ヴィゼが去った後、俺――桜木翔太は呆然と立ち尽くしていた。
「……おい、マジで帰ったのか?」
鬼塚が肩を回しながら訝しげに呟く。
「うふふ♡ 当然よぉ♡ このヴァレリア様の前で悪魔が粘るなんて100年早いわ♡」
ピンクのスーツを翻し、ヴァレリアが胸を張る。
「いや、普通に面倒くさくなったんじゃねぇか?」と鬼塚が小声で言うと、ヴァレリアが振り返った。
「んまぁ~~~!? 鬼塚ちゃん、アタシの圧倒的魅力が分からないの!? 素直になれないお年頃かしらぁ♡」
「近寄んな変態オネエ!!!」
「オ・ネ・エ!?♡ うふふ♡ 特別視してくれてるのねぇ♡」
鬼塚が拳を握るが、ヴァレリアが肩にしなだれかかり、「愛の誓いを交わす日が来るわ♡」と絡む。
「そんな日は来ねぇ!!!」
「桜木さん、大丈夫ですか?」セリーヌが心配そうに近づく。
「ああ、なんとか…。でも、ヴィゼが帰るとはな。」
「本当に…。でも、『次はお前を堕とす』って言ったのが…」とセリーヌが震える。
「フハハハハ!!!」
不気味な笑い声が響き、黒板に「堕落ランキング更新中」と赤い文字が浮かぶ。窓から「更新中…」と笑い声が聞こえ、俺が「またか…」と呟くと、鬼塚が「なんだ?」と警戒した。
「ジョン、おめぇだべ?」と飯田が眉をひそめる。
「さすが我の契約者!」
魔法陣が輝き、黒マントのジョンが現れる。
「フハハハ!! ヴィゼをオネエの圧で退散させるとは前代未聞!! 新たな伝説だ!!!」
「伝説じゃねぇ! 事故だ!!」と鬼塚 が叫ぶ。
「これは記録に残さねば! 『オネエの圧に敗れし悪魔界No.1』っと…」
「やめろォォォ!!!」
「うふ♡ ジョンちゃん、『ヴァレリアの魅力に抗えなかった男』も追加してね♡」
「了解した!!!」
「やめろォォォォ!!!」
飯田が「ジョンがまたエロ本増やして金ねぇ…もう飽きたべ」と呻き、俺は「1位って大変だな…」と呆れた。
こうして、鬼塚の名は悪魔界に刻まれた。合掌。
堕落するまであと91ポイント。