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第9話 ヴァレリア・アーキュリオ

授業が終わり、俺――桜木翔太は疲れ果てて机に突っ伏していた。

セリーヌの「悪魔的」なテンションに振り回されっぱなしで、心臓が持たない。


その時、教室の片隅でオネエが鬼塚に話しかけてきた。

彼女の名前は「ヴァレリア・アーキュリオ」。

学校でも浮きまくる存在感で、まさにオネエそのものだ。


「鬼塚くん、ちょっといいかしら?♡」


ヴァレリアが甘い声で近づく。

そのしなやかな動きに、周囲の視線が集中。

鬼塚は不愛想に答えるが、顔に動揺がチラつく。


「おい、オネエ、なんだよ…。」


「フフッ♡ 相変わらずツンツンしてるわね。でも、そんなところも素敵よ♡」


「別にお前になんか言われたくねぇし。」


鬼塚が言い返すと、ヴァレリアは肩をすくめて微笑む。


「そう言わずに…♡ 少しは私を気に入ってるんでしょう?♡」


「お前、しつこいぞ…。マジで。」


ヴァレリアがさらに顔を近づけると、甘い香りが漂い、鬼塚が顔をしかめる。


「フフ、そんなに顔を赤くして…♡ もっと近づいてあげるわね♡」


「何!? お前…!」


鬼塚が思わず後ずさる中、俺は「鬼塚も大変だな…」と呆れつつ、隣でセリーヌが何かを企んでる気がして落ち着かなかった。

案の定、彼女が耳元で囁いてきた。


「桜木さん、鬼塚さんの憤怒見てると怠惰ポイントの参考になりますね。次は授業サボって昼寝計画ですよ!」


「セリーヌ、お前またか!? 平凡を守るため、そんなのに乗らねえぞ!」と俺は心で抵抗したが、彼女の笑顔に負けそうだった。


その時、ジョンが割り込んできた。


「フフフ…二人のやり取りは人間界の恋愛劇のようだな。」


古典的オタク気質でうなずくジョン。

悪魔なのに妙なオタク臭が漂う。


「ジョン、お前は黙ってろ…。何を楽しんでんだよ?」


鬼塚がうんざりすると、ヴァレリアがニコッと笑う。


「ジョンって変わってるわよね♡ 悪魔界でもそんなオタクなの?」


「フフ、我は『強欲』の悪魔ではなく、『古のオタク』だ。ヴァレリアよ、あなたもこのロマンスを楽しんだらどうだ?♡」


「フフッ♡ 私は演じる派よ。観賞はあなたにお任せするわ♡」


二人が軽く言い合う中、鬼塚が我慢の限界に達した。


「お前ら、どこまで絡んでくるんだよ!!!」


その怒声が教室に響き、窓の外から「堕落ランキング更新中…」と不気味な笑い声が聞こえてきた。

教室の壁には「憤怒1位 鬼塚」と赤い文字が浮かび、俺は背筋が寒くなった。


ヴァレリアは相変わらず微笑む。


「フフッ♡ 鬼塚くんが本気で怒るなんて、やっぱり私を気にしてるのね?」


「もう、うるせぇ!!!」


鬼塚が顔を真っ赤にして教室を飛び出すと、ヴァレリアが追いかける。


「大丈夫よ♡ 少しずつ私に惹かれていくんだから♡」


ジョンがニヤリと笑う。


「まさにドラマだな。我が主、鬼塚は楽しんでるようだな。」


「いや、楽しんでねぇよ…。」


騒動が収まり、俺はセリーヌに目をやると、彼女がメモに「昼寝計画」と書き込んでた。


「鬼塚の憤怒は1位でもう上限らしい。桜木さんの43ポイント、そろそろ減らしますね。」


「待て、セリーヌ! 何!?」


その瞬間、飯田が遠い目で呟いた。


「おら、強欲1位でジョンに『フィギュア100個追加しろ』って言われて…もう限界だべ…。」


教室が一瞬静まり返り、俺は思った。

「1位って大変だな…でも俺は堕ちねえ!」と決意を新たにしたが、セリーヌの次の作戦が怖くて仕方なかった。


堕落するまであと91ポイント。

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