「……頼むから、寝かせてくれよぉ……」
アザゼルがダルそうに頭を掻き、ゆらりと近づく。
「お前ら寝られるんだろ? いいよなぁ…俺、何百年も寝てねぇんだぜ…わかるか、この苦しみ…?」
「何百年?」と俺――桜木翔太がギョッとしてセリーヌを見ると、彼女が説明した。
「アザゼルは上級悪魔になるはずの実力者でした。でも、『怠惰』ポイントが高すぎて力が暴走し、以来ずっとこの状態なんです…」
「自業自得じゃね?」と鬼塚がボソッと言うと、ジョンが頷く。
「それが問題だ!! 怠惰を極めすぎて『眠る』ことすらできぬ哀れな男と化したのだ!!」
「つまり何?」と俺が聞くと、『『怠惰ゆえに働き続ける最悪の堕落者』だ!!」とジョンが叫ぶ。
「最悪じゃん!!」と俺と鬼塚がハモる中、アザゼルの周囲の空気が変わる。
ゴゴゴゴ……!!
「ん? 体が変だ…」と鬼塚が目をこすり、俺たちの体が鉛のように重くなった。黒板に「堕落者抹消」と赤い文字が浮かび、窓から笑い声が響く。
「ぐっ…!?」俺が膝をつき、セリーヌが「これでは…」とぐったりする。飯田が『ジョンがエロ本で寝かせねぇ…おらも限界だべ』と呻く。
「これがアザゼルの『絶対怠惰領域(レイジーノスフィア)』!! やる気を失い、眠れなくなる最悪の力だ!!」とジョンが叫ぶ。
「俺のせいじゃねぇ…勝手に影響が出るだけ…」とアザゼルが肩をすくめる。
「解決する気ゼロかよ!」と俺が言うと、「努力とか無理なんで…お前らも俺と同じにしてやるよ…」と彼が手を上げる。
ゴゴゴゴゴ!!
「考えるのも動くのもめんどくせぇだろ…?」とアザゼルの声が響き、意識がぼやける。鬼塚が膝をつき、「くそだりぃ…」と呟く。
「この領域じゃポイント稼げない…!」とセリーヌが呻く中、俺は「平凡を守るため動くぞ!」と歯を食いしばったが、体が動かない。
「怠けんじゃねぇぞ、小僧ども!!!」と怒声が響き、目が覚めた。
「!?」
鬼塚の頭をガシッと掴むヴァレリアが現れ、「鬼塚ちゃんをこんな姿にするなんて許さないわよ!!♡」と叫ぶ。鋼の筋肉が輝く。
「ヴァレリア!?」と鬼塚が目を見開く。
「バチィン!!」とビンタが炸裂。
「目を覚ましなさい!! ヤンキー魂見せなさいよ!!」
「いてぇ!? 何でここに…!?」
「愛よ!!♡ 鬼塚ちゃんが堕落するなんて渡さないわ!!」とヴァレリアが胸を張り、「『灼熱の熱血ビンタ』!!♡」と再び炸裂。
「ぐおおおお!!!?」
鬼塚が吹っ飛び、目が覚醒。
「やる気出てきたぁぁ!!!」
「ふふ♡ こうでなくっちゃ♡」とヴァレリアが笑う。アザゼルが驚く。
「簡単にやる気出すとか正気か…?」
「やる気は燃やせば出てくるんだよォ!!」と鬼塚が拳を燃やす。
「バカすぎだろ…まだ終わらねぇ…」とアザゼルが黒い目を光らせ、領域が再び強まる。
――次なる戦いの幕が切って落とされた。
堕落するまであと91ポイント。