「……やるしかねぇな」
俺は息を飲みながら、ルシファーを真っ直ぐに見据えた。
「ダブル・オア・ナッシング、乗るぜ」
「ふふ、良い判断だ。じゃあ、最後のゲームを始めようか」
ルシファーが指を鳴らすと、テーブルの上に新たなゲームセットが出現した。
──"デス・ブラックジャック"
ルールは通常のブラックジャックと同じ。ただし、一つ違うのは負けたら魂を賭けるという点だ。
「……なるほどな」
「勝てば賞金倍増、負ければ無一文。**それどころか、負け続ければ"地獄行き"**だよ」
ルシファーはニヤリと微笑んだ。
「さぁ、君の運命のカードを引きなよ」
俺は深呼吸しながら、カードを手に取った。
***
それぞれの戦略
「翔太、お前、一人でやる気か?」
鬼塚が腕を組んで尋ねる。
「いや、ここはチーム戦で行こう」
俺は仲間たちを見渡し、それぞれの得意分野を活かすことにした。
「まず、ジョン。お前の"オタク知識"で、ブラックジャックのセオリーを解析してくれ」
「任せろ! 我は"賭博アニメ"の知識なら負けぬ!」
ジョンはすぐに頭を働かせ、確率論を叩き込む。
「……ふむ、ブラックジャックにおいて、16以下でヒットするか、17でステイするかが重要なポイント……」
「ふふ、それがわかったところで、運が悪ければ意味がないよ?」
ルシファーがクスクス笑う。
「次に、ヴァレリア」
「うふふ、なぁに?」
「お前の観察眼で、ルシファーがどんな仕草をするか見てくれ」
「OK♡ あたし、男の嘘はすぐに見抜くから♡」
ヴァレリアが妖艶に笑いながら、ルシファーの動きをチェックし始めた。
「飯田、お前はディーラーの手元を見てくれ。イカサマがないか確認してくれ」
「おらに任せろだべ!」
飯田が目を光らせ、ディーラーの指の動きを監視する。
「鬼塚、お前は……」
「ルシファーがズルしたら、殴る」
「おい、最終手段すぎるだろ!」
「……冗談だ。まぁ、最後の見極めは俺に任せろ」
鬼塚がドンと胸を叩いた。
「セリーヌ、お前は?」
「……えっと、私、お金がなくて賭け事の経験はないのですけれど……」
セリーヌがオロオロしながら言うと、ヴァレリアが優しく肩をポンと叩いた。
「大丈夫よ♡ あんたは可愛いから、それだけで十分♡」
「それ、何の役に立つのです……?」
「ま、まぁ、セリーヌには"直感力"があるからな。迷ったときは、お前の勘を頼るぜ」
鬼塚が適当なフォローを入れると、セリーヌは少し安心したようだった。
「それじゃあ……行くぞ!」
俺たちはそれぞれの役割を決め、ルシファーとの運命のブラックジャックに挑んだ。
***
第1戦:ルシファーのトリック
「さて、では最初のカードを配ろうか」
ディーラーがカードを配る。
俺のカードは【9】と【7】で、合計16。
(微妙な手札だな……ヒットするか、ステイするか……)
「君のターンだよ、翔太くん?」
ルシファーがにやりと笑う。
その瞬間、ヴァレリアがすかさず囁く。
「……翔太、気をつけなさい♡ ルシファーったら、さっきからほんのちょっとだけ唇を舐める仕草をしてるわ」
「……それがどうした?」
「これ、心理学的にいうと"優位に立ってる"ときに出る癖よ♡ つまり、あの男、自分の手札に相当自信があるってことよ」
「……なるほど」
俺はチラリとルシファーを見る。
(こいつの手札、強いってことか……なら、安易にヒットすると危険だ)
「ステイだ」
俺は静かに宣言した。
「フフフ……そうかい?」
ルシファーは笑いながら、自分のカードをめくる。
【10】と【7】
「……くっ、負けたか」
「おっと、一勝いただき」
ルシファーがニヤリと笑う。
しかし、俺は冷静だった。
(……まだ始まったばかり。ここから巻き返す)
***
第2戦:飯田の鋭い観察眼
2戦目、俺の手札は【8】と【6】。
(うーん、また微妙な手札……)
そのとき、飯田がボソッと呟いた。
「……なぁ、なんかディーラー、カード配るときにちょっと変なクセあるべ?」
「クセ?」
「手元をよーく見てみるだべ。カードを置くときに、ほんの一瞬だけ指先で何かを弾いてる感じがするべ」
「……おい、それってつまり」
「……多分、こっちに不利なカードが来るように調整してるだべ」
俺はディーラーを睨んだ。
「おい、ディーラー。カードを配る前に、"もう一回よく切れ"」
「……何のことかな?」
「今、お前、カードを弾いただろ」
「……」
ディーラーは無言のまま、ルシファーをチラリと見る。
すると、ルシファーが「仕方ないね」と肩をすくめた。
「バレちゃったら仕方ないな。ディーラー、ちゃんとシャッフルし直しなよ」
──結局、ディーラーは再びカードを切り直し、俺の手札はまともな状態になった。
結果、この試合は俺の勝ち。
「……ふぅ、何とか五分だな」
「やるねぇ、翔太くん」
ルシファーが楽しそうに笑う。
「次が最後の勝負だよ?」
***
最終戦:天使(エンジェル)の奇跡
「さて、最後の勝負だ」
俺の手札は【10】と【5】
「ヒットするかい?」
ルシファーが優雅に微笑む。
(……15か。あと6以上引いたらアウト。どうする?)
「う、うーん……」
俺が迷っていると、天使(エンジェル)がスッと近づいてきた。
「翔太様、落ち着いてくださいませ」
「エンジェル……?」
「私は"幸運の天使"です。こういうときこそ、私の"ご加護"を信じてみてはいかがでしょう?」
「……お前、ギャンブルの加護なんかあんのかよ」
「ええ、多少は」
エンジェルが優雅に微笑む。
(……ここまで来たら、信じるしかないか)
「……ヒットだ」
俺は意を決して、カードを引いた。
めくられたカードは……
【6】!!!
「21! ブラックジャックだ!」
「……な、何っ!?」
ルシファーが驚きの表情を浮かべる。
「バ、バカな……このルシファー様が……!」
「やったぁぁぁ!!!」
仲間たちが歓声を上げる。
ヴァレリアが飛びついてくるし、鬼塚はガッツポーズ、飯田は「おら、すげぇもん見たべ!」と大興奮していた。
「……ふふっ」
ルシファーは負けを認めるように、静かに笑った。
「まさか、ここまでやるとはね……お見事、翔太くん」
そう言って、ルシファーは手を鳴らすと、俺たちのチップが倍になった。
「君たちは正式に"ルシファー・ゲーム"をクリアしたよ」
「……へっ、当然だ」
俺たちは勝利の喜びを噛みしめながら、チップを換金するためにカジノを後にした。
***
後日──
「はははっ! こんなに金が手に入るとはな!」
鬼塚が袋いっぱいの金貨を抱えて笑う。
「これで貧乏生活ともおさらばですわ……!」
セリーヌが目を輝かせる。
「さて……次はどうする?」
ジョンが聞いてくる。
「まぁ、しばらくは……遊ぶか!」
俺たちは大金を手に、次なる冒険(?)へと進んでいくのだった──!
これでいいのか?
堕落するまであと91ポイント。