、君の番だ」


桜木はゆっくりと鏡の前に立った。


(俺の本性……)


内心、桜木は怖かった。


もし、心の奥底にある"本当の欲望"が暴かれたら?


(俺は……何を望んでいる?)


恐る恐る、鏡を覗き込む。


──そこに映ったのは、幼い桜木と、その隣に立つ兄の姿だった。


「…………っ!」


桜木の心臓が凍りつく。


──兄の死は、桜木のせいだった。


それを、ずっと……


「……俺は、何も言うつもりはねぇ」


桜木は、鏡から目を逸らした。


「拒否する……」


会場がざわめく。


「ほう?」


ジョンが目を細めた。


「拒否するってことは、堕落ポイント+5だぜ?」


「……いいさ。俺は、"知られたくないこと"もある」


「ふふ、なるほど……いいだろう」


悪魔の司会者が高らかに宣言した。


「桜木、堕落ポイント19」


***


結果発表

「第三競技の結果は……人間側の勝利!」


「くそっ……全然堕落しねぇじゃねぇか!」


悪魔たちは悔しそうに叫ぶ。


桜木は息を吐いた。


(なんとか……耐え抜いた……)


だが、次のゲームは……さらに苛烈なものになる。


堕落するまであと81ポイント。

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