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第6話 誘惑

「ねえ、桜木さん、私のことどう思ってるんですか?」


俺は今、セリーヌに押し倒されている。


「どどどどどうって…。」


「ねえ、私のこと、好きですか?」


ブカブカのTシャツから下着がのぞく。


いやいやいや、俺はやましいこと考えていないからな????

本当だからな????

目のやり場に困る。


「えっと…。尊敬はしているかな…?家族のために頑張っているし。」


「ふーん。そうですか。『色欲』を上げようと思ったのに。でも負けません!!!どんな手を使ってでも私は上級悪魔になります!!!」


ふんっとセリーヌは意気込んだ。


さらに、『怠惰がダメなら色欲でもポイント稼げますよ』とセリーヌが冗談っぽく言った。


本当に辞めてくれ。

俺の心臓が持たない…。


俺は必死に目をそらしながら、セリーヌを見つめる。


「な、なあ、セリーヌ、ちょっと待ってくれ、落ち着いてくれよ…!」


「落ち着いてますけど…?」


セリーヌは完全に無表情で、俺を見つめ返してくる。


「いや、落ち着いてないだろ! それに、『色欲』を上げるとか、なんでそういう方向に行こうとしてるんだよ!」


「だって、桜木さんが見てるから、どうしても…」


セリーヌの声が、どこか照れくさそうに聞こえる。俺はさらに目を逸らし、心臓が爆発しそうな勢いでバクバクと音を立てていた。


「俺はただ…普通に、家族のために頑張るセリーヌを尊敬しているだけだよ!」


「ふーん…そうですか。」


セリーヌが俺の顔をじっと見つめ、突然、フッと微笑んだ。


「やっぱり、桜木さんは面白いですね。冗談のセンスがいい。」


「冗談じゃないから!!」


「うふふ、わかってますよ。」


セリーヌは俺をからかうように言って、ようやく俺から離れる。


「…でも、桜木さんがそう言ってくれるのは嬉しいです。もっと頑張らないとね。」


そう言って、セリーヌはちょっと照れくさそうに手を振った。


「でも、悪魔になって上級悪魔になるのは無理だと思うよ…」


「いや、絶対になりませんけど!悪魔になるために必要なのは、心の強さですよね!それに、最終的には自分の信念が大切です!」


セリーヌの顔には真剣さが浮かんでいて、その目の奥に決意が見えた。


「それが上級悪魔を目指す理由…」


「お前は一体、何を目指してるんだよ…」


俺が呆れながらも言うと、セリーヌは軽く肩をすくめて言った。


「まあ、家計のために頑張りながら、日々の小さな幸せを見つける、それが今の私の目標かな。」


「…それなら、悪魔にならなくても十分幸せじゃないか?」


セリーヌは少し考え込み、そして小さく笑った。


「そうですね。あとは、桜木さんみたいに、信頼できる人が周りにいれば、もっと頑張れるかも。」


俺は思わず顔が熱くなったが、何とか冷静を装う。


「俺も、あんまり期待されるようなことはできないけど…、できる限り力になるよ。」


「それが一番大事ですよね。」


セリーヌはにっこりと微笑み、何か少し心が落ち着いた。


その後、俺たちはまた何事もなかったように話を続けた。けれども、セリーヌの言葉が心に残った。


— 俺も、もっと頑張らないとな。


堕落するまであと91ポイント。

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