巨大な研究所のような部屋、その中心に聳える玉座にシンは座っていた。
肩肘をつきながら何処か寂しそうな表情でやって来たアリアと守を交互に見つめている。
「その男の存在は俺への当てつけか……?」
自分にはいない"存在を肯定してくれる相手"を見せつけるようにするアリアへの憎しみは更に募って行く。
「違うっ、そんなんじゃないよ……!」
アリアは睨みをきかせてくるシンを逆に優しく憐れむような表情で見返す。
「彼が教えてくれたの、罪は抱きしめて一緒に生きて行くものなんだって……! だから罪によって生まれた貴方の事も抱きしめたい……!」
「…………」
「今ならまだ間に合うからっ、一緒に生きよ?」
そう言って手を差し伸べるアリアだが尚もシンは彼女を突き放す。
「聖王は言った、これは罪を超えた新たなる概念同士による対決だと。それに勝利してこそ俺は外なる理で栄光を掴めるんだ……」
アリアの方を見向きもせず天の方を見上げるシン。
これから向かうであろう外なる理を見つめているのだろうか。
「そんなのもう関係ないよっ、私がそんな必要なくさせるから……!」
しかしシンはアリアを見てキッパリと言い放った。
「俺には大いに重要な話だ、ようやく必要とされ生きる意味が出来るというのにその機会を易々と捨てられるか……!」
シンにとって奪うだけでない、誰かに必要とされるという事は夢にまで見た事だった。
「罪により生まれた、罪の象徴のような俺が……ようやく肯定される時が来たんだっ」
拳を固く握りしめ爪が突き刺さり血が滲む。
そんなシンの様子を見たアリアは更に憐れみを抱く。
「それはこの世界でも出来るっ、私は貴方を肯定するしきっと他のみんなも肯定してくれるよっ!」
しかしシンはポタポタと拳から滴る血を見つめている。
「この世界は罪そのものを否定しているだろう。抱きしめると言っても罪が罪である事は許されない、つまり俺の居場所はこの世界にはない……」
この世界を見限ったような目をしたシンにアリアも思わず気持ちをぶつけてしまう。
「貴方側から否定してちゃダメだよっ、ちゃんとこの世界を見て!」
「その上でだ! 俺はこの世界を肯定できなかった……!」
「っ……!」
「だからもう……終わりにしたいっ!」
互いに想いをぶつけ合った後、シンはゆっくりと立ち上がりエネルギーを解放した。
凄まじいオーラが放たれアリアと守は思わず怯んでしまう。
「シンっ!」
一瞬だけ悲しみに負けてしまいそうだったアリア。
そんな彼女の肩を守が叩く。
「アリアさん、肯定しまくってやりましょう。貴女の抱きしめる力で戦うんです……!」
その言葉を聞き覚悟を決めるアリア。
そして守に対し強く頷くのだ。
「……うん、そうだねっ!」
守に退がるように合図をし彼女も力を解放する。
そして罪を抱きしめる自由の力で巨人の姿へと変わった。
『オォォォッ!』
アリア対シン。
ニュー・オーダーと化したシンはアリアに向かって大きく吠えた。
そして最終決戦の火蓋が切られるのだった。
☆
シンはアリア目掛けて突進をし拳を突き立てる。
しかしそれを力強く受け止めたアリアはニュー・オーダーとしてのシンを見つめた。
まるでその瞳の奥にある本当の彼に語りかけるように。
『フンッ』
握ったシンの拳を軸に突き飛ばし腹部にタックルを仕掛けるアリア。
なるべく彼自身を傷付けないように力強い攻撃は避けているのだ。
『舐めるなよっ!』
しかしそれを察知したシンはアリアが本気で戦う気がない事に怒りを表す。
敵としても自分の存在を認めてくれていない、そのように感じてしまったのだ。
『オォォォッ!』
そのままアリアに再度突っ込み一度その体を大きく突き飛ばす。
そのまま吹き飛んだアリア目掛けて大量の泡による攻撃を行ったのだ。
『ヴァアアアッ!』
『ゥグッ……⁈』
泡に捕まり引き寄せられたアリアはその勢いのまま腹部を思い切り殴られてしまった。
