俺たちは魔法陣の光に包まれ、次の瞬間、闇カジノとは全く違う場所に立っていた。
「……ここは?」
見渡すと、広大な闘技場のような場所だった。天井はなく、紫色の炎がゆらめく異空間が広がっている。観客席には得体の知れない悪魔たちがびっしりと座り、俺たちを見下ろしてニヤニヤしていた。
「……最悪な場所に飛ばされたな」
鬼塚が不機嫌そうに腕を組む。
「ここが“ルシファー・ゲーム”の舞台ってわけね……」
ヴァレリアがため息をつく。
「ええ、その通り」
ルシファーが闘技場の中央にふわりと降り立った。
「さて、ルールを説明しようか」
指を鳴らすと、上空に巨大な魔法のスクリーンが現れた。そこには「第一試練:運命のロシアンルーレット」と書かれていた。
「ロシアンルーレット……!?」
「おいおい、まさか弾が入った拳銃を回すとかじゃねぇだろうな!?」
鬼塚が眉をひそめる。
「まさか、そんな単純なものじゃないよ。これは"地獄式"ロシアンルーレットさ」
ルシファーが手を振ると、俺たちの目の前に円形のルーレット台が現れた。
その上には──6つのボタン。
「この中の一つが地獄行きのボタンだよ♡」
「は……? なんだそりゃ!」
「ルールは簡単。君たちは順番にボタンを押していく。誰かが"ハズレ"を引いたら……その人は地獄の底に落ちる」
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?!?」」」
「ただし!」
ルシファーが人差し指を立てた。
「一度でもボタンを押せば、次の試練に進める。つまり、全員が押せば5人は助かる。ただし、誰かが押さなかった場合……その分、次に押す人のリスクが上がるよ」
「くっそ……完全な運ゲーじゃねぇか!」
鬼塚が舌打ちする。
「おいおい、悪魔のゲームに実力が通用すると思ったかい?」
ルシファーがニヤリと笑う。
「さぁ、誰から押す?」
「……」
沈黙が場を支配する。
「おら、押すだ……」
突然、飯田が一歩前に出た。
「飯田……!?」
「ここで誰も押さねぇと、後に続くやつが余計に怖くなるべ……なら、おらが行くしかねぇべ!」
「……お前……」
「さっさと終わらせっぺ!」
飯田が勢いよくボタンを押した──
──カチッ
沈黙。
何も起こらない。
「……セーフ、だべか?」
「飯田……!」
俺たちの間に安堵の空気が流れた。
「ふふ、いい度胸だね。さぁ、次は誰が行く?」
ルシファーが嬉しそうに言う。
「お、お次は我が行こう……!」
ジョンが一歩前に出た。
「おいジョン、本当に大丈夫か!?」
「フッ……この手の運試し、我は数々のソシャゲで鍛えられてきた……! 我のガチャ運を信じろ!」
「おい、それ信じていいやつか!?」
ジョンがボタンを押す。
──カチッ
「……っ!?」
「セーフ! 2連続でセーフですわ!」
セリーヌが小さく拍手する。
「おおおお! すげぇぞジョン!」
「フフ……ソシャゲの爆死を乗り越えたこの手に、不可能はないのだ……!」
「いや、そこはガチャで当てろよ!!」
「次は……あたしが行くわ!」
ヴァレリアが妖艶な笑みを浮かべながら、ボタンを押す。
──カチッ
「3連続でセーフ! これは……行けるのでは?」
「……へへっ、なんだ、簡単じゃない♡」
「調子に乗るなよ……次は俺が行く」
鬼塚が無言でボタンを押す。
──カチッ
「……っ!」
「セーフ!!!」
「鬼ちゃんかっこいいわぁ♡」
「お前はどんな状況でもブレねぇな……」
そして、残ったのは俺とセリーヌ。
「……」
「桜木さん……私が先に押しますわ!」
「セリーヌ……!」
セリーヌが震えながらボタンに手を伸ばす。
「いきますわ……っ!」
──カチッ
「……」
何も起こらない。
「セーフ……! やりましたわ!」
「あとは……俺だけか」
ルシファーがニヤリと笑う。
「さぁ、ラスト一人……君が押せば、全員クリアだよ?」
「……くそ、やるしかねぇ!」
俺は渾身の力でボタンを押した。
──カチッ
「……」
静寂。
「……セーフ?」
「おめでとう、全員クリアだよ♡」
「「「「「「うおおおおおおお!!!」」」」」」
俺たちは全員でガッツポーズをした。
「ふふ……面白いね。全員が生き残るとは思わなかったよ」
「おらたち、やっただな!」
飯田が涙目で拳を握る。
「へへっ、ま、当然だな!」
鬼塚が笑う。
「……だが、まだ一つ目の試練が終わっただけだ」
ジョンが静かに言った。
「そう、その通り!」
ルシファーが指を鳴らすと、魔法のスクリーンに新しい文字が浮かび上がった。
──「第二試練:悪魔の賭け」
「さて、次はどんな地獄を見せてくれるかな?」
堕落するまであと91ポイント。