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第18話 めでたしめでたし

アザゼルの黒いオーラがさらに濃くなる。


ゴゴゴゴゴゴ……!!!


「くそっ、また体が……!」


鬼塚が拳を握りしめるが、再び身体が重くなる感覚に襲われる。

正直きつい。


「フフフ……何度でも言うぜ……もう、全部やめちまえよ……」


アザゼルの声が耳元で囁くように響く。


――ダメだ、このままじゃまた飲み込まれる。


俺は意識を強く保とうとするが、まぶたが重く、思考が鈍る。


だが――


「アンタたち!!!! いい加減にしなさい!!!!♡」


ヴァレリアの怒号が響き渡った。


「え?」


俺たちが呆気に取られる間もなく――


「鍛錬の愛を――受けなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!♡♡♡」


ヴァレリアの全身が輝き、凄まじい気迫を放つ。


「こ、これは……!?」


「フフフフフ……アタシの最大奥義……!!!」


ヴァレリアは仁王立ちになり、両腕を大きく広げると――


「『灼熱筋肉覚醒(バーニング・マッスル・アウェイク)』!!!!♡」


バシュウゥゥゥゥゥ!!!!!!


突如、俺たちの体に熱いエネルギーが流れ込む。


「ぐおっ……!? なんだ、これ……!!」


鬼塚が驚きの声を上げる。


「なんだか……体が……!!」


セリーヌも目を見開いた。


――信じられない。


あれだけ重かった身体が、急に軽くなった。いや、それどころか――


「……力がみなぎってくる……!!!」


俺は拳を握りしめた。


「フフン♡ これはね、『熱血の愛』よ♡」


ヴァレリアがニッコリと微笑む。

やっぱりきもい。


「アンタたちがダラダラしてるのを見てられなかったから……♡ ちょっとばかり、アタシの情熱を分けてあげたの♡」


「お前、なんでもアリだな……」


鬼塚が呆れたように言う。


「フフン♡ それがアタシの魅力よ♡」


ヴァレリアがウインクする。


「くっ……何だ、この力は……!?」


アザゼルが動揺している。

すげえ。


「怠惰のオーラが……押し返されている……!?」


「ハッ、そりゃそうだろ……!!!」


鬼塚が拳を鳴らし、ニヤリと笑う。


「やる気なんてもんは、強制的にでも燃やせばなんとかなるんだよ!!!!」


「ば、バカな……!?」


アザゼルが焦りを見せる。

ていうか単純すぎるだろ、おい。


「さあ、アンタも目を覚ましなさい!!!♡」


ヴァレリアがアザゼルを指さす。


「何百年も寝てないとか、そんなの関係ないの!!!♡ そんなに寝たいなら、アタシが愛のビンタで眠らせてあげる!!!!♡♡♡」


「な、なにィィィィィ!?」


ヴァレリアの全身がさらに輝き――


「『鉄拳愛撃(ラブ・パンチ)』!!!!♡♡♡」


バゴォォォォォォォン!!!!!!!!


「ぐぼぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


アザゼルが吹っ飛んだ。


「お、おい……マジかよ……」


俺は唖然とした。


――あのアザゼルが、一撃で……!?


アザゼルは地面に倒れ込み、そのままピクリとも動かない。


そして――


「……すぅ……すぅ……」


「寝たァァァァァァァァァ!!!!!」


俺たちは一斉に叫んだ。


「フフン♡ どうやら、ようやく眠れたみたいね♡」


ヴァレリアが満足そうに微笑む。


「……マジで、なんなんだよ、お前……」


鬼塚が心底呆れたようにため息をつく。


「愛よ♡」


ヴァレリアは堂々と胸を張った。

いや絶対違う。


こうして――


最強の怠惰悪魔・アザゼルは、数百年ぶりの安眠を手に入れたのだった。


「めでたし、めでたし♡」


「いや、何もかもめでたくねぇよ!!!!!」


堕落するまであと91ポイント。

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