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メルルの恋

「メルル、卒業パーティーで母上に会ってくれないか?」


「ふぇ!? 皇后陛下にってことですかぁ? メルル、嬉しい!」


「母上はその、婚約者がいながら、他の女性とということは好まないから、メルルを側室として置くことは許されないかもしれない。だが、母上は僕のことを愛していらっしゃるから、許してくださる可能性が高いと思う。そもそも、マリーを気に入ってないし、今までの行動は報告されているはずだが、なにもおっしゃらないのだ」


 オズベルト様が私を側室として置くことが難しいとおっしゃていた。つまり、私が次期皇后ってこと? やっぱり、私たちって運命なのね!?

 そう思うと、嬉しすぎてそのあとの言葉は、私の耳には入ってこなかった。だってだって、皇后陛下って、あの皇后陛下でしょ!? 私のバイブル『真実の愛』のヒロインとして描かれている皇后陛下でしょ!?

 皇帝陛下と皇后陛下の恋、何度読んでも最高だったし、本当に私の憧れなの!

 私も本物の皇子様のオズベルト様とそんな恋ができて、結婚できるなんて! 私たちの話も、本とか歌劇になるかもしれない? すっごぉい!

 そもそも、“母に会ってほしい”って平民の間じゃ有名なプロポーズの言葉だよね!

 マリー様みたいないじわるな人と一緒にオズベルト様を支えていく自信なんてなかったし、そもそも大好きなオズベルト様を他の女と共有なんて絶対嫌だから、本妻って嬉しい!

 皇后って大変そうだけど、メルル、大好きなオズベルト様のためなら頑張っちゃう!





ーーーー

 メルルが『真実の愛』に出会ったのは、10歳の頃。お母さんとお父さんと一緒に、劇になった『真実の愛』を観に行ったの。

 最初は、そんなの見るより遊びに行きたくて駄々こねてたんだけど、最前列のレアチケットを引き当てたからって連れて行かれたんだ。

 でも、観てみてびっくり! すっごく素敵なんだもん!

 もう絶対皇后陛下と皇帝陛下は運命なんだなーって感動した!

 皇后陛下のトラウマに寄り添う、皇帝陛下の姿なんて最高だし、今もずっとずっとずっと寄り添っていらっしゃるんだって! 皇后陛下以外、女性として見れないって! 素敵すぎるぅ!

 感動したメルルは、おねだりして『真実の愛』の書籍版をねだったの。本は高いから、3年分のお誕生日のプレゼントとして買ってもらって、一生懸命一生懸命読んだんだ。

 全部読み終わっても素敵すぎて何度も何度も読んだの。

 “メルルもいつか王子様とこんな恋をしたい”って思ってた。

 ある日、お父さんの言いつけを破って1人で買い物に出たの。だって、『真実の愛』の絵本が売られるって聞いたから! 絵本なら私のお小遣いでもギリギリ買えそうだったから、買おうと思ったの!

 お父さんは“いつまでそんな夢に引き込まれてるんだ”って言うから、バレないようにこっそり買いに行かなきゃ行けなかったんだ。

 そしたら、人攫いに遭いかけたの。普段大丈夫なのに、そんなときだけ運がないよねぇ。

 でもでも、偶然街に視察に来てたオズベルト様が助けてくれたの! この瞬間、メルルは、メルルの運命の王子様は第一皇子様、オズベルト様なんだって嬉しくなっちゃった!


 オズベルト様に会いたくて一生懸命勉強して、学校に途中入学したけど、いなかったの。悲しい気分でいたら、“最終学年で転入される予定”って噂を聞いたの。

 メルル、早く会いたいって思いながら、通ってたんだ。でもでも、やっぱりメルルは平民じゃん? しかも、婚約者がいるとか聞いて……見るだけでもいいやと思ってたら、みんなベタベタしてるんだもん! メルルだってオズベルト様といちゃいちゃしたい!

 そう思って、声をかけたら、オズベルト様がすごく気に入ってくれたの! だって運命だもん! 惹かれ合うのも仕方ないよね?

 でもでも、メルルのこと、オズベルト様の婚約者のマリー様がいじめるの。そんな障壁でも私たちの恋は盛り上がっていく要因の一つでしかなかったけど!


 私、オズベルト様と結婚して、皇后になるんだ!

 お父さんとお母さんに言ったら、笑われたけど、本当に本当だもん!

 卒業パーティー、楽しみだなぁ!

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