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第23話 闇カジノ

新宿――。


ネオンがぎらぎらと輝き、どこからともなく胡散臭い客引きの声が聞こえるこの街で、俺たちは“ルシファー”を探していた。


「で、具体的にどこを探せばいいんだ?」


俺、桜木翔太が尋ねると、天使は少し考えてから答えた。


「ルシファーは“人間の堕落”に惹かれる……つまり、人間の欲望が渦巻く場所にいる可能性が高いわ」


「欲望ねぇ……」


俺が腕を組んで考えていると、ヴァレリアがニヤリと笑った。


「だったら、ピッタリの場所があるわよ♡」


「え? どこ?」


「闇カジノ♡」


「えぇ……」


思わず顔をしかめる俺。


「新宿にそんなもんあんのかよ……」


「怖いべ怖いべ!」


「我が主には我がついている。安心せよ。」


「あるわよ~? ほら、あっちのビルの地下とか♡」


ヴァレリアが適当に指差した先には、いかにも怪しげな雑居ビルがそびえ立っていた。


「……いや、こんなに簡単に見つかるもんなの?」


「ふふっ♡ 闇の世界の住人たちは、案外目立つのよ♡」


「目立つなよ、闇なんだから!」


思わずツッコむ俺をよそに、鬼塚が腕を組んで考え込む。


「まぁ、確かに欲望渦巻く場所って意味では、闇カジノは適してるかもしれねぇな……」


「でも、普通の人間が入れるのかしら?」


セリーヌが心配そうに言う。


「ふふふ、それなら問題ないわ♡」


ヴァレリアが不敵に笑い、ポケットから何かを取り出した。


「なにそれ?」


「偽造VIPカード♡」


「犯罪じゃねぇか!!!!」


俺と鬼塚が即ツッコミを入れるが、ヴァレリアは悪びれた様子もなく微笑む。


「大丈夫よ~、バレなきゃ犯罪じゃないわ♡」


「いや、バレなくても犯罪だろ!!」


「ま、細かいことは気にしないで行きましょう♡」


「お前の細かいの基準、ガバガバすぎんだろ……」


こうして俺たちは、新宿の裏路地にある闇カジノ『ラスト・インフェルノ』へと向かうことになった。


***


「……本当にこんなとこ入って大丈夫なのか?」


闇カジノ『ラスト・インフェルノ』の入り口に立ち、俺はゴクリと唾を飲んだ。


ビルの地下に続く怪しげな扉。スーツ姿の強面の男たちが立っている。明らかにヤバい雰囲気だ。


「さぁ、翔太♡ 笑顔で堂々と行きなさい♡」


「いや、お前が言うと余計に不安なんだけど!!」


「大丈夫、大丈夫♡ 偽造カードは完璧よ♡」


「その自信の根拠は?」


「私が作ったから♡」


「一番信用できねぇ!!!!!」


そんなやり取りをしていると、門番の男がこちらに目を向けた。


「おい、お前ら。ここは関係者以外立ち入り禁止だ。とっとと帰りな」


「まぁまぁ、そう言わずに……ほら、これ♡」


ヴァレリアが偽造VIPカードをスッと差し出す。


門番はカードをじっと見つめ――


「……通れ」


「え、通れるんかい!!」


俺が心の中で全力ツッコミを入れる中、俺たちは無事に闇カジノの中へと入ることができたのだった。


***


「……おぉ、すげぇな」


中に入ると、そこはまさに別世界だった。


煌びやかなシャンデリア、タキシードやドレスに身を包んだ客たち。ルーレットの回る音や、カードを切る音が響き渡る。


「こんなとこ、本当にルシファーがいるのか?」


俺がボソッと呟くと、天使は周囲を見回しながら言った。


「……ええ。でも、すぐに見つけるのは難しいかもしれないわね」


「なら、少し遊んでみましょうか♡」


「いやいや、遊ぶために来たんじゃねぇから!!!」


「いいじゃない♡ せっかくの機会なんだし、楽しみましょ♡」


「その考え方が堕落の第一歩なんだよ!!!」


しかし、ヴァレリアはそんな俺の言葉を聞き流し、すでにブラックジャックのテーブルへと向かっていた。


「はぁ……もう好きにしろよ……」


「よし、俺はスロットやるぜ!」


「お前も乗っかるなよ、鬼塚!!」


こうして、俺たちはルシファーを探すはずが、なぜか闇カジノでギャンブルをすることになったのだった――。


堕落するまであと91ポイント。

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