私立南亜久学園へようこそ - 授業初日
俺は、ただ普通に高校生活を送りたかった。
なのに、悪魔見習いと仮契約させられ、しかも「堕落しろ」とお願いされる始末。
……とりあえず、授業を受けるしかない。
ていうか、オリエンテーションで聞いたが、道徳の授業 → 他人を騙す方法、家庭科 → 『契約書の偽造方法』を学ぶって倫理観が崩壊してんじゃねえか。
先輩たちは卒業できず教師にされている説もあるし。
どうなってんだ、この学校。
そして、これはあくまで噂だが、契約した先輩たちが教師になっており、「契約して最高だった!」と洗脳教育を行っているらしい。
1時間目:倫理の授業(担当:松井先生)
ガラガラッ。
教室に入ると、席はガラガラ。
なぜなら、悪魔が人間の生徒に変身しているからだ。
人間はおそらく3人。
ヤンキー、訛り特待生、俺だ。
「おはようございます。1時間目は倫理の授業です」
担任の松井先生が入ってくる。相変わらずやる気のなさそうな顔だ。
まあ、俺もやる気ねえけど。
「さて、みなさん。堕落にも種類があります。知っていますか?」
「……種類?」
「そう、7つの大罪です。傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲。悪魔たちはこれらの『堕落ポイント』を稼いでランクアップしていきます」
「堕落ポイント……?」
「みなさんには、どの部門の堕落が得意か診断を受けてもらいます」
「「「は?」」」
まさかの適性診断!?
「おいおい、冗談だろ……」
前の席のヤンキーが渋い顔をする。彼のパートナーは、なんとオネエの悪魔だった。
ずいぶんと派手なオネエだな、おい。
「いい男は堕落の素質があるのよ。期待してるわ♪」
「うるせえ!」
……色々とカオスすぎる。
そして、俺の診断結果が出た。
「桜木翔太くん、君は……『怠惰』部門でトップクラスの適性があります!」
「は?俺のどこが!?普通に生きてるだけだろ!?そういえば朝起きれないし、宿題もギリギリだし、夏休みの宿題は8月31日深夜にやるし……え、俺って怠惰だったのか……?」
俺、そんなに怠け者だったか?
自覚が無いだけか?
え、俺ってそんなに怠けてる?いやいや、昨日もちゃんと歯磨きしたし…(3日ぶりに)
「やった! これで学園トップを狙えますね!」
セリーヌが嬉しそうにガッツポーズを取る。
「いやいや、トップって……」
「ちなみに、現在の学園トップは――」
「――桜木翔太くん、君だよ」
「……は?」
「この学園の『堕落ポイント』ランキング、君が1位だ」
……何言ってんの、この人?
「お前、授業前にずっと机に突っ伏してただろ」
「昨日の課題、やってねーって言ってたしな」
「面倒くせーって口癖だしな」
「帰りたいって毎日言ってるしな」
「……」
ちょっと待て。俺って、もしかして 究極の怠け者 なのか?
トップってことは、あと50ポイントで堕ちるってことか......?
「桜木がトップってマジかよ!?」
前の席のヤンキーが驚く。
「俺は『憤怒』部門で3位だぜ?」
「おらは『強欲』で2位だべ……」
特待生の方も苦笑いしている。
「ちなみに、堕落ランキングのトップ3は――」
1位:桜木翔太(怠惰)
2位:ヤンキー・鬼塚(憤怒)
3位:特待生・飯田(強欲)
「つまり、桜木くんが学園の王者です!」
「いやいやいや、王者とかいらねえよ!?」
俺はただ平穏に過ごしたいだけなのに、なぜか学園のトップに君臨してしまった。
こうして、俺は学園の覇権を巡る戦いに巻き込まれることになった。
昼休み - ヤンキーとセリーヌの意気投合
「おい、桜木。お前、怠惰の王者とかマジかよ」
学食で昼飯を食っていると、ヤンキーの鬼塚が話しかけてきた。
「……そうらしい」
「ははっ、面白ぇな!」
意外にも、鬼塚は俺に対して敵意はないらしい。
助かった。
いじめられるかと思った。
「お前の悪魔ってどんなやつだ?」
「私はセリーヌ・マーガレットと申します」
「おー、なんか上品な感じだな」
セリーヌは軽く会釈した。
「鬼塚さんは……憤怒部門の3位でしたよね?」
「ああ。こいつのせいでな」
鬼塚が指差したのは、オネエの悪魔 だった。
「やぁん、鬼ちゃんたら照れちゃって可愛い♡」
「やめろ!!!」
鬼塚が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「鬼ちゃんのこと鍛えてやるために、毎朝特訓してるのよ♡」
「特訓っていう名のビンタだろ!!」
どうやら、鬼塚は憤怒ポイントを稼がされまくっているらしい。
「ははっ、面白いですね!」
セリーヌが笑う。
「鬼塚さん、あなたは家族思いですよね?」
「は? まぁな。妹がいるし、親父も体悪いからよ」
「なるほど……あなたの怒りは、正義の怒りですね」
セリーヌが微笑む。
「あなたのような人なら、私は信頼できます」
「……へっ、そう言われると悪い気はしねぇな」
「それにしても、あなたの悪魔の方はなかなか個性的ですね」
「マジで勘弁してくれ!!!」
こうして、俺の相棒セリーヌと、ヤンキー鬼塚が意気投合することとなった。
堕落するまであと100ポイント。