「……ルシファー?」
俺は思わず聞き返した。
「ちょっと待て、ルシファーってあの堕天使の?」
鬼塚も困惑している。
「ええ、そのルシファーよ……!」
天使は荒い息をつきながら、俺たちを見回した。
「アザゼルが目覚めた影響で、彼も……“動き出してしまった”の……!」
「動き出したって……そもそも、ルシファーって今どこにいるんだ?」
俺が問いかけると、天使は苦しげな表情を浮かべながら答えた。
「――地上よ」
「……は?」
「ルシファーは、長い間眠りについていた。でも、アザゼルの“怠惰の力”が乱れたことで……彼の封印も揺らいでしまったの!」
「いやいや待て待て待て……」
鬼塚が大きく手を振る。
「ルシファーって、悪魔の中でも最強クラスだろ? そんなヤツが地上にいるとか、ヤバすぎるんじゃねぇの?」
「ええ……ヤバいわ」
天使は真剣な顔で頷いた。
「今のところ、完全には目覚めていないはず……だけど、時間の問題よ」
「……つまり、俺たちにどうしろと?」
俺が訊くと、天使は少し躊躇った後、言った。
「お願い……ルシファーを止めて……!彼が目覚めれば地上が闇に...」と震えた。
「はぁ!?」
俺たちは揃って叫んだ。
「ちょ、ちょっと待て! いくらなんでも無理があるだろ!?」
鬼塚が慌てるのも無理はない。
「アザゼルならまだしも、ルシファーって格が違いすぎねぇか!?」
「そうよ♡ さすがの私も、ちょっと厳しいかも♡」
ヴァレリアも珍しく弱気な声を出す。
「……あなたたちなら、可能性はあるわ」
天使は真剣な眼差しで俺たちを見つめた。
「さっき、アザゼルを“目覚めさせた”のよね?」
「いや、殴って寝かせただけなんだけど……」
「それでも、結果的に彼は変わった。あなたたちの影響を受けたのよ」
「…………」
俺たちは言葉を失った。
「ルシファーは、ただの悪魔じゃない。彼は元々、天使だったの。かつては、私たちと共に天界を守る存在だった……」
天使は悲しげに目を伏せる。
「でも、彼は堕ちた。そして、今もなお……世界に絶望しているの」
「…………」
「だから……お願い。あなたたちの力で、彼を目覚めさせて……!」
俺たちは顔を見合わせた。
鬼塚は呆れたように溜め息をつき、セリーヌは腕を組んで考え込んでいる。
ヴァレリアは――
「うーん♡ どうしようかしら♡」
全然緊張感がない。
そして、俺は――
「……はぁ、仕方ねぇな」
「桜木!?」
鬼塚が驚いた顔をする。
「アザゼルの時も、結局なんとかなったし……今回も、やるしかねぇだろ」
「……フッ、相変わらずね」
セリーヌが小さく微笑む。
「やれやれ……つくづく、トラブルに巻き込まれる運命だな」
鬼塚も観念したように苦笑した。
「フフン♡ じゃあ、みんなでルシファーをお迎えに行くとしましょうか♡」
ヴァレリアは楽しそうに言う。
「……ありがとう!」
天使はホッとした表情を浮かべた。
「ルシファーは……今、どこにいる?」
俺が訊くと、天使はゆっくりと答えた。
「――東京よ」
「……マジか」
俺たちは再び顔を見合わせた。
「……じゃあ、行くか」
こうして――
俺たちは、“堕天の王”ルシファーを止めるために、動き出した。
次なる戦いの幕が、今、上がる。
堕落するまであと94ポイント。