アザゼルの黒いオーラがさらに濃くなる。
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
「くそっ、また体が……!」
鬼塚が拳を握りしめるが、再び身体が重くなる感覚に襲われる。
正直きつい。
「フフフ……何度でも言うぜ……もう、全部やめちまえよ……」
アザゼルの声が耳元で囁くように響く。
――ダメだ、このままじゃまた飲み込まれる。
俺は意識を強く保とうとするが、まぶたが重く、思考が鈍る。
だが――
「アンタたち!!!! いい加減にしなさい!!!!♡」
ヴァレリアの怒号が響き渡った。
「え?」
俺たちが呆気に取られる間もなく――
「鍛錬の愛を――受けなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!♡♡♡」
ヴァレリアの全身が輝き、凄まじい気迫を放つ。
「こ、これは……!?」
「フフフフフ……アタシの最大奥義……!!!」
ヴァレリアは仁王立ちになり、両腕を大きく広げると――
「『灼熱筋肉覚醒(バーニング・マッスル・アウェイク)』!!!!♡」
バシュウゥゥゥゥゥ!!!!!!
突如、俺たちの体に熱いエネルギーが流れ込む。
「ぐおっ……!? なんだ、これ……!!」
鬼塚が驚きの声を上げる。
「なんだか……体が……!!」
セリーヌも目を見開いた。
――信じられない。
あれだけ重かった身体が、急に軽くなった。いや、それどころか――
「……力がみなぎってくる……!!!」
俺は拳を握りしめた。
「フフン♡ これはね、『熱血の愛』よ♡」
ヴァレリアがニッコリと微笑む。
やっぱりきもい。
「アンタたちがダラダラしてるのを見てられなかったから……♡ ちょっとばかり、アタシの情熱を分けてあげたの♡」
「お前、なんでもアリだな……」
鬼塚が呆れたように言う。
「フフン♡ それがアタシの魅力よ♡」
ヴァレリアがウインクする。
「くっ……何だ、この力は……!?」
アザゼルが動揺している。
すげえ。
「怠惰のオーラが……押し返されている……!?」
「ハッ、そりゃそうだろ……!!!」
鬼塚が拳を鳴らし、ニヤリと笑う。
「やる気なんてもんは、強制的にでも燃やせばなんとかなるんだよ!!!!」
「ば、バカな……!?」
アザゼルが焦りを見せる。
ていうか単純すぎるだろ、おい。
「さあ、アンタも目を覚ましなさい!!!♡」
ヴァレリアがアザゼルを指さす。
「何百年も寝てないとか、そんなの関係ないの!!!♡ そんなに寝たいなら、アタシが愛のビンタで眠らせてあげる!!!!♡♡♡」
「な、なにィィィィィ!?」
ヴァレリアの全身がさらに輝き――
「『鉄拳愛撃(ラブ・パンチ)』!!!!♡♡♡」
バゴォォォォォォォン!!!!!!!!
「ぐぼぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
アザゼルが吹っ飛んだ。
「お、おい……マジかよ……」
俺は唖然とした。
――あのアザゼルが、一撃で……!?
アザゼルは地面に倒れ込み、そのままピクリとも動かない。
そして――
「……すぅ……すぅ……」
「寝たァァァァァァァァァ!!!!!」
俺たちは一斉に叫んだ。
「フフン♡ どうやら、ようやく眠れたみたいね♡」
ヴァレリアが満足そうに微笑む。
「……マジで、なんなんだよ、お前……」
鬼塚が心底呆れたようにため息をつく。
「愛よ♡」
ヴァレリアは堂々と胸を張った。
いや絶対違う。
こうして――
最強の怠惰悪魔・アザゼルは、数百年ぶりの安眠を手に入れたのだった。
「めでたし、めでたし♡」
「いや、何もかもめでたくねぇよ!!!!!」
堕落するまであと91ポイント。