新宿・歌舞伎町
ネオンが乱反射する街の中を、俺たちは歩いていた。
「……相変わらず、人が多いわね」
セリーヌが周囲を見回しながら呟く。
歌舞伎町は夜になるとさらに混沌とした雰囲気になる。酔っぱらい、ホスト、キャッチ、観光客――人間の欲望と絶望が入り混じるこの街は、確かにルシファーが目覚めるにはふさわしい場所だった。
「東京って怖いべ…。」
飯田は、ガタガタと震えながら、俺の服を掴みながら歩く。
正直鬱陶しい。
「……で、どうやって探す?」
鬼塚が俺に聞く。
「それな……」
俺は軽く息を吐きながら、視線を巡らせる。
天使は「ルシファーは人間の堕落に引き寄せられる」と言っていた。
それなら、この街で一番“ヤバい空気”が漂っている場所を探せば、手がかりがつかめるかもしれない。
「欲望が渦巻いてる場所っていったら……」
「……闇カジノとか?」
ヴァレリアが軽く微笑む。
「この辺りには表向き営業していない違法なギャンブル場がいくつかあるわよ♡」
「闇カジノか……確かに、金と欲望が交差する場所だな」
鬼塚が腕を組む。
「それか、もっと直接的に……犯罪組織のたまり場とか?」
「あり得るわね」
セリーヌが頷く。
「それで、どうやって探すの?」
「……とりあえず、聞き込みするしかねぇな」
俺は周囲を見渡しながら言った。
「“この街の事情に詳しい奴”に話を聞く」
「そんな都合のいい奴、どこにいるのよ」
セリーヌが呆れたように言うが、俺には目星がついていた。
「……鬼塚」
「ん?」
「お前、この辺に知り合いとかいねぇのか?」
鬼塚は少し驚いた顔をしたが、すぐに苦笑した。
「……ま、いないことはねぇな」
「ほう」
ヴァレリアが興味深そうに目を細める。
「君、裏の世界にも顔が利くのね♡」
「昔な」
鬼塚は面倒くさそうに頭を掻いた。
「まぁ、ちょっとしたツテがある。あんまり関わりたくねぇけど、今はそんなこと言ってられねぇか……」
「決まりね」
セリーヌが静かに言った。
「鬼塚のツテを頼って、情報を集めましょう」
「……お前ら、勝手に話進めんなよ」
鬼塚はため息をついたが、最終的には肩をすくめた。
「……いいぜ。ちょっとした厄介事に巻き込まれるかもしれねぇが、それでもいいならな」
「上等だ」
俺はにやりと笑った。
「じゃあ、案内頼むわ」
――こうして俺たちは、“新宿の裏側”へと足を踏み入れることになった。
堕落するまであと46ポイント。