新宿――。
ネオンがぎらぎらと輝き、どこからともなく胡散臭い客引きの声が聞こえるこの街で、俺たちは“ルシファー”を探していた。
「で、具体的にどこを探せばいいんだ?」
俺、桜木翔太が尋ねると、天使は少し考えてから答えた。
「ルシファーは“人間の堕落”に惹かれる……つまり、人間の欲望が渦巻く場所にいる可能性が高いわ」
「欲望ねぇ……」
俺が腕を組んで考えていると、ヴァレリアがニヤリと笑った。
「だったら、ピッタリの場所があるわよ♡」
「え? どこ?」
「闇カジノ♡」
「えぇ……」
思わず顔をしかめる俺。
「新宿にそんなもんあんのかよ……」
「怖いべ怖いべ!」
「我が主には我がついている。安心せよ。」
「あるわよ~? ほら、あっちのビルの地下とか♡」
ヴァレリアが適当に指差した先には、いかにも怪しげな雑居ビルがそびえ立っていた。
「……いや、こんなに簡単に見つかるもんなの?」
「ふふっ♡ 闇の世界の住人たちは、案外目立つのよ♡」
「目立つなよ、闇なんだから!」
思わずツッコむ俺をよそに、鬼塚が腕を組んで考え込む。
「まぁ、確かに欲望渦巻く場所って意味では、闇カジノは適してるかもしれねぇな……」
「でも、普通の人間が入れるのかしら?」
セリーヌが心配そうに言う。
「ふふふ、それなら問題ないわ♡」
ヴァレリアが不敵に笑い、ポケットから何かを取り出した。
「なにそれ?」
「偽造VIPカード♡」
「犯罪じゃねぇか!!!!」
俺と鬼塚が即ツッコミを入れるが、ヴァレリアは悪びれた様子もなく微笑む。
「大丈夫よ~、バレなきゃ犯罪じゃないわ♡」
「いや、バレなくても犯罪だろ!!」
「ま、細かいことは気にしないで行きましょう♡」
「お前の細かいの基準、ガバガバすぎんだろ……」
こうして俺たちは、新宿の裏路地にある闇カジノ『ラスト・インフェルノ』へと向かうことになった。
***
「……本当にこんなとこ入って大丈夫なのか?」
闇カジノ『ラスト・インフェルノ』の入り口に立ち、俺はゴクリと唾を飲んだ。
ビルの地下に続く怪しげな扉。スーツ姿の強面の男たちが立っている。明らかにヤバい雰囲気だ。
「さぁ、翔太♡ 笑顔で堂々と行きなさい♡」
「いや、お前が言うと余計に不安なんだけど!!」
「大丈夫、大丈夫♡ 偽造カードは完璧よ♡」
「その自信の根拠は?」
「私が作ったから♡」
「一番信用できねぇ!!!!!」
そんなやり取りをしていると、門番の男がこちらに目を向けた。
「おい、お前ら。ここは関係者以外立ち入り禁止だ。とっとと帰りな」
「まぁまぁ、そう言わずに……ほら、これ♡」
ヴァレリアが偽造VIPカードをスッと差し出す。
門番はカードをじっと見つめ――
「……通れ」
「え、通れるんかい!!」
俺が心の中で全力ツッコミを入れる中、俺たちは無事に闇カジノの中へと入ることができたのだった。
***
「……おぉ、すげぇな」
中に入ると、そこはまさに別世界だった。
煌びやかなシャンデリア、タキシードやドレスに身を包んだ客たち。ルーレットの回る音や、カードを切る音が響き渡る。
「こんなとこ、本当にルシファーがいるのか?」
俺がボソッと呟くと、天使は周囲を見回しながら言った。
「……ええ。でも、すぐに見つけるのは難しいかもしれないわね」
「なら、少し遊んでみましょうか♡」
「いやいや、遊ぶために来たんじゃねぇから!!!」
「いいじゃない♡ せっかくの機会なんだし、楽しみましょ♡」
「その考え方が堕落の第一歩なんだよ!!!」
しかし、ヴァレリアはそんな俺の言葉を聞き流し、すでにブラックジャックのテーブルへと向かっていた。
「はぁ……もう好きにしろよ……」
「よし、俺はスロットやるぜ!」
「お前も乗っかるなよ、鬼塚!!」
こうして、俺たちはルシファーを探すはずが、なぜか闇カジノでギャンブルをすることになったのだった――。
堕落するまであと91ポイント。