「ふふ……アンタ、寝られないのを誇りに思ってるみたいだけど――」
ヴァレリアが堂々と前に出る。
「アタシはね、鍛錬のために睡眠時間を削ることなんて、日常茶飯事なのよ♡ つまり――」
ヴァレリアの筋肉が脈打つ。体から立ち昇る闘気が、アザゼルの黒いオーラとぶつかり合い、周囲の空間が歪むほどの圧力を生み出していた。
「そんなもの……精神力でどうにでもなるの!!!!♡」
バシュッ!!!
ヴァレリアが一瞬でアザゼルの懐に飛び込む。
「――はえぇ!?」
アザゼルが驚く間もなく、ヴァレリアの右手が振り上げられる。
「『覚醒の熱血ビンタ(アウェイクニング・スラップ)』!!!!♡」
バチィィィィィン!!!!!!!!
「ぐおおおおおおおおお!!!!!!?????」
アザゼルが吹っ飛んだ。いや、正確には、空間ごと揺れ動いた。地面が砕け、周囲の木々が風圧で吹き飛ぶ。
「な、なに……!?」
俺たちは唖然とした。
「ふん♡ これで少しは目が覚めたかしら?」
ヴァレリアは満足げに拳を鳴らす。
「……へへ、マジかよ……」
崩れた瓦礫の中から、アザゼルがゆらりと立ち上がる。顔にはビンタの跡がくっきりと残り、目がかすかに充血していた。
「なんか……ちょっとだけ、頭がスッキリしたかもな……?」
アザゼルはボリボリと頭を掻きながら、ぼんやりと空を見上げる。
「……ん?」
「おいおい……もしかして……」
鬼塚が呆れたように言う。
「アンタ、寝てねぇから、ずっとボーッとしてただけなんじゃねぇの?」
「……マジ?」
俺が言うと、セリーヌが真剣な顔で頷いた。
「……あり得ます。眠らないことで脳がずっと疲労していて、思考力が鈍っていたのかもしれません。でも、ヴァレリアさんの衝撃で一瞬だけ意識がクリアになった――」
「つまり?」
「このまま、もっとハッキリさせれば……」
ジョンが指をさして叫ぶ。
「アザゼルは、眠れるようになる!!!!」
「「「「なん……だと……!?」」」」
全員が息を飲んだ。
「いや、そんな簡単に――」
「簡単よ♡」
ヴァレリアがニヤリと笑う。
「だって、アンタの怠惰ってのは、単なるサボり癖でしょ? だったら……強制的に鍛えれば、疲れ果てて寝るに決まってるじゃない!!!!♡」
「え、ちょっ――」
「さぁ、行くわよ!!!」
ヴァレリアがアザゼルの腕を掴み――
「『地獄の特訓コース♡』スタートォォォ!!!!♡」
「やめろおおおおおお!!!!」
アザゼルの叫びが、虚しく夜空に響き渡った――。
堕落するまであと91ポイント。