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第一皇子の転入

「今日から、同じ学校だ。よろしく頼む」


「はい、第一皇子。お力になれるように精一杯励みます」


 今日から第一皇子はマリーの学校に転入するようだ。1年間でどれだけ2人の仲は縮まるのだろうか。


 マリーと第一皇子が共に登校する。クラスも一緒だ。


「兄上、マリー義姉様。おはようございます」


 後ろからやってきた第二皇子が朗らかな笑顔で2人に合流する。美男美女の集合に周りの生徒たちが色めき立った。


「ん? フェル。今日はこの時間だったのか?」


「兄上とマリー義姉様にお会いしたかったので、この時間にしました」


「まぁ! 嬉しいわ。最近フェルディア様にも、なかなか会えてなかったもの」


「ん? フェルディア様?」


 同じ学校に通っていたからか、2人の距離は想像よりも近い。名前を呼び、心からの微笑みを浮かべるマリーを見て、第一皇子は顔をしかめた。




ーーーー

 マリーと第一皇子が教室に着くと、女生徒たちが駆け寄ってきた。


「第一皇子様! こちらですよ!」


「第一皇子様って本当に素敵なんですね!」



 マリーは、その姿を見ると微笑みを浮かべて、そっと一歩下がった後、友人たちのところへ行ってしまった。


「ありがとう、皆と学ぶことができて嬉しく思う」


「きゃあ! 私たちも嬉しいですわ〜!」


 少しドギマギした様子で第一皇子が女生徒たちの対応をしている。




「ちょっと、マリー。あれ、許していいの?」


「第一皇子がクラスに馴染まれたようでよかったですわ」


「そうじゃなくて……」


 綺麗な微笑みを浮かべて第一皇子たちを見るマリーに、友人は押し黙ってしまった。





「第一皇子様。一緒にランチをしましょう?」


「そうですわ! マリー様とはいつでもできるのですから、私たちとしてくださいな」


「それは、そのだな……マリー……」


「第一皇子にご友人が増えることはいいことですわ」


「……そうか」


 作られた微笑みであっても、笑みを浮かべて許すマリーには、一見すると第一皇子への感情が見られなかった。


 そんな姿にすっかり落ち込んだ様子の第一皇子は、引きずられるまま女生徒たちに連れられて行った。





ーーーー

「マリー様は、第一皇子に興味がおありでないのですね?」


「こんなに素敵な方なのに!」


「そ、そうか」


「マリー様に第一皇子はもったいないですわ!」


「そうよそうよ!」


「そ、そうか?」


「でも、第一皇子様って男子校出身で女性に慣れていらっしゃらないんでしょう?」


「まぁ、それは少し女性としては頼り甲斐がないわね」


「そ、そうなのか!?」


「よろしければ、私たちが女性のあれこれ教えて差し上げますわ。マリー様のためにもなりますものね?」


「そうか……よろしく頼む」





ーーーー

 それから、第一皇子の周りには女生徒たちが集まるようになった。


 初めのうちは戸惑いがちであった第一皇子も徐々に気が大きくなっていったようだ。


「マリー。今日は、其方とは帰らん。彼女と帰る」


「かしこまりました。第一皇子」




「マリー義姉様? どうなさったの?」


「フェルディア様……なんでもないわ?」


 完璧な笑顔を浮かべるマリーの浮かない気持ちを第二皇子だけが読み取る。


「なんでもないって顔してないよ? 何があったの?」


「いえ、第一皇子に友人がたくさんできたようで嬉しいのだけど……その……」


「女生徒が多い?」


「なぜそれを!?」


「さっき見かけたから。兄上もこんなに可愛い義姉様を置いて、何してるんだろうね?」


「そんな……でも、魅力的な女性が多いから、惹かれてしまったのかしら?」


「僕は義姉様が一番可愛いと思うよ?」


「ふふっありがとう、フェルディア様」




ーーーー

「第一皇子さまー!」


「こちらにいらしてー?」




「あれ? 第一皇子様って婚約者がいた気がするけど、あんなに簡単に近づいていいの? それなら、メルルだって憧れの王子様に近づきたい!」

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