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第16話 アザゼル

「……頼むから、寝かせてくれよぉ……」


アザゼルがダルそうに頭を掻き、ゆらりと近づく。


「お前ら寝られるんだろ? いいよなぁ…俺、何百年も寝てねぇんだぜ…わかるか、この苦しみ…?」


「何百年?」と俺――桜木翔太がギョッとしてセリーヌを見ると、彼女が説明した。


「アザゼルは上級悪魔になるはずの実力者でした。でも、『怠惰』ポイントが高すぎて力が暴走し、以来ずっとこの状態なんです…」


「自業自得じゃね?」と鬼塚がボソッと言うと、ジョンが頷く。


「それが問題だ!! 怠惰を極めすぎて『眠る』ことすらできぬ哀れな男と化したのだ!!」


「つまり何?」と俺が聞くと、『『怠惰ゆえに働き続ける最悪の堕落者』だ!!」とジョンが叫ぶ。


「最悪じゃん!!」と俺と鬼塚がハモる中、アザゼルの周囲の空気が変わる。


ゴゴゴゴ……!!


「ん? 体が変だ…」と鬼塚が目をこすり、俺たちの体が鉛のように重くなった。黒板に「堕落者抹消」と赤い文字が浮かび、窓から笑い声が響く。


「ぐっ…!?」俺が膝をつき、セリーヌが「これでは…」とぐったりする。飯田が『ジョンがエロ本で寝かせねぇ…おらも限界だべ』と呻く。


「これがアザゼルの『絶対怠惰領域(レイジーノスフィア)』!! やる気を失い、眠れなくなる最悪の力だ!!」とジョンが叫ぶ。


「俺のせいじゃねぇ…勝手に影響が出るだけ…」とアザゼルが肩をすくめる。


「解決する気ゼロかよ!」と俺が言うと、「努力とか無理なんで…お前らも俺と同じにしてやるよ…」と彼が手を上げる。


ゴゴゴゴゴ!!


「考えるのも動くのもめんどくせぇだろ…?」とアザゼルの声が響き、意識がぼやける。鬼塚が膝をつき、「くそだりぃ…」と呟く。


「この領域じゃポイント稼げない…!」とセリーヌが呻く中、俺は「平凡を守るため動くぞ!」と歯を食いしばったが、体が動かない。


「怠けんじゃねぇぞ、小僧ども!!!」と怒声が響き、目が覚めた。


「!?」


鬼塚の頭をガシッと掴むヴァレリアが現れ、「鬼塚ちゃんをこんな姿にするなんて許さないわよ!!♡」と叫ぶ。鋼の筋肉が輝く。


「ヴァレリア!?」と鬼塚が目を見開く。


「バチィン!!」とビンタが炸裂。


「目を覚ましなさい!! ヤンキー魂見せなさいよ!!」


「いてぇ!? 何でここに…!?」


「愛よ!!♡ 鬼塚ちゃんが堕落するなんて渡さないわ!!」とヴァレリアが胸を張り、「『灼熱の熱血ビンタ』!!♡」と再び炸裂。


「ぐおおおお!!!?」


鬼塚が吹っ飛び、目が覚醒。


「やる気出てきたぁぁ!!!」


「ふふ♡ こうでなくっちゃ♡」とヴァレリアが笑う。アザゼルが驚く。


「簡単にやる気出すとか正気か…?」


「やる気は燃やせば出てくるんだよォ!!」と鬼塚が拳を燃やす。


「バカすぎだろ…まだ終わらねぇ…」とアザゼルが黒い目を光らせ、領域が再び強まる。


――次なる戦いの幕が切って落とされた。


堕落するまであと91ポイント。

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