目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第31話 『堕落の宴』開幕! 〜人間 vs 悪魔、運命のカウントダウン〜

「なんでお前らの宴に付き合わねえといけねえんだよ。」


俺はうんざりして言った。


「この学校のまだ堕落していない生徒は強制参加なんですぞい。」


ジョンが答える。


「桜木さんをなんとしてでも堕落させてみせます!!!」


セリーヌは意気込んだ。


マジでやめてくれ…。


悪魔界の夜は、鮮やかな紫色に染まっていた。

巨大な宮殿の中央、燃え盛る黒炎の祭壇を囲むように無数の悪魔が集まっている。


「さあ、今宵も始まるぞ……『堕落の宴』!」


響き渡るアナウンスに、歓声が湧き上がる。


『堕落の宴』とは、悪魔見習いたちが人間をどれだけ堕落させたかを競い合う一大イベント。

己の"堕落ポイント"を削るほど、悪魔たちは名声と力を得られる。


だが、今回のゲームには特別なルールがある──


"人間たちにも勝利条件がある"


桜木翔太、鬼塚、飯田──この三人は自らの堕落ポイントを死守しなければならない。

もし100になれば、彼らは完全に堕落し、悪魔の眷属となる。


そして、セリーヌ、ジョン、ヴァレリア──彼ら悪魔見習いたちは、いかにして人間を堕落させるかを競わなければならない。


「さあ、選手たち、壇上へ!」


まだ堕落していない三人の人間と、三人の悪魔が舞台へと足を踏み入れた。

周囲の悪魔たちが「堕落させろ!」「人間どもを闇に落とせ!」と叫んでいる。


(クソッ、こんな地獄みたいなゲームに巻き込まれるなんてな……)


桜木は歯を食いしばった。


「では、第一競技……『欲望の果実』!」


***


第一競技:『欲望の果実』

壇上に現れたのは、黄金に輝くリンゴだった。


「この果実を食べた者は、その場で最も渇望している欲望を即座に叶えられる!」


悪魔の司会者が妖しく微笑む。


「だが、食べた瞬間、その者の堕落ポイントは一気に10増加する……さて、どうする?」


「……」


桜木、鬼塚、飯田の三人はリンゴを見つめる。


──食べれば願いが叶う。


だが、自分の魂を削られる。


「さあ、食べてごらんなさい?」


ヴァレリアがリンゴを差し出す。

セリーヌは甘い声で囁く。


「桜木様、あなたの願いは何ですの? お金? 名声? それとも……失われたものを取り戻したくはありませんか?」


「……!」


桜木の脳裏に、一瞬だけ過去の記憶がよぎる。

──もし、俺が"あのとき"に戻れるなら……


「食べるな!」


鬼塚が桜木の肩を掴んだ。


「食ったら終わりだ。俺たちが食わなきゃ、悪魔どもはポイントを削れねぇんだろ?」


「うっ……」


鬼塚の言葉に、桜木は我に返る。


「へぇ……お堅いこと」


ヴァレリアがくすっと笑う。


「じゃあ……飯田、お前はどうだ?」


「……お、おら?」


「欲しいものなんでも手に入るんだぜ?」


ジョンが飯田の耳元で囁いた。


「お前、金持ちになりたかったんじゃねえのか?」


「お、おら……」


飯田の手が、ゆっくりとリンゴへと伸びる。


(ヤバい、飯田が食っちまう……!)


「飯田ァァ!!!」


桜木が思いっきり飯田の顔面を張った。


「いってぇ!?」


「目を覚ませ! お前が今までコツコツ貯めてきたもの、全部失うつもりか!?」


「う、ううっ……」


飯田は涙目になりながらリンゴから手を引っ込めた。


「くっ……失敗か」


セリーヌが悔しそうに唇を噛む。


「第一競技、人間側の勝利!」


悪魔たちからブーイングが飛ぶが、桜木たちは拳を握りしめた。


「ふぅ……なんとか耐えたな」


「油断するなよ、次があるんだからな」


***


第二競技:『禁忌の選択』

「次の競技は……『禁忌の選択』!」


壇上に、三つの扉が現れる。


「この扉のどれか一つには、"天国への鍵"が隠されている」


「だが、残る二つの扉には……"絶対に見てはならないもの"がある」


「もし扉を開けてしまえば、即座に堕落ポイント+20」


悪魔司会者が愉快そうに笑った。


「さあ、人間たちよ。選ぶがいい」


「クソ、マジで罠だらけだな……」


桜木は汗を拭った。


「ど、どうするべ?」


飯田がオロオロする。


「これは"心理戦"ね」


ヴァレリアが妖艶な微笑みを浮かべる。


「人間は"知ってはいけないもの"ほど、見たくなる生き物……でしょ?」


「……っ!」


桜木は震えた。


この状況、悪魔たちは開けさせるための誘導をしてくるに違いない。


「……開けねぇよ」


桜木は冷たく言い放った。


「は?」


「俺たち三人、誰も扉を開けない。それで終わりだ」


悪魔たちは沈黙した。


「……ふふっ」


ジョンがニヤリと笑う。


「なるほどな、君は賢い。ならば、こうしよう」


ジョンは悪魔の司会者に合図を送る。


「このままではゲームが成立しないので……"開けなければ、堕落ポイントを5増える"というルールを追加する」


「はぁ!? そんなのアリかよ!」


「当然、悪魔界ではルールも堕落と共に変わるのさ」


桜木は歯ぎしりする。


──開けなければ+5

──開ければ+20


どうする……!?


「俺、残り3しかねえぞ!!!」


「おらもだべ…。」


「……くそっ、俺たちはこのまま耐え抜くしかねぇ!」


桜木は決断した──


堕落するまであと91ポイント。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?