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第17話 オネエの力

「ふふ……アンタ、寝られないのを誇りに思ってるみたいだけど――」


ヴァレリアが堂々と前に出る。


「アタシはね、鍛錬のために睡眠時間を削ることなんて、日常茶飯事なのよ♡ つまり――」


ヴァレリアの筋肉が脈打つ。体から立ち昇る闘気が、アザゼルの黒いオーラとぶつかり合い、周囲の空間が歪むほどの圧力を生み出していた。


「そんなもの……精神力でどうにでもなるの!!!!♡」


バシュッ!!!


ヴァレリアが一瞬でアザゼルの懐に飛び込む。


「――はえぇ!?」


アザゼルが驚く間もなく、ヴァレリアの右手が振り上げられる。


「『覚醒の熱血ビンタ(アウェイクニング・スラップ)』!!!!♡」


バチィィィィィン!!!!!!!!


「ぐおおおおおおおおお!!!!!!?????」


アザゼルが吹っ飛んだ。いや、正確には、空間ごと揺れ動いた。地面が砕け、周囲の木々が風圧で吹き飛ぶ。


「な、なに……!?」


俺たちは唖然とした。


「ふん♡ これで少しは目が覚めたかしら?」


ヴァレリアは満足げに拳を鳴らす。


「……へへ、マジかよ……」


崩れた瓦礫の中から、アザゼルがゆらりと立ち上がる。顔にはビンタの跡がくっきりと残り、目がかすかに充血していた。


「なんか……ちょっとだけ、頭がスッキリしたかもな……?」


アザゼルはボリボリと頭を掻きながら、ぼんやりと空を見上げる。


「……ん?」


「おいおい……もしかして……」


鬼塚が呆れたように言う。


「アンタ、寝てねぇから、ずっとボーッとしてただけなんじゃねぇの?」


「……マジ?」


俺が言うと、セリーヌが真剣な顔で頷いた。


「……あり得ます。眠らないことで脳がずっと疲労していて、思考力が鈍っていたのかもしれません。でも、ヴァレリアさんの衝撃で一瞬だけ意識がクリアになった――」


「つまり?」


「このまま、もっとハッキリさせれば……」


ジョンが指をさして叫ぶ。


「アザゼルは、眠れるようになる!!!!」


「「「「なん……だと……!?」」」」


全員が息を飲んだ。


「いや、そんな簡単に――」


「簡単よ♡」


ヴァレリアがニヤリと笑う。


「だって、アンタの怠惰ってのは、単なるサボり癖でしょ? だったら……強制的に鍛えれば、疲れ果てて寝るに決まってるじゃない!!!!♡」


「え、ちょっ――」


「さぁ、行くわよ!!!」


ヴァレリアがアザゼルの腕を掴み――


「『地獄の特訓コース♡』スタートォォォ!!!!♡」


「やめろおおおおおお!!!!」


アザゼルの叫びが、虚しく夜空に響き渡った――。


堕落するまであと91ポイント。

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