祖母は毎年、春先の寒暖差が激しい時期になると悪夢を見ると言っていた。
サイレンが鳴り半鐘が鳴り、怒号と悲鳴と泣き声が聞こえ、人の波にもみくちゃにされる夢だという。
その日から八十年。
既に祖母は旅立っているが、祖母の体験を私が語り継いでいる。
一九四五年三月十日。
東京大空襲の日を。