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第20話 ルシファー

「……ルシファー?」


俺は思わず聞き返した。


「ちょっと待て、ルシファーってあの堕天使の?」


鬼塚も困惑している。


「ええ、そのルシファーよ……!」


天使は荒い息をつきながら、俺たちを見回した。


「アザゼルが目覚めた影響で、彼も……“動き出してしまった”の……!」


「動き出したって……そもそも、ルシファーって今どこにいるんだ?」


俺が問いかけると、天使は苦しげな表情を浮かべながら答えた。


「――地上よ」


「……は?」


「ルシファーは、長い間眠りについていた。でも、アザゼルの“怠惰の力”が乱れたことで……彼の封印も揺らいでしまったの!」


「いやいや待て待て待て……」


鬼塚が大きく手を振る。


「ルシファーって、悪魔の中でも最強クラスだろ? そんなヤツが地上にいるとか、ヤバすぎるんじゃねぇの?」


「ええ……ヤバいわ」


天使は真剣な顔で頷いた。


「今のところ、完全には目覚めていないはず……だけど、時間の問題よ」


「……つまり、俺たちにどうしろと?」


俺が訊くと、天使は少し躊躇った後、言った。


「お願い……ルシファーを止めて……!彼が目覚めれば地上が闇に...」と震えた。


「はぁ!?」


俺たちは揃って叫んだ。


「ちょ、ちょっと待て! いくらなんでも無理があるだろ!?」


鬼塚が慌てるのも無理はない。


「アザゼルならまだしも、ルシファーって格が違いすぎねぇか!?」


「そうよ♡ さすがの私も、ちょっと厳しいかも♡」


ヴァレリアも珍しく弱気な声を出す。


「……あなたたちなら、可能性はあるわ」


天使は真剣な眼差しで俺たちを見つめた。


「さっき、アザゼルを“目覚めさせた”のよね?」


「いや、殴って寝かせただけなんだけど……」


「それでも、結果的に彼は変わった。あなたたちの影響を受けたのよ」


「…………」


俺たちは言葉を失った。


「ルシファーは、ただの悪魔じゃない。彼は元々、天使だったの。かつては、私たちと共に天界を守る存在だった……」


天使は悲しげに目を伏せる。


「でも、彼は堕ちた。そして、今もなお……世界に絶望しているの」


「…………」


「だから……お願い。あなたたちの力で、彼を目覚めさせて……!」


俺たちは顔を見合わせた。


鬼塚は呆れたように溜め息をつき、セリーヌは腕を組んで考え込んでいる。


ヴァレリアは――


「うーん♡ どうしようかしら♡」


全然緊張感がない。


そして、俺は――


「……はぁ、仕方ねぇな」


「桜木!?」


鬼塚が驚いた顔をする。


「アザゼルの時も、結局なんとかなったし……今回も、やるしかねぇだろ」


「……フッ、相変わらずね」


セリーヌが小さく微笑む。


「やれやれ……つくづく、トラブルに巻き込まれる運命だな」


鬼塚も観念したように苦笑した。


「フフン♡ じゃあ、みんなでルシファーをお迎えに行くとしましょうか♡」


ヴァレリアは楽しそうに言う。


「……ありがとう!」


天使はホッとした表情を浮かべた。


「ルシファーは……今、どこにいる?」


俺が訊くと、天使はゆっくりと答えた。


「――東京よ」


「……マジか」


俺たちは再び顔を見合わせた。


「……じゃあ、行くか」


こうして――


俺たちは、“堕天の王”ルシファーを止めるために、動き出した。


次なる戦いの幕が、今、上がる。


堕落するまであと94ポイント。

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