ドォンッ!!
轟音と共、漆黒の炎が俺――桜木翔太へと襲いかかる。
「っ!!」
反射的に横へ跳んだが、完全に避けきれず、腕に灼ける痛みが走る。
「くっ…マジ痛え!」
焦げた制服を見て悟る。
こいつ、殺る気満々だ。
「ほう…直撃は避けたか。人間にしては悪くない。」
ヴィゼが悠然と腕を組み、俺を見下ろす。
「だが、これは牽制だ。次は灰になるぞ?」
黒炎が再び灯り、俺が「マジやべえ」と呟く中、セリーヌが叫んだ。
「桜木さん! 逃げてください!」
「バカ言え! そんなことできるかよ!!」
俺は足を踏みしめ、ヴィゼを睨む。
「お前、セリーヌを消すって言ったよな?」
「ああ。当然だ。」
「なら、俺が阻止する!」
拳を握った瞬間、教室の壁に「堕落者抹消」と赤い文字が浮かび、床が不気味に揺れた。
ヴィゼの目が光り、地面から黒い炎の柱が噴き出す。
「うわぁっ!!」
熱気が肌を刺し、跳び退くが、「勝てる気しねぇ…」と焦る。
「私は戦うから逃げて!」セリーヌが震えながら弱い魔力を灯すが、ヴィゼが薄く笑う。
「どうした? もう終わりか?」
「くっ…!」セリーヌが顔を歪め、俺は頭を回転させた。
――俺が時間を稼げば、セリーヌが逃げられるかもしれない。
「なぁ、ヴィゼ。ひとつ聞いていいか?」
「……?」
「お前、悪魔界No.1なんだろ? 俺みたいな人間相手にするの、ダサくね?」
「ほう?我を挑発するか?」
「違うよ。お前、オネエに勝てるの?」
「…は?」
ヴィゼのこめかみがピキッと引きつる。すると――
「オーホホホ♡ ついにアタシの出番ねぇ!!」
ピンクのスーツで現れたヴァレリアが扇子を広げ、ウィンク。飯田が「また騒ぎか…ジョンがエロ本持ってくるな!」と逃げ出す中、俺は「何で出てくんだよ!」とツッコんだ。
「な、なんだ貴様は!?」とヴィゼが驚く。
「アタシを知らないなんて、ヴィゼちゃんまだまだねぇ♡」
「鬼ちゃんのピンチと聞いて飛んできたのよ♡」
『俺関係ねぇだろ!!』と鬼塚が否定するが、ヴァレリアが肩を抱く。
「鬼ちゃんのヤンキー魂…しびれちゃうわぁ♡」
「やめろォ!!」
鬼塚が暴れる中、ヴィゼの声が低くなる。
「貴様ら、何だ。」
「ふふ♡ ヴィゼちゃん、ヤキモチ? 鬼塚くんが好きなの?♡」
「断じて違う。次はお前を堕とすが、今は貴様らの騒ぎが秩序を乱れるのも同罪だ。」
ヴィゼがため息をつき、黒炎をまとって消える。俺が「え? 帰るの?」と呟くと、ヴァレリアが笑った。
「アタシの色気にビビったのね♡」
「違うだろ」と鬼塚と俺の声がハモる。
「……戦っても堕落ポイント増えねぇのか」と俺が呟き、セリーヌが「まだ43…」と青ざめた。
こうして、悪魔界最強はオネエの圧に負けて撤退した――。
堕落するまであと91ポイント。