後方に吹き飛んだアリアは背中を柱に勢いよくぶつけてしまう。
『全力を尽くせっ、最大の壁として俺を止めに来い!』
一瞬項垂れてしまうアリアに挑発を行うシン。
やはり自分の存在を認めて欲しいらしい。
『ぐっ、そうだね……』
そこでアリアは覚悟を決める。
罪はただ優しく抱きしめるだけではダメなのだ。
『ちゃんと怒ってあげないと、まずは勝って言うこと聞かせないとね……!』
優しさだけではない強さを見せつける事でシンを言いくるめる作戦に出るのだ。
アリアは力を発揮する事を選ぶ。
『ハァッ!』
両手から光の刃を出現させる。
しかしその刃はいつもと色も質感も違った。
罪を抱きしめる自由を手に入れた事で変化したのだ。
『ようやくその気になったか……』
シンもアリアの覚悟を受け取り光の刃を出現させる。
正義の刃と自由の刃、その戦いが幕を開けるのだ。
『セアァッ!』
『ダァッ!』
お互いに走り出し刃をぶつけ合う。
凄まじい火花とエネルギーが辺りに飛び散っていた。
「くっ、凄い……!」
下から見ていた守もその様子に圧倒されている。
すると彼の隣にある人物が現れた。
「当然だ、これは世界を生かす戦いである」
気がつくと守の隣に聖王が立っていた。
共に戦いを見届けるつもりらしい。
☆
守の隣で聖王は語り始める。
視線の先ではアリアとシンが光の刃を交え激しくぶつかり合っていた。
「正義と自由、どちらも罪の上に成り立つ概念……」
守は思わず聞き入ってしまう。
「罪により苦しめられた両者がそれを乗り越えるため各々の想いを爆発させた結果誕生した、つまりそこに正しさは存在しない」
聖王の言う通りシンとアリアはただ自分の想いで戦っているように見える。
「だからこそ勝つのは想いの強い方だ。私たち外なる理は見たいのだ、想いの強さによる昂りを」
その言葉を体現するかのようにシン対アリアの戦いは激化していく。
『アァッ!』
腕を6本に増やしたシンだったがすぐさまアリアの刃に右側の腕を2本切り落とされてしまう。
だがシンはそれでも怯まずにアリアの横腹を刃で突き刺した。
『グフッ……』
吐血してしまうアリアだが諦めない。
致命傷は避けられたため何とか追撃を振り抜き後ろ回し蹴りを決める。
『タァッ!』
『ガッ……』
そのまま吹き飛ぶシン。
今度はアリアが腕を6本に増やして各手から泡を繰り出す。
『ガッ、ハァッ……⁈』
シンは慌てて立ち上がり泡の攻撃を避けて行くがその方向を予測したアリアは先に目からレーザーを放つ。
『ッ⁈』
シンはレーザーこそ避けるがその影響で泡に捕まってしまった。
アリアの所へ一瞬で引き寄せられ背中から思い切り光の刃で貫かれてしまう。
『アガッ……!』
貫通した刃を引き抜かれると同時に膝から崩れ落ちるシンを見たアリアは動きを止める。
これで落ち着いてくれると信じたかった、これ以上の攻撃は与えたくなかったのだ。
『どう、もう十分でしょ……?』
息を切らしながら問いかけるアリア。
それでもシンは滴る自身の血を眺めながらボヤけていく視界を無理やり晴らそうと力を込めた。
『ハァ、ハァ……グォォォッ!』
凄まじいオーラが辺り一帯に弾け飛び衝撃が守たちにも伝わってしまう。
「うわぁっ⁈」
その様子を感じた聖王はシンの想いが更に昂った事を察知したのだ。
「これが正義エネルギーの最高潮か……っ!」
シンは無理やり力を込めて立ち上がり振り向きざまにアリアの顔面を殴り飛ばす。
『ゴバァァァッ!』
『〜ッ⁈』
訳も分からず吹き飛んでしまうアリアはこれまでと遥かに違う勢いで壁に衝突してしまった。
煙が晴れると視線の先にこれまでと違うオーラを放つシンの姿が。
『俺のこの力を肯定してくれる人がいるっ、だから負ける訳にはいかないんだ!』
完全にアリアを消す勢いのシンにより最終決戦は更に激化していく事となる。
つづく